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バスティロ攻略
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七人が街の中央の教会に着くと、その教会の屋根から声が響いた。
『お前たちか、せっかく私が生み出した魔物を倒して回っているのは』
人語を話す魔物を見上げ、エリオットたちは足を止めた。背後から少し遅れてウィスがやってくる。
「多分あれがバスティロよ! 書物の特徴と一致している。次の街にいるはずなのに!」
濃い紫の体を持ち、人の形を保っているものの、その体の表面は波打っている。背丈は二メートルほど。建物の上に立っているせいか、威圧感があった。
『お前たちが侵略していきてるのは分かっていた。私の分身を倒していたからな』
「侵略しているのは、お前の方だろ! 討滅してやる」
建物の上にいたバスティロが飛び降りてきた。着地した床にヒビが入る。着地した瞬間を狙ってウィスが矢を放った。その矢はバスティロの頭部へ一直線に向かったが、しなる腕で払い落とした。
バスティロが臨戦態勢に入る前にエリオットとベルハルド、アリベルが剣を構え突進する。
「よくも私の故郷を!」
だがアリベルの剣はかわされた。立て続けにベルハルドの突きがバスティロの頭部を狙うも、軟体のバスティロは頭部を胴体に引っ込め、それをかわす。エリオットの剣はバスティロの右腕を関節の部分で切断した。バックステップしたバスティロにエリオットの二撃目は空ぶる。その切断した右腕は少しずつ蠢きながら伸び、もとの腕に戻った。
「剣が効かない?」
「だが頭部は回避している。おそらく頭部が弱点だ」
そう話をしている間に、隣にいたアリベルが吹っ飛んだ。エリオットとベルハルドは視野を広げた。
切断した右腕から現れた紫色の生命体がアリベルを攻撃したのだ。ウィンベルトがアリベルに駆け寄る。打撃系の攻撃を喰らったアリベルは胸を抑えて呻いた。
ウィス以外の三人の騎士は、その生命体に向かって攻撃を繰り出し首を撥(は)ねると同時に、再びバスティロはエリオットたちに向かって突進してきた。その重量と二メートルもの高さから繰り出す鞭のような打撃をかわしながら、切断することが出来ず防戦一方だった。
バスティロの蹴りを避け、エリオットは今まで温存していた炎の魔法を、至近距離から放った。
「あっち!」
予告も無く至近距離で放たれた炎に、ベルハルドは巻き添えを喰らいそうになる。
突然の魔法をもろに受けたバスティロは、苦しみながら距離を置く。炎がバスティロを覆い、彼は体をコマのように旋回させて炎を弾き飛ばした。バスティロの表皮は焦げているものの、少しずつ回復している。
『魔法か、厄介な!』
「効いているのか?」
「いや、回復しているので、たいして効いてないでしょう。おそらく一時しのぎにしかなりません」
「頭部を切断するしかないのか……」
「切断……、そうだ、ケイト!」
「なーに?」鎧の隙間からケイトが顔を出す。
「俺が合図したら――」
話し合いをしている最中にも、バスティロは突進してきた。棍棒のような鞭を振い、ベルハルドたちはかわす。打たれた地面にはヒビが入っていた。
それを見たベルハルドは、盾で防いでも、かなりのダメージを喰らうだろうと思惟する。
変幻自在な攻撃を繰り出すバスティロが大振りの一撃を繰り出した。その横薙ぎの一撃を放った後、捻った上半身が戻る反動で、裏拳のような一撃を放つも空振りに終わる。バスティロの胸が開いた。
「今だ!」
鎧の隙間から飛び出したケイトが一気にマナを発散し、強烈な光を放った。エリオットは目を閉じ、その光を防ぐ。
バスティロとベルハルドは、その光で視界を失った。
光が収まり、まだ視力が戻らないバスティロの首筋に、エリオットは手を翳し氷結魔法を放った。バスティロの首筋が凍り付く。そして飛び上がり、両手で顔を抑えている間に突きを放った。鋭いその一閃は凍ったバスティロの首ごと切断した。そのままバスティロは倒れ、その身体は溶けるように朽ちていった。
