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クラーレの実情
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お茶が配られ、エリオットとウィスは昔話に花を咲かせていた。丁度、話が途切れたところでカルナが口を開く。
「それでお義姉さん、まだ答えを聞いてないのだけど……」
「そうですね。何から話しましょうか」
クラーレはテーブルに目を落として考えていた。そして訥々と話し始める。
「私は六歳まで宮殿の外で暮らしていました」
クラーレの告白にカルナは目を見開いた。
「お義姉さん、それって……」
「そう、私の母は魔法が使えたのですが、外に住む父と恋に落ちて私が生まれたのです。始め宮中の皆は歓迎してくれましたが、父が外の住人だと分かると、私は忌子として宮外に追いやられ、父の下で暮らすことになりました。だが六歳の頃魔法の素質があると判断された私は、父から切り離され母の下で生活するようになりました。宮中の人間って自分勝手ですよね。そこで私は魔法の特訓を言い渡されました。もとからいた子はある程度初級魔法が使えたのですが、私は出遅れていたのと、忌子であるため阻害されてきました。私は母の地位を下げないため必死で魔法の練習をしました。それこそ睡眠時間を削って」
カルナは今までクラーレは裕福に育ってきたという想像で、自分を恥じた。最初から素質があったわけでなく、他の目標の為、過酷な練習を繰り返してきたことにも衝撃を受けた。
「その内、同学年の生徒たちを追い越し、エリートの道を歩き始めたのです。ただ忌子のレッテルは同学年の子たちのいじめの理由となり、私は父と母のために、それを無視して最高の魔導士になろうと頑張ってきました。確かそれぐらいの時にあなたが産まれたのですよね」
カルナは頷いた。
「そしてある日、勇者育成のための指令が私に与えられたのです。勇者の存在は私たちの国に伝わっていたので、これは名誉のある使命でした。ただ勇者の存在を疑っている人々もいましたので、半ば左遷という見られ方をしたのです。そして私は、より深く外の世界について知ることが出来ました。日頃から明日の為に生活している人々がいて、私の小さなころの記憶を呼び起こしたのです。そしてエリオットの存在も私を驚嘆させるものでした。底知れぬ存在能力、成長速度に私は見とれていったのです」
「それは、お母さんの病気を放って置いてですか!?」
クラーレは頭を振った。
「母からの手紙でラティス叔母さんの病気を知ったのは、その頃です。私は悩みました。何とかエリオットの魔法の基礎が整うまでギリギリ残ったのです。そして私は帰国し、旧態依然のこの国の実態を見て教皇になることを決意しました。外との貧富の差を埋めるためです。だから帰国して、さらに魔法に磨きをかけ、数ある候補生から教皇の地位を得ることが出来たのです」
「そんな……、忌子だったのに、そんなに苦労していたなんて」
「忌子だった私が教皇の座に就いたことは、他の魔導士にとっては歯がゆい事だったでしょう。ですが、アルベイニ前教皇が私を後押ししてくれたのです。私はわざと教皇にはならない素振りを見せ、教皇になる代わりにカナティーニに住む叔母さんの世話をお願いしたいと条件を持ちかけました。あなたがビルダーナに旅立った頃です」
カルナは、生来優秀だと思っていたクラーレの努力を知り、言葉が出なくなった。
「そう、そんな苦労を陰でお義姉さんはしてきたのですね……」
クラーレは自分の娘を見るかの表情で、優しく頷いた。カルナは席を立ちあがり、クラーレを抱きしめた。
「ごめんなさい、ごめんなさい! 私、お義姉さんがそんな苦労と懊悩を抱えて生きていたなんて、露ほども知らなかった! ごめんなさい!」
抱き付くカルナの頭を、クラーレは優しく撫でた。
「私にとって家族は、かけがえのないものです。貴方や叔母さん、父を蔑ろにする訳ないじゃないですか」
