41 / 67
砥石採取とカルナの特訓
しおりを挟む
「カルナの表情、明るかったわね」
「ホント、これで少しでも心を開いてくれればいいけど」
「何か、ずっと我慢してきたような感じだったですからね」
無事、宮殿を出ることが出来た三人は、南の鍛冶屋に向かって歩いていた。
途中住人に聞いたりして、やっと目的の鍛冶屋に着く。
「ここが……、鍛冶屋?」
ベルハルドが首を傾げるのも無理はない。普通の民家のようで、武具の陳列も出来ないような様子だったからだ。
「とりあえず、入ってみるか」
「ここは武器の研磨はしておらんのじゃ」
綺麗に禿げ上がった頭に長い髭の店主は、表情一つ変えず、ベルハルドの依頼にそう返した。
「この国は魔法が主力だから、武器の研磨技術が発展していない。農機具の研磨ならしておるが」
「もう一つあるという武器屋も同じですか?」
エリオットの言葉に、店主は頷きで返す。
「まいったな、次のエルサントで砥いでもらうか」
その言葉に店主は少しだけ目を開いた。
「エルサント……、あそこは今、魔物が跋扈していて、ブランノールにいる間に研磨しておいた方が身のためだぞ」
「えっ!? そんな事態になっているのですか」
「そんなに武器の研磨がしたいなら、ケルドの森にある砥石を取ってきてくれたら研磨してやる。今ここにある砥石は荒くて、武器の研磨に向いていない」
「分かりました取ってきます。ケルドの森ってどこにあるのですか?」
「ここブランノールから南東に半日行ったところじゃ。お前さんたちの若さなら、その半分で行けるだろうよ」
「分かりました。砥石を取ってきますので、その時はお願いしますね」
その店主はグッと親指を立てた。
三人は、トラステリアが送り込む弱い魔物を倒しながらケルドの森奥深くに到達した。その岩場には明らかに砥石を採掘したであろう跡が残っていた。
「とりあえず採石場までは来たが、どういうのがいいのか聞いてなかったな」
「そうですね……。手あたり次第持っていきますか」
結局彼らは二十個ほどの砥石を抱えて来た道を戻り、砥石を置いては魔物と戦うという余計な苦労を重ねた。
「二個だな」
「二個ですか」
二十個あった砥石の中で合格点を貰えたのは二個だけだった。
「私もう疲れたわ。お酒でも飲みましょ」
三人が休み、カルナが魔法の特訓をしている間、武器の研磨は終了した。
四人が揃ったのはカルナが特訓に入ってから八日後だった。再び宮殿の大広間に四人がクラーレを待っている。
「特訓……、地獄でした」
特訓漬けだったカルナはゲッソリとした表情を隠せない。
そりゃそうだ。一ヶ月かかるのを一週間って言ってたもの。
エリオットは少しやつれたカルナに同情した。
その時、壇上から靴の音が響く。クラーレが姿を現した。
「さて、勇者諸君、これからが本題です。実はここから西のバルザナ墓地に毎晩魔物が出現して地域の住民が恐怖に陥っています。宮殿の魔導士も人手不足です。良ければ討伐してくれませんか?」
「はい、住民が困っているのであれば」
エリオットは片膝ついて片手を胸に置き、恭しく誓った。
「バルザナ墓地は私の故郷カナティーニにあります。良ければ母に会って、そこで一泊しませんか?」
宮殿を出てカルナはベルハルドたちに催促する。
「そうだな、宿代も浮くし、お邪魔しよう」
「カルナのお母さんも魔導士なんだろ? 宮殿で暮らしてないのかい?」
エリオットはまともな疑問を投げかける。
「宮殿を離れて暮らしている魔導士も何人かいます。母もその一人で、その村で慈善活動をしていました。ですが、ある日突然、原因不明の病に倒れたのです。お義姉さんが言ったように今、数名の魔導士で治療をしているらしいのですが」
「そうか……、とりあえず向かおう。お母さんにも、甘いものを食べさせたいだろ」
「はい、無事であって欲しいです」
エリオットは騎士剣を抜いて、良く研磨された刃を見た。
「よし、行こう!」
「ホント、これで少しでも心を開いてくれればいいけど」
「何か、ずっと我慢してきたような感じだったですからね」
無事、宮殿を出ることが出来た三人は、南の鍛冶屋に向かって歩いていた。
途中住人に聞いたりして、やっと目的の鍛冶屋に着く。
「ここが……、鍛冶屋?」
ベルハルドが首を傾げるのも無理はない。普通の民家のようで、武具の陳列も出来ないような様子だったからだ。
「とりあえず、入ってみるか」
「ここは武器の研磨はしておらんのじゃ」
綺麗に禿げ上がった頭に長い髭の店主は、表情一つ変えず、ベルハルドの依頼にそう返した。
「この国は魔法が主力だから、武器の研磨技術が発展していない。農機具の研磨ならしておるが」
