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二人の英雄
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一時間だけ睡眠を許可されたエリオットたちは、朝日がすっかり登り切った参道を歩く。住民の話によると、その先にミタミ神社はあるはずだ。
「……というわけで、俺とウィスが強襲しよう。敵は素早いらしいから少々の覚悟を持って。躊躇していたら、やられるかもしれない」
「分かったわ。回復はカルナがやってくれるから、私たちは攻撃に専念するってことね」
長い参道を歩き階段を登り切った先に見えた光景に、四人は目を疑った。
そこは、もうすでに戦いが終わった後で、虎のような鋭い爪を持ち、蛇の尾を持った魔物が首を切断された状態で横たわっていた。近くにはその魔物と思しき、猿のような頭も落ちている。他の魔物もすでに駆逐された後であった。
エリオットたちに背中を向け、その鵺(ぬえ)を見下ろす二人がいた。その一人は上に白い道着下は黒の袴、日本刀を持った女性。姫カットの髪は、動きやすいように後ろで縛ってある。もう一人は口元まで黒装束の黒髪短髪の男。その二人はエリオットたちに気づくと、軽く振り返り肩越しに四人を見つめる。
「これは……、どういうことだ?」
呆然としているエリオットたちに、日本刀を持つ女性が答える。
「住民が困っていたので、仁により成敗しました」その日本刀を持つ女性はエリオットたちの装備をまじまじと見た。「貴方たちも鵺を討滅しに来たのですか? 弱い正義は身を滅ぼしますよ、お止めなさい」
弱い、という言葉にウィスはカチンと来た。
「あら、ちょっと大きな魔物を倒したぐらいで、いい気になるなんて、よっぽど弱い敵としか戦って来てないのね」
「お嬢になんと無礼な事を!」
その黒装束の男は脇差を抜いて構える。
「やる気ね!」
「よく見ると、貴方も魔物と戦い旅をしているようですね。貴方が正義を貫ける強さか、私が証明しましょう」
日本刀を正眼に構えエリオットと対峙する。
「いや、俺は戦う気はない!」
「やめろ!!」
一触即発の状態の時、ベルハルドが境内に響く声で一喝した。
「人間同士で戦ってどうするんだ。練習試合ならまだともかく、真剣で斬り合うなんてどうかしている」
鵺を倒した二人は戦いの後の興奮が治まらず、それにウィスは挑発を返してしまった事を責めた。
日本刀を持つ女性は警戒の糸を解いて、日本刀に付いた血を振って飛ばし納刀した。
「それもそうですね。トウジ、ここは矛を収めましょう」
「はい、お嬢」
トウジと呼ばれた黒装束の男も脇差を収める。
「貴方達も鵺を討伐しに来たのですね」
「ああ、だがどうやら先を越されたようだな」
「……、ひょっとして貴方たちはエルサントからやってきたのですか?」
「そうだ、エルサントの首都を解放してからやってきた」
「そうですか。エルサントの首都を解放したのは、貴方たちだったのですね。街の人から話は聞いていました」
その時、エリオットはエルサントの街で聞いた、二人の英雄の話を思い出した。
「そうか、君たちもエルサント解放に動いていたのか」
「なぜエルサントからイツツクニに渡って来たのですか?」
「それは魔王を討伐するためだ」
魔王なんていないがな、とベルハルドは心の中で溜息をつく。
「魔王……、本当にそのような者がいるのですか?」
「いる。確かに感じるんだ」
日本刀を持つ女性は小さい頤に指をあてて、しばらく考えた。
「分かりました。そのような存在がいるのでしたら、民に災いをもたらせます。討伐しなくてはいけません。私たちも加勢しましょう」
日本刀を持つ女性は手を出してきた。
エリオットは、つい反射的に手を握ってしまった。
「私はルリ・タチカワ。そして供のシノビがトウジ・カガです。以後よしなに」
パーティーに、ルリ・タチカワとトウジ・カガが加わった。
「なんで! なんで予定通りにいかないの!?」
その会話を聞いていたトラステリアは地団太を踏んでいた。
「まあまあ、トラステリアさん、ここはウメシュでも飲んで温泉に入りましょう。疲れが取れますよ」
宥めるシノビにトラステリアは睨み返した。