クラーレを抱きしめていたカルナは、しばらく義姉の胸で泣き続けた。
カルナも落ち着き、席に戻った。クラーレはカルナが用意していたお菓子を食べ頬が落ちそうになる。
「ところでカルナ、魔法の能力はどの程度まで上がったのですか?」
「クラーレ先生、口の横にお菓子が付いています」
「あら、ごめんなさい。ミネルラートぐらいは使えるようになったのかしら」
「ミネルラートって対アンデットの上級魔法じゃないですか! まだエルラートまでしか使えませんよ。連発は出来るのですが」
「じゃあ、この国にいる間に、ミネルラートを覚えていきましょう」
「えっミネルラートはまだ無理です!」
「いいえ、貴方には、もうその素養があります。私がみっちり教えて上げます。エルラートの連発が出来るくらいなら一週間で体得出来るでしょう。皆さんの役にも立ちますし」
「一週間!? 一ヶ月はかかるんじゃないですか? それに私なんかが出来るでしょうか……」
「貴方はもっと自信を持ちなさい。私と同じ血が流れているんですから」
カルナはエリオットたちの顔色を伺う。
「一週間ぐらい大丈夫だよ。丁度武器の研磨も必要だしね」
クラーレも微笑む。
「皆さん、宿泊は王宮を利用してください。一週間もあれば戦力となるよう鍛え上げますので」
「お義姉さん、時間は大丈夫なのですか?」
「ええ、丁度建国祭も終わったので時間はあります。では今日から始めましょうか」
「では、僕たちは武防具の研磨をお願いしに行ってきます。じゃあカルナ、頑張って」
「はい!」
時々、陰鬱な表情を見せていたカルナに明るい表情が宿った。
「じゃあ、僕たちは一旦これで」
「鍛冶屋は城下の北西と南に一軒ずつありますよ」
「ありがとうございます」
エリオットたちは、入ってきた扉から出ていった。
「では、まず魔導書を持ってきます。知っていると思いますが魔法はイメージですので、魔導書から読んでいくのが良いでしょう」
その時、エリオットたちが出ていった扉が三回ノックされた。
「はい」
そこに現れたのはエリオットたちだった。
「すいません、どうやって外まで出たらいいんですか? 案内して欲しいのですが……」
「それでお義姉さん、まだ答えを聞いてないのだけど……」
「そうですね。何から話しましょうか」
クラーレはテーブルに目を落として考えていた。そして訥々と話し始める。
「私は六歳まで宮殿の外で暮らしていました」
クラーレの告白にカルナは目を見開いた。
「お義姉さん、それって……」
「そう、私の母は魔法が使えたのですが、外に住む父と恋に落ちて私が生まれたのです。始め宮中の皆は歓迎してくれましたが、父が外の住人だと分かると、私は忌子として宮外に追いやられ、父の下で暮らすことになりました。だが六歳の頃魔法の素質があると判断された私は、父から切り離され母の下で生活するようになりました。宮中の人間って自分勝手ですよね。そこで私は魔法の特訓を言い渡されました。もとからいた子はある程度初級魔法が使えたのですが、私は出遅れていたのと、忌子であるため阻害されてきました。私は母の地位を下げないため必死で魔法の練習をしました。それこそ睡眠時間を削って」
カルナは今までクラーレは裕福に育ってきたという想像で、自分を恥じた。最初から素質があったわけでなく、他の目標の為、過酷な練習を繰り返してきたことにも衝撃を受けた。
「その内、同学年の生徒たちを追い越し、エリートの道を歩き始めたのです。ただ忌子のレッテルは同学年の子たちのいじめの理由となり、私は父と母のために、それを無視して最高の魔導士になろうと頑張ってきました。確かそれぐらいの時にあなたが産まれたのですよね」
カルナは頷いた。
「そしてある日、勇者育成のための指令が私に与えられたのです。勇者の存在は私たちの国に伝わっていたので、これは名誉のある使命でした。ただ勇者の存在を疑っている人々もいましたので、半ば左遷という見られ方をしたのです。そして私は、より深く外の世界について知ることが出来ました。日頃から明日の為に生活している人々がいて、私の小さなころの記憶を呼び起こしたのです。そしてエリオットの存在も私を驚嘆させるものでした。底知れぬ存在能力、成長速度に私は見とれていったのです」
