勇者が来る!!

北丘 淳士

文字の大きさ
上 下
59 / 67

復旧

しおりを挟む
「この度の復旧作業、感謝いたします、勇者殿」
 ジラール連合国首都アルカタナスの議事堂でフェンバックは片膝をついて敬う。
 かつてオルガノフ帝が勇者の怒りを買い、重傷を負ったことをトラステリアを通じて知っていたからだ。
「いえいえ、頭をお上げください、私は当然の事をしたまでです」
「その勇者殿に、もう一つお願いがございます」
「何でしょう?」
「実はここから北に二日ほどかかるトコーズに洞窟があるのですが、そこに牛頭人身の魔物が巣食いまして、住民が恐れているのです。我々といたしましても、まだ復旧作業が残っていますので、民兵を割くことが出来ないのです。なにとぞ力添えをしていただけたらと思います」
「分かりましたので、頭をお上げください」
「旅費でしたら、こちらに用意しております。勇者殿、御武運を!」

 アルカタナスの街中を行くエリオットたちは、路銀の入った革袋の中身をみて驚いていた。
「こんなにあれば一ヶ月は飲んで暮らせるぞ」
「何か待遇良すぎないですかね」
「どれどれ、って、うわっ、全部金貨じゃない!」
「何か裏があるのでしょうか……」
「まぁ、それだけ期待されているって事なんじゃないかな。トコーズの洞窟は完全攻略しなくては」
 その日はアルカタナスの宿に泊まり、翌朝、北門を目指した。

 その二日後、トラステリアは最後の魔物を檻に入れ終わったシノビを見ていた。
「もうすぐ、この旅も終わりですね。皆さんお疲れさまでした。色々とありましたが良い旅でした。まあ、まだ魔王の問題がありますが、いないと分かればエリオットさんも諦めるでしょう」
 彼女は、ずっと旅を共にしてきたシノビに労いの言葉をかけ、深々と頭を下げた。
「ええ、本当に苦労しましたね。やっと精神をすり減らす作業から解放されます」
「トラステリアさんは帰国後、まだ脚本家を続けるのですか?」
「ええ、でも今までの勇者の功績と後世に伝える勇者譚を書く作業が残っています」
「そうですね。今回は文献の内容と一致していない事もありましたからね」
「とにかく、これで最後です。しっかりと最強の魔物を配置しましょう」
 トラステリアたちは、松明を持ったシノビを先頭にトコーズの洞窟へと入っていった。

「話によるとトコーズの西にその洞窟があるようですね。でも魔物がいるという話は聞かなかったのですが」
「おそらく政府が先に見つけて、村の人間には伝えてないんじゃないかな」
 質問をぶつけられたベルハルドは、差し障りが無いように話を合わせた。
「それもそうですね。とりあえず魔物の殲滅に向かいましょう」
 トコーズを出てから道案内が出ており、迷わずに二時間程で件の洞窟に辿り着いた。
「案内板が出てますよ。観光地だったのでしょうか?」
 トコーズの洞窟の前に、大きく看板で案内がされてあった。
 ベルハルドは頭を抱える。
「まあ、とりあえず魔物の殲滅だ」
「ケイト、また頼んでも良いかな」
「良いわよ。私、これぐらいしか役に立たないし」
 カルナからマナを貰ったケイトは光を放ち、洞窟の入り口を明るく照らす。
「行きましょう!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...