魔法と科学の境界線

北丘 淳士

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懐古

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 その日、旭は学校のダイニングホールで昼食をとりながら、エディアにLOTの使い方を教える羽目になった。彼女は、昼食代出すから、と言っていたが旭は断った。家か学校かどっちにしようか迷っていたので、彼女に教えるのはついででしかなかったからだ。
 軽く焦げたチーズが食欲をそそるミートグラタンをトレーに乗せたエディアは、旭の隣に座ってきた。そして二人肩を寄せて旭はLOTの使い方を教えていく。
 旭にとって女の子に肩を並べて教えるのはリータ以来、久しぶりだった。
「それで、DNA検査ツールソフトの場所が分からないんだって?」
「いや、あのっ、そのっ! ロ、LOT自体が言うこと聞かないのよ……」
「……ひょっとして初期設定も出来てない、とかって言うなよ」
「え、設定?」
 間違いない。初期設定すら出来ていない。旭は確信した。
「……まずはフォーマットしようか。そして個人情報を登録。初期IDはチュートリアルに出てくるからコピーすると楽だぞ」
 旭は首に巻いたロットに指を当てながら卓上に映像を出し、チュートリアルまで案内した。
「わ、わかったわ」
 エディアもコンタクトレンズを通して、少しずつ個人情報を入力したりバイオセンサに登録していく。
「少しでも疑問なところがあったら恥ずかしがらずに聞いてくれ。別に笑わないし、出来るだけ分かりやすく教えるから」
「……うん」
 時々リータのことを思い出しながら教えていると、旭は思わず優しい気持ちになって丁寧に教えてしまう。
「で、アカデミーの教材関係はここのファイルに入っている。ショートカットを出しておくと楽だよ。それに自分が欲しいと思ったソフトは申請しないと手に入らないが、大体すぐ許可が貰えるから、気兼ねなくアカデミーのサイトで申請してインストールするといいよ」

 2限目の途中から全く進んでいなかったエディアは、2時間ほどで今日インストールしなくてはいけないソフトをLOTに取り込んだ。
「あ、ありがとう……。私って、この手の機械が苦手なのよ、慣れるまで時間掛かるし。隣の女の子に聞こうかとも思ったけど、その子も分かってないみたいで、ほんと困ってたの」
「じゃあ、もうこれで完璧じゃないか。その女の子にも明日教えてあげなよ」
「……そんな自信ない」
 朝の雄々しいまでの態度はどこにいったんだ。と、旭は嘆息した。
「また教えてよね! あんたの説明、分かりやすいから」
 なぜか高圧的だ。
「まあいいけど、出来るだけ慣れる努力もしろよ、ロックベリー」
 エディアは旭に向けていた目を細める。
「ロックベリーは硬いから、エディアにしてくれない?」
「……わかったよ、エディア」
「よろしく頼むわよ、アキラ!」
 その後、エディアは冷えたミートグラタンのマカロニを、楽しそうに突っついて口に運んでいた。
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