「それは、お母さんの病気を放って置いてですか!?」
クラーレは頭を振った。
「母からの手紙でラティス叔母さんの病気を知ったのは、その頃です。私は悩みました。何とかエリオットの魔法の基礎が整うまでギリギリ残ったのです。そして私は帰国し、旧態依然のこの国の実態を見て教皇になることを決意しました。外との貧富の差を埋めるためです。だから帰国して、さらに魔法に磨きをかけ、数ある候補生から教皇の地位を得ることが出来たのです」
「そんな……、忌子だったのに、そんなに苦労していたなんて」
「忌子だった私が教皇の座に就いたことは、他の魔導士にとっては歯がゆい事だったでしょう。ですが、アルベイニ前教皇が私を後押ししてくれたのです。私はわざと教皇にはならない素振りを見せ、教皇になる代わりにカナティーニに住む叔母さんの世話をお願いしたいと条件を持ちかけました。あなたがビルダーナに旅立った頃です」
カルナは、生来優秀だと思っていたクラーレの努力を知り、言葉が出なくなった。
「そう、そんな苦労を陰でお義姉さんはしてきたのですね……」
クラーレは自分の娘を見るかの表情で、優しく頷いた。カルナは席を立ちあがり、クラーレを抱きしめた。
「ごめんなさい、ごめんなさい! 私、お義姉さんがそんな苦労と懊悩を抱えて生きていたなんて、露ほども知らなかった! ごめんなさい!」
抱き付くカルナの頭を、クラーレは優しく撫でた。
「私にとって家族は、かけがえのないものです。貴方や叔母さん、父を蔑ろにする訳ないじゃないですか」
クラーレを抱きしめていたカルナは、しばらく義姉の胸で泣き続けた。
カルナも落ち着き、席に戻った。クラーレはカルナが用意していたお菓子を食べ頬が落ちそうになる。
「ところでカルナ、魔法の能力はどの程度まで上がったのですか?」
「クラーレ先生、口の横にお菓子が付いています」
「あら、ごめんなさい。ミネルラートぐらいは使えるようになったのかしら」
「ミネルラートって対アンデットの上級魔法じゃないですか! まだエルラートまでしか使えませんよ。連発は出来るのですが」
「じゃあ、この国にいる間に、ミネルラートを覚えていきましょう」
「えっミネルラートはまだ無理です!」
「いいえ、貴方には、もうその素養があります。私がみっちり教えて上げます。エルラートの連発が出来るくらいなら一週間で体得出来るでしょう。皆さんの役にも立ちますし」
「一週間!? 一ヶ月はかかるんじゃないですか? それに私なんかが出来るでしょうか……」
「貴方はもっと自信を持ちなさい。私と同じ血が流れているんですから」
カルナはエリオットたちの顔色を伺う。
「一週間ぐらい大丈夫だよ。丁度武器の研磨も必要だしね」
クラーレも微笑む。
「皆さん、宿泊は王宮を利用してください。一週間もあれば戦力となるよう鍛え上げますので」
「お義姉さん、時間は大丈夫なのですか?」
「ええ、丁度建国祭も終わったので時間はあります。では今日から始めましょうか」
「では、僕たちは武防具の研磨をお願いしに行ってきます。じゃあカルナ、頑張って」
「はい!」
時々、陰鬱な表情を見せていたカルナに明るい表情が宿った。
「じゃあ、僕たちは一旦これで」
「鍛冶屋は城下の北西と南に一軒ずつありますよ」
「ありがとうございます」
エリオットたちは、入ってきた扉から出ていった。
「では、まず魔導書を持ってきます。知っていると思いますが魔法はイメージですので、魔導書から読んでいくのが良いでしょう」
その時、エリオットたちが出ていった扉が三回ノックされた。
「はい」
そこに現れたのはエリオットたちだった。
「すいません、どうやって外まで出たらいいんですか? 案内して欲しいのですが……」
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