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ジェリコ・コランダム
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「ちょっとアキラ、何なのそれ!?」
北野が退室するや、エディアが聞いてきた。
「音が気になってたら、キタノ教授に指名されて焦ったじゃない!」
「俺のせいかよ」
苦笑しながら旭は答える。
「……俺の親父が、こんな古い道具が好きだったんだ。これはシャープペンシルと言って、昔の筆記具だ。その影響だよ」
意外な答えだったのか、エディアは黙って旭を見ていた。
「音が気になるなら、担任に頼んで席移動させてもらうけど」
「別にイヤとは言ってないじゃない。それにしてもアキラって、お父さん……」
「俺が5歳の時に病気で死んだよ」
「……そう、ご、ごめんなさい」
「いいよ別に気にしなくて。謝る必要なんてないよ」
先進国の平均寿命が150歳に到達する昨今、何か余程の理由が無いと夭逝することはないからだ。
そんな二人に耳慣れない声が入ってきた。
「ここはかなりの生徒が片親、もしくは孤児の確率が高いようだ」
背後から声が聞こえてくる。旭達2人はその男を見遣る。
白髪に近い淡い銀髪の男が立っていた。旭ぐらいの細身の肩幅だが、10センチほどその男は背が高い。澄んだ涼しそうな青い瞳が目に収まっている。その男が旭に手を伸ばしてきた。
「ジェリコ・コランダム。出身はアメリカだ」
「よろしく、えーっと……」
「ジェリコでいい、アキラ・トウジョウ。たしか主席だったな」
「ああ、ジェリコ。旭だ」
旭は、その広い手と握手をした。
「それ良かったら見せてくれないかな?」と言って、空いている手で旭の机上にあるシャープペンシルを指してきた。
「ああ、もちろん」
「それよりもあんた、さっきの言葉本当なの?」と、エディアはジェリコに不快な視線をぶつけながら聞いてきた。
ジェリコはそれを気にせずに、「ああ、旭も父親がいないようだし、他に何人かと話したけど結構そういうやつ多いな」と、エディアとも握手を求めていた。
「たまたまじゃないの?」
エディアは腕を組んだまま握手を返さなかった。
ジェリコは気にしないといった感じで手を元に戻す。
「いや、統計よりもかなり多い。先の亜空間開闢実験は、今までの実験の枠を超えているからな、内容といい規模といい。アシンベルでも、どんな事故が起こるのか分からないのだろう。損害賠償などを考えて生徒を厳選したのかもしれないな」
「そういう風に考えると、イヤな気持ちになるわね。デバイスかかって職員を見ちゃいそう……」
旭はシャープペンシルをジェリコに渡しながら、涼しい顔をして言う。
「でも万が一事故が起きても、悲しむ人が少なくなるといった見方も出来る。……残された人が悲しいのは変わらないけどな」
ジェリコはシャープペンシルを物珍しげに弄りながら、「楽観主義なんだな」と旭を見て口の片端を上げた。
「楽観主義というか、そんなことで文句言っても埒が開かないんだったら、前向きに捕らえたほうがいいと思うんだ」
「んー……、そう言われればそうよね。それがイヤなら、最初からこんな科学の最先端を走るアカデミーに入らなければ良い訳だし」
「文句を言うだけなら、誰でも出来るからな。っていうか、分解するな」
興味深くシャープペンシルを分解し始めたジェリコから、旭はそれを取り上げた。
北野が退室するや、エディアが聞いてきた。
「音が気になってたら、キタノ教授に指名されて焦ったじゃない!」
「俺のせいかよ」
苦笑しながら旭は答える。
「……俺の親父が、こんな古い道具が好きだったんだ。これはシャープペンシルと言って、昔の筆記具だ。その影響だよ」
意外な答えだったのか、エディアは黙って旭を見ていた。
「音が気になるなら、担任に頼んで席移動させてもらうけど」
「別にイヤとは言ってないじゃない。それにしてもアキラって、お父さん……」
「俺が5歳の時に病気で死んだよ」
「……そう、ご、ごめんなさい」
「いいよ別に気にしなくて。謝る必要なんてないよ」
先進国の平均寿命が150歳に到達する昨今、何か余程の理由が無いと夭逝することはないからだ。
そんな二人に耳慣れない声が入ってきた。
「ここはかなりの生徒が片親、もしくは孤児の確率が高いようだ」
背後から声が聞こえてくる。旭達2人はその男を見遣る。
白髪に近い淡い銀髪の男が立っていた。旭ぐらいの細身の肩幅だが、10センチほどその男は背が高い。澄んだ涼しそうな青い瞳が目に収まっている。その男が旭に手を伸ばしてきた。
「ジェリコ・コランダム。出身はアメリカだ」
「よろしく、えーっと……」
「ジェリコでいい、アキラ・トウジョウ。たしか主席だったな」
「ああ、ジェリコ。旭だ」
旭は、その広い手と握手をした。
「それ良かったら見せてくれないかな?」と言って、空いている手で旭の机上にあるシャープペンシルを指してきた。
「ああ、もちろん」
「それよりもあんた、さっきの言葉本当なの?」と、エディアはジェリコに不快な視線をぶつけながら聞いてきた。
ジェリコはそれを気にせずに、「ああ、旭も父親がいないようだし、他に何人かと話したけど結構そういうやつ多いな」と、エディアとも握手を求めていた。
「たまたまじゃないの?」
エディアは腕を組んだまま握手を返さなかった。
ジェリコは気にしないといった感じで手を元に戻す。
「いや、統計よりもかなり多い。先の亜空間開闢実験は、今までの実験の枠を超えているからな、内容といい規模といい。アシンベルでも、どんな事故が起こるのか分からないのだろう。損害賠償などを考えて生徒を厳選したのかもしれないな」
「そういう風に考えると、イヤな気持ちになるわね。デバイスかかって職員を見ちゃいそう……」
旭はシャープペンシルをジェリコに渡しながら、涼しい顔をして言う。
「でも万が一事故が起きても、悲しむ人が少なくなるといった見方も出来る。……残された人が悲しいのは変わらないけどな」
ジェリコはシャープペンシルを物珍しげに弄りながら、「楽観主義なんだな」と旭を見て口の片端を上げた。
「楽観主義というか、そんなことで文句言っても埒が開かないんだったら、前向きに捕らえたほうがいいと思うんだ」
「んー……、そう言われればそうよね。それがイヤなら、最初からこんな科学の最先端を走るアカデミーに入らなければ良い訳だし」
「文句を言うだけなら、誰でも出来るからな。っていうか、分解するな」
興味深くシャープペンシルを分解し始めたジェリコから、旭はそれを取り上げた。
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