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直感
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翌日の昼には、ザルト海峡近くの港町アファルに着いた。
仕事終わりの漁師を捕まえての情報収集となった。
「あー、無理無理。ザルト海峡で何人の漁師が犠牲になったか知っているのか?」
「ビルダーナへの定期船も無いよ。オルビス大海では、ザルト海峡を回避する旅人を狙った海賊がいるからね」
否定的な意見しか拾う事が無いかに思われたが、中には有益な情報をくれる漁師もいた。
「船は出せないが、ザルト海峡をよく知る人ならいるよ」
「ああ、リンケルの爺さんだな、この町の教会の隣に住んでいる。あの人なら俺たちよりも詳しいかもな」
「そうそう。その人は学者さんだ。もともと天文学をやっていたのだが、いつの日かザルト海峡も調べ始めていたな」
「教会の隣ですね。行って聞いてみます。情報ありがとうございます」
「ああ、私がリンケルという者だが」
扉を叩くと現れたその老人は、長い髭を蓄え、それを扱きながら答えた。
「ザルト海峡について聞きたいのですが」
「大雑把な質問だな……。それなら話が長くなる。中に入りたまえ」
一人暮らしだろうか、調度品の数は少なく小奇麗にしている部屋だった。
「今お茶を出す」
キッチンの方から良い香りがしてきた。ビルダーナでは嗅いだことのない香りだ。隣国なのに文化の違いが顕著で、それがザルト海峡の意味を表していた。
トレイを持ってキッチンから出てきたリンケルは、小さい茶器を四人に配り正面に腰を下ろす。
「んで、ザルト海峡の何を知りたいのだ?」
「ザルト海峡を渡りたいのですが、どうすればいいでしょうか?」
「んー、渡るのか……。ならば深夜だな」
「深夜ですか?」
「深夜から早朝にかけて流れが緩やかになる。私は天文学をやっていた。潮の流れというものは、この星の自転と月の潮力によって引き起こされることが分かっている。たが、ザルト海峡はその法則に当てはまらない。何か別の力が働いているようなのだ。私の計算で導かれる答えとは、全く繋がらない」
「ザルト海峡に何かある、ということですか?」
「分からん。それを知りたいために十五年前からザルト海峡の研究も始めたのだが、年々海流が早くなっているようだ。もっと調べたいが、もう歳には勝てない。このまま解明できずに死んでいくのかと思うと悔しくてな」
「分かりました。その願いに答えられるか分かりませんが、一つ試してみます」
昼過ぎ、ザルト海峡沿岸にエリオットたちはいた。リンケルも背後で待機している。ザルト海峡を挟んでビルダーナが見える。
「おい、エリオット、何をする気だ?」
「雷(いかづち)をザルト海峡に放ってみます。何か変化があるかもしれません。ザルト海峡に行き渡る様に放ちますので、皆さん下がっていてください」
「分かった、無茶はするなよ」
四人は三十メートルほど離れ、エリオットの様子を覗っていた。
これだけの広さ、マナの大半を使うな……。
両手を広げ上に向けたエリオットは、マナを放出して水蒸気を集める。すると局所的に黒い雲が現れた。
もうちょっとだ……。戦闘中でも、あまり使わなかったから難しいな。
その雲はみるみる大きくなり、白かった雲は濃度を増し、黒雲へと変わっていく。やがてとぐろを巻くように分厚く重なった黒雲の中に稲光が走り始める。
今だ!
エリオットは体全体を使ってマナを放出した。彼が腕を降り下ろすと同時に青い稲妻がザルト海峡へと叩き落される。
空気が急激に膨張して破裂音が響き渡り、海面に落ちた稲妻は四散し、暗いザルト海峡の隅々まで行き渡る。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
膝を付き、息も絶え絶えのエリオットは、腰からポーションを取り出して飲み込む。
どうだ……。
稲妻が直撃したザルト海峡は少しずつ勢いを弱めていく。稲妻を喰らった魚が気絶して浮き上がっていた。ただ三分ほどで、その流れは止まった。そして海が割れ、海底が姿を現す。その超自然的な様子を五人は見ていた。その海底には一つの人影があった。その生命体はゆっくりと五人の方へと歩いてくる。
「今のはお前か」
その人影は人語を話した。
仕事終わりの漁師を捕まえての情報収集となった。
「あー、無理無理。ザルト海峡で何人の漁師が犠牲になったか知っているのか?」
「ビルダーナへの定期船も無いよ。オルビス大海では、ザルト海峡を回避する旅人を狙った海賊がいるからね」
否定的な意見しか拾う事が無いかに思われたが、中には有益な情報をくれる漁師もいた。
「船は出せないが、ザルト海峡をよく知る人ならいるよ」
「ああ、リンケルの爺さんだな、この町の教会の隣に住んでいる。あの人なら俺たちよりも詳しいかもな」
「そうそう。その人は学者さんだ。もともと天文学をやっていたのだが、いつの日かザルト海峡も調べ始めていたな」
「教会の隣ですね。行って聞いてみます。情報ありがとうございます」
「ああ、私がリンケルという者だが」
扉を叩くと現れたその老人は、長い髭を蓄え、それを扱きながら答えた。
「ザルト海峡について聞きたいのですが」
「大雑把な質問だな……。それなら話が長くなる。中に入りたまえ」
一人暮らしだろうか、調度品の数は少なく小奇麗にしている部屋だった。
「今お茶を出す」
キッチンの方から良い香りがしてきた。ビルダーナでは嗅いだことのない香りだ。隣国なのに文化の違いが顕著で、それがザルト海峡の意味を表していた。
トレイを持ってキッチンから出てきたリンケルは、小さい茶器を四人に配り正面に腰を下ろす。
「んで、ザルト海峡の何を知りたいのだ?」
「ザルト海峡を渡りたいのですが、どうすればいいでしょうか?」
「んー、渡るのか……。ならば深夜だな」
「深夜ですか?」
「深夜から早朝にかけて流れが緩やかになる。私は天文学をやっていた。潮の流れというものは、この星の自転と月の潮力によって引き起こされることが分かっている。たが、ザルト海峡はその法則に当てはまらない。何か別の力が働いているようなのだ。私の計算で導かれる答えとは、全く繋がらない」
「ザルト海峡に何かある、ということですか?」
「分からん。それを知りたいために十五年前からザルト海峡の研究も始めたのだが、年々海流が早くなっているようだ。もっと調べたいが、もう歳には勝てない。このまま解明できずに死んでいくのかと思うと悔しくてな」
「分かりました。その願いに答えられるか分かりませんが、一つ試してみます」
昼過ぎ、ザルト海峡沿岸にエリオットたちはいた。リンケルも背後で待機している。ザルト海峡を挟んでビルダーナが見える。
「おい、エリオット、何をする気だ?」
「雷(いかづち)をザルト海峡に放ってみます。何か変化があるかもしれません。ザルト海峡に行き渡る様に放ちますので、皆さん下がっていてください」
「分かった、無茶はするなよ」
四人は三十メートルほど離れ、エリオットの様子を覗っていた。
これだけの広さ、マナの大半を使うな……。
両手を広げ上に向けたエリオットは、マナを放出して水蒸気を集める。すると局所的に黒い雲が現れた。
もうちょっとだ……。戦闘中でも、あまり使わなかったから難しいな。
その雲はみるみる大きくなり、白かった雲は濃度を増し、黒雲へと変わっていく。やがてとぐろを巻くように分厚く重なった黒雲の中に稲光が走り始める。
今だ!
エリオットは体全体を使ってマナを放出した。彼が腕を降り下ろすと同時に青い稲妻がザルト海峡へと叩き落される。
空気が急激に膨張して破裂音が響き渡り、海面に落ちた稲妻は四散し、暗いザルト海峡の隅々まで行き渡る。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
膝を付き、息も絶え絶えのエリオットは、腰からポーションを取り出して飲み込む。
どうだ……。
稲妻が直撃したザルト海峡は少しずつ勢いを弱めていく。稲妻を喰らった魚が気絶して浮き上がっていた。ただ三分ほどで、その流れは止まった。そして海が割れ、海底が姿を現す。その超自然的な様子を五人は見ていた。その海底には一つの人影があった。その生命体はゆっくりと五人の方へと歩いてくる。
「今のはお前か」
その人影は人語を話した。
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