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「魔物かっ!」
エリオットたちは左手を振り向いた。そこには誰もいなく、エリオットは木の上を見た。そこには険しい表情をしたウィスが弓を持った状態でいた。
「ウィス!?」
「知り合いか?」
ベルハルドの問いにエリオットは頷く。
「エリオット、私を置いていくなんて酷いじゃない!」
そう言いながら、ウィスは木の上から飛び降りた。
「お義父さん、お義母さんから聞いたわよ。世界を回るって!」
ここ数年でウィスの性格は、かなり能動的になっていた。それは抑制されていた元々の性格だった。金色のツインテールに青い瞳はそのままで腰には短剣を佩き、動きやすい服装をしている。
「私も一緒に行くからね」
「いやダメだ。過酷な旅になるから、連れていけない」
ウィスは、エリオットの頬に付いている返り血を拭った。
「魔物と戦ったのね。返り血を浴びているじゃない。私は索敵能力に長けているから連れて行けば便利よ。魔物の事も教えてもらったしね。それにあの女より役に立つと思うわ」
そう言って、カルナを指さした。
確かにカルナはアンデッドには強いが、生き物相手には戦力にはならない。索敵能力があれば直前に編隊を組むことが出来る。それに後衛がいれば心強い。
そう考えたエリオットは嘆息して言った。
「仕方ない。ただ戦力にならなかったら、すぐに帰ってもらうからね」
「戦力にならないわけがないじゃない。じゃあ決まりね」
パーティーにウィスが加わった。
「おいエリオット、こんな女の子を連れて大丈夫か?」
「ベルハルドさん、ウィスも父さんにレンジャーの特訓を受けていたから、大丈夫だとは思います」
「ラルフさんに!?」
「最近は森の中で、父さん相手にほぼ互角で戦っていたと聞いたから、実際相当なものだと思いますよ」
「こんにちは、ウィスといいます。ベルハルドさんとカルナさんね。話は聞いているわ。カルナさん、さっきはごめんね、『あの女』なんて言って。私を置いていったエリオットを見たら、つい頭に血が上っちゃって」
ウィスはすでに荷物を持って、パーティーのメンバーと握手をしていた。彼女の掌は肉刺が幾度も破れ硬くなっている。相当、短剣を振ったのだろうとカルナは推測する。
「ああ、よろしく。ベルハルドだ」
「……よろしくお願いします。カルナです」
「それにしてもよくここを通るって分かったな」
「ザルト海峡は渡るバカはいないって思っていたから、東に向かおうと思ったの。そしたらたまたまエリオットの気配を感じたから、木の上で待ち構えていたのよ」
「そのバカは目の前にいるぞ」
ベルハルドはエリオットを指さす。
「おかげで私も走馬灯が見えました」
カルナもコクコクと頷く。
ウィスは唖然とした。
「ザルト海峡を渡ろうとするバカがいたなんて……」
エリオットは赤面していた。
「いや、それは、なんと言うか、つい……」
「つい……、って」
ウィスは半眼でエリオットを見る。
「いや、でももうそんなパーティーを危険にさらすことはしないぞ」
「当たり前でしょ。エリオットが暴走しないよう私も見張るからね。で、東に行くんでしょ」
「ああ、でもここ数年見当たらなかった魔物が現れている。もう三回も戦った。魔王のせいだと思うんだけど」
「魔王ねぇ、本当かしら」
「とりあえず歩きながら行こう。予定ではビルダーナの城下街で一泊だ」
四人は会話しながら東へと歩き出した。
「そんな、仲間が増えるなんて!」
トラステリアは、考えていたシナリオとは違った動きを見せたパーティーに、頭をフル回転させた。
「と、とりあえず一旦リベリア養殖場に行って魔物を補給しましょう!」
スワリ村を通り過ぎても、しばらく魔物は現れなかった。森に囲まれた街道を歩きながら、ウィスは言う。
「魔物現れないわね。本当に魔物と戦ったの?」
「本当に現れたんだって! ねえ、カルナ」
「ええ、魔物と戦ったのは本当ですよ」
「ふぅん、辺りに魔物の影は見当たらないけどね」
ウィスは暗く静かな環境で育ったせいか、視力と聴覚が異常に発達していた。目を細め、最大限に聴覚の感度を上げても、街道に生物の気配は感じられなかった。結局、ウィスがパーティーに加わっても、城下に着くまで魔物と出会うことがなかった。
