勇者が来る!!

北丘 淳士

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エピローグ

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『ジラール連合国との国交が開始出来たことと、魔王を討伐したことでビルダーナ王から歓待を受け、彼らは一躍、国の英雄になりました。勇者と魔王は対になる存在だったのです。魔王が産まれるから勇者が産まれる。厄災の子にも関わらず勇者と言われているのには所以があったのです。今までの文献には伝わっていない部分がありました。勇者の為の装備品は、グレイズ王国へと戻され、王宮に飾られることとなりました。勇者は魔王討伐後、一般人となり、一緒に旅をしていた女性と夫婦となり、スワリ村で暮らすこととなりました』
 トラステリアは今後、勇者が現れたときのための文献を編纂し終わった。
 その時、ドアがノックされた。
「どうぞ」
 ノブを回し入ってきたのはベルハルドだった。
「執筆は終わったかい?」
「ええ、ちょうど終わったわ。後はこれを印刷して後世に残すだけね」
「そうか、じゃあ一杯飲みに行くか」
「ええ、良いわね」

 ルリとトウジはオルガノフ帝国にいた。
 放置された魔物が繁殖して、住民に被害が出ていると聞いたため、イツツクニから飛んできた。
 群れていた魔物の最後の一体をルリは斬った。
「ふぅ、これで大体の魔物は片付いたようね」
「はい、とりあえずイツツクニに戻って温泉にでも入りましょう」
 二人の旅は、定期的に続くのだった。

 勇者一行の一人として英雄扱いされたカルナは、ブランノール法治国へと戻って来ていた。
 クラーレから、直属の幹部にならないか、と打診されたが、彼女はブランノールでの生活を捨て、旅に出た。甘いものを探求する旅である。
 たまに長話が好きなアナバス・バーランドと一緒になることがあったが、この人は私の王子様ではないだろう、と思っていた。
 たまにはスワリ村にでも顔を出そうかしら。
 カルナの一人旅は続く。

 王宮騎士団団長という役職をきっぱりと断り、エリオットはラルフと交代でスワリ村の巡回をやっていた。
 今は実家とは離れた庭先で薪割りをやっている。
「エリオット、お茶が入ったわよ」
 額の汗を拭い、その声にエリオットは頷く。
 部屋に入ると祖父のエルガが、すでにお茶を飲んでいた。
「子供の名前は決めたのか?」
「い、いや、まだだけど」
「そうか、おじいちゃんに任せると良い」
「無難な名前をお願いします……」
「女の子だったら、私が名前を付けるんですからね。それだけは守って下さいよ」
 腕組みしたウィスがエルガに念を押す。
「う、うむ。あー、早く産まれてくれんかの、わしのひ孫……」

 三日後の昼、エリオットに娘が産まれた。
 今回もケーナが取り上げた。
 この人は一体何歳なんだろう。
 エリオットとラルフは不思議な表情でケーナを見つめる。
「女の子か……、でも初のひ孫だ、祝いをせねば!」
 テンションが高いラルフとエルガを余所に、ウィスは赤子を抱いて、エリオットに話しかける。
「もう、名前決めているの」
「何?」
「ケイト。悪くないでしょ」
「そうだな……良い名前だ」

 エリオットと共に旅をした三人も、娘のケイトも他界し八百年が過ぎた。
 時代は幾度も移ろい、エリオットの活躍は神話の話となり、世界は高度に発展し、科学技術が文明と経済を回していた。
 手術室でラノット・ベールは妻の手を握りながら、子供が出てくるのを今かと待っていた。
「もうすぐですからね。落ち着いて」
 医師が声をかける中、赤子の泣き声が響いた。
 産まれたか!
 だが取り上げた医師は奇妙な物を見るような表情をしていた。
「お二人とは違って、髪が……銀色です……」
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感想 1

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みんなの感想(1件)

ほりとくち
2024.09.07 ほりとくち

魔王のいないときに生まれた勇者が、それほど危険な存在だったとは……
タイトル回収の「勇者が来る!!」まで拝読しました!
これから無事に勇者としての承認欲求を満たしていけるのか、続きが楽しみです〜
あと、魔王は準備できたのかも気になります!
勇者のために魔王を準備って、改めて考えるとすごい話ですね……!

ファンタジー小説大賞にも投票しました!
お互い頑張っていきましょう(●´ω`●)

2024.09.07 北丘 淳士

ほりとくちさん、読んで頂きありがとうございます!
この作品は、都合よく強くなる敵キャラ、不自然に置かれた宝箱を揶揄して書き始めた物語です。
勇者の都合のいい裏方の大変さを描いたものになります。
楽しんで頂けると幸いです!

それと投票、ありがとうございます(´;ω;`)!!
楽しんで創作、頑張りましょう!!

解除

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