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アベルディ・オルフェスタ
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古色ながらもしっかりと手入れの行き届いた王宮の回廊を、アベルディ・オルフェスタは眼前の初老の男に続き歩いていた。
彼にとってはすでに何度か足を運んだ場所であり、初老の男も数年来の知り合いである。
アベルディは、回廊の窓から覗くラステアの街を見下ろしながら、初老の男に話しかけた。
「ラムザ枢機卿、最近の王女の体調はいかがですか?」
「ええ、御公務……、といっても最近は定時参賀のみですが、それには時折顔を出されています。ただ、御公務以外は御自室で療養になられておられます」
数歩先を歩くラムザ・リッツベルドは、アベルディに背を向けたまま答える。言葉遣いは丁寧だったが、どこか不遜な態度で答えていた。
アベルディは一介の政治家の息子であり、ラムザの方が肩書きは遥かに上だったからだろう、とアベルディは特に気にもしていなかった。
「体調のこともありますので、いつものように手短にお願いいたします」とラムザは抑揚もない口調で事務的に言う。やがて2人は王宮の最上階、ある一室の両開きの扉の前で止まった。ラムザは重厚な木製の扉を叩く。
「アベルディ殿がお見えになられました」
数瞬の間があって、扉の奥から厳然とした女性の応えが返ってきた。
「王女様は参賀の最中です。御拝謁の御予約は……」
「私だ、ラムザだ。予約は入っておる。開けなさい」
「失礼いたしました」と中から女性の声が返ってきたと同時に、同じタイミングで開かれた両扉にアベルディは促された。アベルディはラムザに黙礼して室内に入る。
扉の両脇を女中が控え、正面の床に緋毛氈がいやみなくひかれている。調度品はある程度年季が入っているものもあるものの、その全ての調和が整っている。1人で使うにはやや大きい書架に並ぶ数々の本は、数冊の本を残して大体が日に焼けて無く、定期的に入れ替えてあるようだ。それらが言外に引きこもっている証でもあった。
彼にとってはすでに何度か足を運んだ場所であり、初老の男も数年来の知り合いである。
アベルディは、回廊の窓から覗くラステアの街を見下ろしながら、初老の男に話しかけた。
「ラムザ枢機卿、最近の王女の体調はいかがですか?」
「ええ、御公務……、といっても最近は定時参賀のみですが、それには時折顔を出されています。ただ、御公務以外は御自室で療養になられておられます」
数歩先を歩くラムザ・リッツベルドは、アベルディに背を向けたまま答える。言葉遣いは丁寧だったが、どこか不遜な態度で答えていた。
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「体調のこともありますので、いつものように手短にお願いいたします」とラムザは抑揚もない口調で事務的に言う。やがて2人は王宮の最上階、ある一室の両開きの扉の前で止まった。ラムザは重厚な木製の扉を叩く。
「アベルディ殿がお見えになられました」
数瞬の間があって、扉の奥から厳然とした女性の応えが返ってきた。
「王女様は参賀の最中です。御拝謁の御予約は……」
「私だ、ラムザだ。予約は入っておる。開けなさい」
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