「もう一つあるという武器屋も同じですか?」
エリオットの言葉に、店主は頷きで返す。
「まいったな、次のエルサントで砥いでもらうか」
その言葉に店主は少しだけ目を開いた。
「エルサント……、あそこは今、魔物が跋扈していて、ブランノールにいる間に研磨しておいた方が身のためだぞ」
「えっ!? そんな事態になっているのですか」
「そんなに武器の研磨がしたいなら、ケルドの森にある砥石を取ってきてくれたら研磨してやる。今ここにある砥石は荒くて、武器の研磨に向いていない」
「分かりました取ってきます。ケルドの森ってどこにあるのですか?」
「ここブランノールから南東に半日行ったところじゃ。お前さんたちの若さなら、その半分で行けるだろうよ」
「分かりました。砥石を取ってきますので、その時はお願いしますね」
その店主はグッと親指を立てた。
三人は、トラステリアが送り込む弱い魔物を倒しながらケルドの森奥深くに到達した。その岩場には明らかに砥石を採掘したであろう跡が残っていた。
「とりあえず採石場までは来たが、どういうのがいいのか聞いてなかったな」
「そうですね……。手あたり次第持っていきますか」
結局彼らは二十個ほどの砥石を抱えて来た道を戻り、砥石を置いては魔物と戦うという余計な苦労を重ねた。
「二個だな」
「二個ですか」
二十個あった砥石の中で合格点を貰えたのは二個だけだった。
「私もう疲れたわ。お酒でも飲みましょ」
三人が休み、カルナが魔法の特訓をしている間、武器の研磨は終了した。
四人が揃ったのはカルナが特訓に入ってから八日後だった。再び宮殿の大広間に四人がクラーレを待っている。
「特訓……、地獄でした」
特訓漬けだったカルナはゲッソリとした表情を隠せない。
そりゃそうだ。一ヶ月かかるのを一週間って言ってたもの。
エリオットは少しやつれたカルナに同情した。
その時、壇上から靴の音が響く。クラーレが姿を現した。
「さて、勇者諸君、これからが本題です。実はここから西のバルザナ墓地に毎晩魔物が出現して地域の住民が恐怖に陥っています。宮殿の魔導士も人手不足です。良ければ討伐してくれませんか?」
「はい、住民が困っているのであれば」
エリオットは片膝ついて片手を胸に置き、恭しく誓った。
「バルザナ墓地は私の故郷カナティーニにあります。良ければ母に会って、そこで一泊しませんか?」
宮殿を出てカルナはベルハルドたちに催促する。
「そうだな、宿代も浮くし、お邪魔しよう」
「カルナのお母さんも魔導士なんだろ? 宮殿で暮らしてないのかい?」
エリオットはまともな疑問を投げかける。
「宮殿を離れて暮らしている魔導士も何人かいます。母もその一人で、その村で慈善活動をしていました。ですが、ある日突然、原因不明の病に倒れたのです。お義姉さんが言ったように今、数名の魔導士で治療をしているらしいのですが」
「そうか……、とりあえず向かおう。お母さんにも、甘いものを食べさせたいだろ」
「はい、無事であって欲しいです」
エリオットは騎士剣を抜いて、良く研磨された刃を見た。
「よし、行こう!」
2
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ
阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。
心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。
「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。
「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話
菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。
そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。
超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。
極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。
生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!?
これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる