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主導権
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鵺がルリ・タチカワたちに討伐されたことで、ジラール連合国に局地的な地震が起きた。険峻な山々は崩れ、各地の行路を塞ぎ、経済が一時的に麻痺した。
復興のための補給路を作る担当となったフェンバックは頭を抱えていた。
「ああ、私たちの国が最後になるなんて……、魔王もいないし、どうすれば……」
「一ヶ月でエルサントを解放したのですね。貴方たちは、なかなかの腕前と見ました」
馬車を引きつつ、エリオットと会話しているルリの隣で、ウィスとトウジはまだ睨み合っていた。
「いやいや、君たちだって二人で、あの巨大な魔物を二人で倒したなんて凄いよ」
「この国は私たちの生まれ故郷ですから。時々、魔物が出るのですが相手するのに苦ではありません。ただ今年は魔物の目撃例が以前に増して多いです。私たちが動かねば」
自分なりの正義を掲げるルリにエリオットは納得の表情を見せた。
その時、ウィスが鏃でエリオットの脇を突く。
「いてっ! 何するんだウィス!」
「別にぃー」
パーティーが増えたことでベルハルドは頭を抱えていた。
ルリとトウジに、エリオットの勇者たる存在を教えて良いものかどうか。頃合いを見てトラステリアと相談することに決めた。
イツツクニの北の平原で、六人は三メートルはあろう風神と戦っていた。
「これほどの強敵が現れるのは初めてです!」
猛風纏うその巨体に近づくことも出来ず、ウィスやトウジの投擲武器も役に立たなかった。ベルハルドの盾も、その面積が邪魔になり近づけない。
カルナの回復魔法を受けながらエリオットはタイミングを見計らっていた。
「ウィス、トウジ、タイミングを合わせて左右同時に攻撃してくれ」
「でも、矢が風に邪魔されて届かないわ!」
「良いから、左右同時に!」
その言葉にトウジも頷く。
初めての連携に戸惑い、なかなか同時に投擲出来ずも何回目かでタイミングが合った。
左右から飛んでくる矢やクナイに雷神は自分の周囲に旋風を起こした。
それとほぼ同時に、エリオットは左手から風と火を混ぜた火球を放った。その火球は風神の足元に着弾すると、風神の旋風に巻き込まれ、風神が火の渦に包み込まれる。風神はたまらず風を解き放った。火に炙られ、硬直した風神にルリが柄に手をかけ肉薄する。そして抜刀と共に風神の足を斬った。
魔法を放ち終えたエリオットが剣を片手に止めを刺そうとするも、膝をついた風神の首をルリが続く連撃で首を斬った。最後に猛風を撒き散らしながら雷神は姿を消した。
「エリオット殿、先ほどの火球は?」
「ああ、魔法っていうんだ」
「マホウ……、ですか。不思議な技を使うのですね。貴方が魔王とやらを倒しにいくのも分かる気がします」
ルリに止めを刺されたエリオットは、剣を鞘に戻した。
「いやぁ、皆がいないと勝てなかったよ」
六人はイツツクニを北上しながら二カルス海峡を目指していた。
イツツクニでの戦いに慣れている二人の加勢により、エリオットが魔物相手に止めを刺す機会が減り、世界各地で災害が起きていた。
文献では一度訪れた国には災害が起きない、とされていたが、それは間違いであった。現代を生きる証人によってそれは後に編纂されることになった。
その被害は、トラステリアの耳にも入ってきていた。その事をベルハルドに伝える。
「ベルハルドさん二カルス海峡で、新しく入った二人と別れて行動しましょう。世界に甚大な被害が出ています」
復興のための補給路を作る担当となったフェンバックは頭を抱えていた。
「ああ、私たちの国が最後になるなんて……、魔王もいないし、どうすれば……」
「一ヶ月でエルサントを解放したのですね。貴方たちは、なかなかの腕前と見ました」
馬車を引きつつ、エリオットと会話しているルリの隣で、ウィスとトウジはまだ睨み合っていた。
「いやいや、君たちだって二人で、あの巨大な魔物を二人で倒したなんて凄いよ」
「この国は私たちの生まれ故郷ですから。時々、魔物が出るのですが相手するのに苦ではありません。ただ今年は魔物の目撃例が以前に増して多いです。私たちが動かねば」
自分なりの正義を掲げるルリにエリオットは納得の表情を見せた。
その時、ウィスが鏃でエリオットの脇を突く。
「いてっ! 何するんだウィス!」
「別にぃー」
パーティーが増えたことでベルハルドは頭を抱えていた。
ルリとトウジに、エリオットの勇者たる存在を教えて良いものかどうか。頃合いを見てトラステリアと相談することに決めた。
イツツクニの北の平原で、六人は三メートルはあろう風神と戦っていた。
「これほどの強敵が現れるのは初めてです!」
猛風纏うその巨体に近づくことも出来ず、ウィスやトウジの投擲武器も役に立たなかった。ベルハルドの盾も、その面積が邪魔になり近づけない。
カルナの回復魔法を受けながらエリオットはタイミングを見計らっていた。
「ウィス、トウジ、タイミングを合わせて左右同時に攻撃してくれ」
「でも、矢が風に邪魔されて届かないわ!」
「良いから、左右同時に!」
その言葉にトウジも頷く。
初めての連携に戸惑い、なかなか同時に投擲出来ずも何回目かでタイミングが合った。
左右から飛んでくる矢やクナイに雷神は自分の周囲に旋風を起こした。
それとほぼ同時に、エリオットは左手から風と火を混ぜた火球を放った。その火球は風神の足元に着弾すると、風神の旋風に巻き込まれ、風神が火の渦に包み込まれる。風神はたまらず風を解き放った。火に炙られ、硬直した風神にルリが柄に手をかけ肉薄する。そして抜刀と共に風神の足を斬った。
魔法を放ち終えたエリオットが剣を片手に止めを刺そうとするも、膝をついた風神の首をルリが続く連撃で首を斬った。最後に猛風を撒き散らしながら雷神は姿を消した。
「エリオット殿、先ほどの火球は?」
「ああ、魔法っていうんだ」
「マホウ……、ですか。不思議な技を使うのですね。貴方が魔王とやらを倒しにいくのも分かる気がします」
ルリに止めを刺されたエリオットは、剣を鞘に戻した。
「いやぁ、皆がいないと勝てなかったよ」
六人はイツツクニを北上しながら二カルス海峡を目指していた。
イツツクニでの戦いに慣れている二人の加勢により、エリオットが魔物相手に止めを刺す機会が減り、世界各地で災害が起きていた。
文献では一度訪れた国には災害が起きない、とされていたが、それは間違いであった。現代を生きる証人によってそれは後に編纂されることになった。
その被害は、トラステリアの耳にも入ってきていた。その事をベルハルドに伝える。
「ベルハルドさん二カルス海峡で、新しく入った二人と別れて行動しましょう。世界に甚大な被害が出ています」
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