隣でベルハルドが目を抑えて呻く。
「おいおい、光るなら言ってくれよ」
「すいません、時間が無かったもので」
周囲を見渡すと他の衛兵たちが、ある程度、魔物を討滅していた。
「これで山場は越えたかな」
その後、二日で首都を奪還したエリオットたちは、残る二つの街の奪還に向かった。だが街道の魔物が思ったよりも少ない。疑問に思いながら討伐を進め、街に着いた時だった。市民が歓声を上げ、解放の喜びに浸り祭り騒ぎになっていた。
「この街はどうしたのですか?」
ベルハルドが市民に問うと、意外な答えが返ってきた。
「二人の英雄が魔物を全て退治してくれたのですよ。いやぁ、怒涛の強さでした」
「二人の英雄?」
エルサントの魔物全てを討伐する予定だったエリオットの頭に疑問符が浮かんだ。
「そうか……、僕は、もういらなかったんだ……」
その頃、イツツクニのある島では凄まじい雷雨により、停電と地滑りが起きていた。数多の住人が避難所生活を余儀なくされ、復興のために莫大な予算が次ぎ込まれた。
「早く来てくれないかな……」
元首相のタニヤ・フジは被災地で炊き出しをしながら思った。
復活した軍を率いて、約一ヶ月でエルサントの魔物掃討は終了し、エリオットたちはエルサントの首相から叙勲されていた。
「勇者一行殿、よくぞエルサントを取り戻して下さいました。勲章を授与するとともに、私たちより由緒ある鎧を贈呈いたします」
勇者の為に飼育していた魔物の為に自国が危機に陥ったのだが、勇者の厄災を恐れて首相はそれを顔に出さずに勲章を手渡した。そしてグレイズ王国より預かっていた勇者の鎧を、台車に乗せて係りの者が持ってくる。
また重そうだな……。
「いえ、私には父から貰い受けました鎧がありますので、その貴重な鎧はどうぞお納め下さい」
やっぱりそうくるか。
『一応、貰って下さい』
トラステリアから指示が飛ぶ。
「畏まりました、頂戴いたします。って、うわっ重いな!」
ベルハルドが立ち上がり鎧を持つも、相当重かった。
「すいません、馬車まで台車を借りて良いですか?」
『お前たちか、せっかく私が生み出した魔物を倒して回っているのは』
人語を話す魔物を見上げ、エリオットたちは足を止めた。背後から少し遅れてウィスがやってくる。
「多分あれがバスティロよ! 書物の特徴と一致している。次の街にいるはずなのに!」
濃い紫の体を持ち、人の形を保っているものの、その体の表面は波打っている。背丈は二メートルほど。建物の上に立っているせいか、威圧感があった。
『お前たちが侵略していきてるのは分かっていた。私の分身を倒していたからな』
「侵略しているのは、お前の方だろ! 討滅してやる」
建物の上にいたバスティロが飛び降りてきた。着地した床にヒビが入る。着地した瞬間を狙ってウィスが矢を放った。その矢はバスティロの頭部へ一直線に向かったが、しなる腕で払い落とした。
バスティロが臨戦態勢に入る前にエリオットとベルハルド、アリベルが剣を構え突進する。
「よくも私の故郷を!」
だがアリベルの剣はかわされた。立て続けにベルハルドの突きがバスティロの頭部を狙うも、軟体のバスティロは頭部を胴体に引っ込め、それをかわす。エリオットの剣はバスティロの右腕を関節の部分で切断した。バックステップしたバスティロにエリオットの二撃目は空ぶる。その切断した右腕は少しずつ蠢きながら伸び、もとの腕に戻った。
「剣が効かない?」
「だが頭部は回避している。おそらく頭部が弱点だ」
そう話をしている間に、隣にいたアリベルが吹っ飛んだ。エリオットとベルハルドは視野を広げた。
切断した右腕から現れた紫色の生命体がアリベルを攻撃したのだ。ウィンベルトがアリベルに駆け寄る。打撃系の攻撃を喰らったアリベルは胸を抑えて呻いた。
ウィス以外の三人の騎士は、その生命体に向かって攻撃を繰り出し首を撥(は)ねると同時に、再びバスティロはエリオットたちに向かって突進してきた。その重量と二メートルもの高さから繰り出す鞭のような打撃をかわしながら、切断することが出来ず防戦一方だった。
バスティロの蹴りを避け、エリオットは今まで温存していた炎の魔法を、至近距離から放った。
「あっち!」
予告も無く至近距離で放たれた炎に、ベルハルドは巻き添えを喰らいそうになる。
突然の魔法をもろに受けたバスティロは、苦しみながら距離を置く。炎がバスティロを覆い、彼は体をコマのように旋回させて炎を弾き飛ばした。バスティロの表皮は焦げているものの、少しずつ回復している。
『魔法か、厄介な!』
「効いているのか?」
「いや、回復しているので、たいして効いてないでしょう。おそらく一時しのぎにしかなりません」
「頭部を切断するしかないのか……」
「切断……、そうだ、ケイト!」
「なーに?」鎧の隙間からケイトが顔を出す。
「俺が合図したら――」
話し合いをしている最中にも、バスティロは突進してきた。棍棒のような鞭を振い、ベルハルドたちはかわす。打たれた地面にはヒビが入っていた。
それを見たベルハルドは、盾で防いでも、かなりのダメージを喰らうだろうと思惟する。
変幻自在な攻撃を繰り出すバスティロが大振りの一撃を繰り出した。その横薙ぎの一撃を放った後、捻った上半身が戻る反動で、裏拳のような一撃を放つも空振りに終わる。バスティロの胸が開いた。
「今だ!」
鎧の隙間から飛び出したケイトが一気にマナを発散し、強烈な光を放った。エリオットは目を閉じ、その光を防ぐ。
バスティロとベルハルドは、その光で視界を失った。
光が収まり、まだ視力が戻らないバスティロの首筋に、エリオットは手を翳し氷結魔法を放った。バスティロの首筋が凍り付く。そして飛び上がり、両手で顔を抑えている間に突きを放った。鋭いその一閃は凍ったバスティロの首ごと切断した。そのままバスティロは倒れ、その身体は溶けるように朽ちていった。
隣でベルハルドが目を抑えて呻く。
「おいおい、光るなら言ってくれよ」
「すいません、時間が無かったもので」
周囲を見渡すと他の衛兵たちが、ある程度、魔物を討滅していた。
「これで山場は越えたかな」
その後、二日で首都を奪還したエリオットたちは、残る二つの街の奪還に向かった。だが街道の魔物が思ったよりも少ない。疑問に思いながら討伐を進め、街に着いた時だった。市民が歓声を上げ、解放の喜びに浸り祭り騒ぎになっていた。
「この街はどうしたのですか?」
ベルハルドが市民に問うと、意外な答えが返ってきた。
「二人の英雄が魔物を全て退治してくれたのですよ。いやぁ、怒涛の強さでした」
「二人の英雄?」
エルサントの魔物全てを討伐する予定だったエリオットの頭に疑問符が浮かんだ。
「そうか……、僕は、もういらなかったんだ……」
その頃、イツツクニのある島では凄まじい雷雨により、停電と地滑りが起きていた。数多の住人が避難所生活を余儀なくされ、復興のために莫大な予算が次ぎ込まれた。
「早く来てくれないかな……」
元首相のタニヤ・フジは被災地で炊き出しをしながら思った。
復活した軍を率いて、約一ヶ月でエルサントの魔物掃討は終了し、エリオットたちはエルサントの首相から叙勲されていた。
「勇者一行殿、よくぞエルサントを取り戻して下さいました。勲章を授与するとともに、私たちより由緒ある鎧を贈呈いたします」
勇者の為に飼育していた魔物の為に自国が危機に陥ったのだが、勇者の厄災を恐れて首相はそれを顔に出さずに勲章を手渡した。そしてグレイズ王国より預かっていた勇者の鎧を、台車に乗せて係りの者が持ってくる。
また重そうだな……。
「いえ、私には父から貰い受けました鎧がありますので、その貴重な鎧はどうぞお納め下さい」
やっぱりそうくるか。
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