「こうなったら皆まとめて面倒見てやるわ、覚悟しなさい!」
何の覚悟か分からなかったが、シノビは胸を撫で下ろした。
「……というわけで、俺とウィスが強襲しよう。敵は素早いらしいから少々の覚悟を持って。躊躇していたら、やられるかもしれない」
「分かったわ。回復はカルナがやってくれるから、私たちは攻撃に専念するってことね」
長い参道を歩き階段を登り切った先に見えた光景に、四人は目を疑った。
そこは、もうすでに戦いが終わった後で、虎のような鋭い爪を持ち、蛇の尾を持った魔物が首を切断された状態で横たわっていた。近くにはその魔物と思しき、猿のような頭も落ちている。他の魔物もすでに駆逐された後であった。
エリオットたちに背中を向け、その鵺(ぬえ)を見下ろす二人がいた。その一人は上に白い道着下は黒の袴、日本刀を持った女性。姫カットの髪は、動きやすいように後ろで縛ってある。もう一人は口元まで黒装束の黒髪短髪の男。その二人はエリオットたちに気づくと、軽く振り返り肩越しに四人を見つめる。
「これは……、どういうことだ?」
呆然としているエリオットたちに、日本刀を持つ女性が答える。
「住民が困っていたので、仁により成敗しました」その日本刀を持つ女性はエリオットたちの装備をまじまじと見た。「貴方たちも鵺を討滅しに来たのですか? 弱い正義は身を滅ぼしますよ、お止めなさい」
弱い、という言葉にウィスはカチンと来た。
「あら、ちょっと大きな魔物を倒したぐらいで、いい気になるなんて、よっぽど弱い敵としか戦って来てないのね」
「お嬢になんと無礼な事を!」
その黒装束の男は脇差を抜いて構える。
「やる気ね!」
「よく見ると、貴方も魔物と戦い旅をしているようですね。貴方が正義を貫ける強さか、私が証明しましょう」
日本刀を正眼に構えエリオットと対峙する。
「いや、俺は戦う気はない!」
「やめろ!!」
一触即発の状態の時、ベルハルドが境内に響く声で一喝した。
「人間同士で戦ってどうするんだ。練習試合ならまだともかく、真剣で斬り合うなんてどうかしている」
鵺を倒した二人は戦いの後の興奮が治まらず、それにウィスは挑発を返してしまった事を責めた。
日本刀を持つ女性は警戒の糸を解いて、日本刀に付いた血を振って飛ばし納刀した。
「それもそうですね。トウジ、ここは矛を収めましょう」
「はい、お嬢」
トウジと呼ばれた黒装束の男も脇差を収める。
「貴方達も鵺を討伐しに来たのですね」
「ああ、だがどうやら先を越されたようだな」
「……、ひょっとして貴方たちはエルサントからやってきたのですか?」
「そうだ、エルサントの首都を解放してからやってきた」
「そうですか。エルサントの首都を解放したのは、貴方たちだったのですね。街の人から話は聞いていました」
その時、エリオットはエルサントの街で聞いた、二人の英雄の話を思い出した。
「そうか、君たちもエルサント解放に動いていたのか」
「なぜエルサントからイツツクニに渡って来たのですか?」
「それは魔王を討伐するためだ」
魔王なんていないがな、とベルハルドは心の中で溜息をつく。
「魔王……、本当にそのような者がいるのですか?」
「いる。確かに感じるんだ」
日本刀を持つ女性は小さい頤に指をあてて、しばらく考えた。
「分かりました。そのような存在がいるのでしたら、民に災いをもたらせます。討伐しなくてはいけません。私たちも加勢しましょう」
日本刀を持つ女性は手を出してきた。
エリオットは、つい反射的に手を握ってしまった。
「私はルリ・タチカワ。そして供のシノビがトウジ・カガです。以後よしなに」
パーティーに、ルリ・タチカワとトウジ・カガが加わった。
「なんで! なんで予定通りにいかないの!?」
その会話を聞いていたトラステリアは地団太を踏んでいた。
「まあまあ、トラステリアさん、ここはウメシュでも飲んで温泉に入りましょう。疲れが取れますよ」
宥めるシノビにトラステリアは睨み返した。
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何の覚悟か分からなかったが、シノビは胸を撫で下ろした。
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