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おまじない
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ジラール国内の復興作業が七割方片付いた。ほとんどの主要道路は通れるようになり、あと一路を残すところまで来た。夕日が辺りを橙に染め上げ、少しずつ闇が侵食して、今日も終わりの日がやってくる。
篝火が必要になってきた頃、エリオットは路肩に座って木製の水筒から直に水を飲んでいた。彼は溜息をつきながら、そこから見渡せる景色を眺めている。
もう復旧まで間近だな。
遠くを眺めると、山々に小さくではあるが人の往来を知らせる光がある。
そんな時、ウィスが隣に座ってきた。
「ねぇ、エリオット、私にも水頂戴」
「うん、はい」
その木製の水筒を渡す。
ウィスは蓋を開けて、直に水を飲んだ。
「もうすぐね、復旧まで」
「そうだね」
「あのね、エリオット。魔王を倒した後って考えているの?」
「倒した後か……、一応は考えている」
ウィスはエリオットの緑色の瞳を見つめていた。
「父さん母さんのようにスワリ村でのんびり過ごしたいと思っているよ」
「そこに……、私はいる?」
その「いる」は「要る」か「居る」か分からない口調だったが、エリオットは笑顔を向けた。
「うん、そのつもりだよ。でも無事に帰って来てからね」
その言葉にウィスは顔を綻ばせる。
「私ね、エリオットの事が好き。ずっと一緒にいたいと思っている。小さい頃から一緒にいてくれて、面倒まで見てくれて、そしてこの国の為に必死に頑張っている。そんなあなたを好きにならないはずがない」
ウィスは顔色を変えずに告白する。芯の通った告白だった。
「うん、でも無事に魔王を倒さないと」
「それなら、エリオットちょっと」
人差し指をくいくいっと動かしながら、ウィスはエリオットを近づけさせる。眉を顰めながら身を乗り出して近づいた彼に、ウィスは一瞬、唇を合わせるだけのキスをした。
「無事にスワリ村に着くためのおまじない」
突然のキスにエリオットは驚いたが、溜息をつきながら笑顔を溢した。
「エイナ姫に断りの手紙を書かなくちゃな」
「そうよ! エリオットったら油断しちゃって。私、びっくりしたんだから!」
エリオットの肩に乗っていたケイトも二人の会話に安堵の溜息をつく。
野宿の準備を終えたベルハルドが二人を呼びに来るまで、二人は色々な会話をしていた。
翌午前中、ウィスは時々、笑みを溢しながら復旧作業をこなしていた。
そんなウィスを見ていたカルナが、何か含んだ笑みを浮かべながら彼女に近づいてきた。
「昨日、エリオットさんと何かあったんですか?」
「いいや、別に何もないわよ」
ウィスは手押し車に土砂を積みながら答える。
「うそうそ、何かあったんでしょう!?」
「あなた、こういう話、好きね……」
ウィスはカルナに横目を向ける。
「だって憧れるじゃないですか、好きな男性とのロマンス! 私にも王子様が現れないですかね!」
「はいはい、仕事しましょ」
「もう、ウィスさんてっば、ノリが悪いんだから」
篝火が必要になってきた頃、エリオットは路肩に座って木製の水筒から直に水を飲んでいた。彼は溜息をつきながら、そこから見渡せる景色を眺めている。
もう復旧まで間近だな。
遠くを眺めると、山々に小さくではあるが人の往来を知らせる光がある。
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「うん、はい」
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「そこに……、私はいる?」
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ウィスは顔色を変えずに告白する。芯の通った告白だった。
「うん、でも無事に魔王を倒さないと」
「それなら、エリオットちょっと」
人差し指をくいくいっと動かしながら、ウィスはエリオットを近づけさせる。眉を顰めながら身を乗り出して近づいた彼に、ウィスは一瞬、唇を合わせるだけのキスをした。
「無事にスワリ村に着くためのおまじない」
突然のキスにエリオットは驚いたが、溜息をつきながら笑顔を溢した。
「エイナ姫に断りの手紙を書かなくちゃな」
「そうよ! エリオットったら油断しちゃって。私、びっくりしたんだから!」
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「うそうそ、何かあったんでしょう!?」
「あなた、こういう話、好きね……」
ウィスはカルナに横目を向ける。
「だって憧れるじゃないですか、好きな男性とのロマンス! 私にも王子様が現れないですかね!」
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