魔法と科学の境界線

北丘 淳士

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 授業が始まっても旭はしばらくSSBEとリータのことについて考えていた。リータとの再会の可能性に喜んでいたが、よく考えてみると理由が分からない。根本的な「なぜ」が。
 昨日、香苗に11年前の実験の大凡を聞いていた。
 1回2時間、直径3cmほどの亜空間の扉を開け続け、その先の空間にロボットを侵入させて探査すると同時に、安定性や危険性の調査をしていたこと。実験が中止に追い込まれた理由が、事故にあったこと。
 だが「なぜ」直径3cmの孔を通してリータのホログラムが見えたのか、その理由が分からない。あの頃は父さんから、それは天使だ、と言われ、漠然とリータに接していたが、なぜ俺の家にあの場所に映像としてリータが出現したのだろうか。本当に亜空間の向こうにリータがいるのだろうか。
 そしてもう一つの「なぜ」。亜空間から飛ばされた可能性が高いホログラムのリータが、地球の人類と全く見た目が同じだったのか。
「あっ!!」
 思わず上げてしまった驚声に、近くのエディアとジェリコだけでなく、教室の皆が旭を見た。
「どうした東城君、シャープペンシルが壊れたのか?」
 この時間の講師を担当している古典物理学の小日向が笑いながら言う。
「あ……、いえ、……すいません」
 他の生徒が笑いながら再び前を向く。
 ホログラムの発信源だ。なぜそのことに気づかなかったんだろう。今の今までホログラムの発信源が亜空間からだと信じて疑わなかった。ひょっとしたら違う可能性というのもある。
 その時、旭の脳裏に頼れる人物が浮かんだ。
 早く講義が終わらないだろうか。
 旭には好きな古典物理学の授業が、こんなに長く感じたのは初めてだった。
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