エリオットたちは左手を振り向いた。そこには誰もいなく、エリオットは木の上を見た。そこには険しい表情をしたウィスが弓を持った状態でいた。
「ウィス!?」
「知り合いか?」
ベルハルドの問いにエリオットは頷く。
「エリオット、私を置いていくなんて酷いじゃない!」
そう言いながら、ウィスは木の上から飛び降りた。
「お義父さん、お義母さんから聞いたわよ。世界を回るって!」
ここ数年でウィスの性格は、かなり能動的になっていた。それは抑制されていた元々の性格だった。金色のツインテールに青い瞳はそのままで腰には短剣を佩き、動きやすい服装をしている。
「私も一緒に行くからね」
「いやダメだ。過酷な旅になるから、連れていけない」
ウィスは、エリオットの頬に付いている返り血を拭った。
「魔物と戦ったのね。返り血を浴びているじゃない。私は索敵能力に長けているから連れて行けば便利よ。魔物の事も教えてもらったしね。それにあの女より役に立つと思うわ」
そう言って、カルナを指さした。
確かにカルナはアンデッドには強いが、生き物相手には戦力にはならない。索敵能力があれば直前に編隊を組むことが出来る。それに後衛がいれば心強い。
そう考えたエリオットは嘆息して言った。
「仕方ない。ただ戦力にならなかったら、すぐに帰ってもらうからね」
「戦力にならないわけがないじゃない。じゃあ決まりね」
パーティーにウィスが加わった。
「おいエリオット、こんな女の子を連れて大丈夫か?」
「ベルハルドさん、ウィスも父さんにレンジャーの特訓を受けていたから、大丈夫だとは思います」
「ラルフさんに!?」
「最近は森の中で、父さん相手にほぼ互角で戦っていたと聞いたから、実際相当なものだと思いますよ」
「こんにちは、ウィスといいます。ベルハルドさんとカルナさんね。話は聞いているわ。カルナさん、さっきはごめんね、『あの女』なんて言って。私を置いていったエリオットを見たら、つい頭に血が上っちゃって」
ウィスはすでに荷物を持って、パーティーのメンバーと握手をしていた。彼女の掌は肉刺が幾度も破れ硬くなっている。相当、短剣を振ったのだろうとカルナは推測する。
「ああ、よろしく。ベルハルドだ」
「……よろしくお願いします。カルナです」
「それにしてもよくここを通るって分かったな」
「ザルト海峡は渡るバカはいないって思っていたから、東に向かおうと思ったの。そしたらたまたまエリオットの気配を感じたから、木の上で待ち構えていたのよ」
「そのバカは目の前にいるぞ」
ベルハルドはエリオットを指さす。
「おかげで私も走馬灯が見えました」
カルナもコクコクと頷く。
ウィスは唖然とした。
「ザルト海峡を渡ろうとするバカがいたなんて……」
エリオットは赤面していた。
「いや、それは、なんと言うか、つい……」
「つい……、って」
ウィスは半眼でエリオットを見る。
「いや、でももうそんなパーティーを危険にさらすことはしないぞ」
「当たり前でしょ。エリオットが暴走しないよう私も見張るからね。で、東に行くんでしょ」
「ああ、でもここ数年見当たらなかった魔物が現れている。もう三回も戦った。魔王のせいだと思うんだけど」
「魔王ねぇ、本当かしら」
「とりあえず歩きながら行こう。予定ではビルダーナの城下街で一泊だ」
四人は会話しながら東へと歩き出した。
「そんな、仲間が増えるなんて!」
トラステリアは、考えていたシナリオとは違った動きを見せたパーティーに、頭をフル回転させた。
「と、とりあえず一旦リベリア養殖場に行って魔物を補給しましょう!」
スワリ村を通り過ぎても、しばらく魔物は現れなかった。森に囲まれた街道を歩きながら、ウィスは言う。
「魔物現れないわね。本当に魔物と戦ったの?」
「本当に現れたんだって! ねえ、カルナ」
「ええ、魔物と戦ったのは本当ですよ」
「ふぅん、辺りに魔物の影は見当たらないけどね」
ウィスは暗く静かな環境で育ったせいか、視力と聴覚が異常に発達していた。目を細め、最大限に聴覚の感度を上げても、街道に生物の気配は感じられなかった。結局、ウィスがパーティーに加わっても、城下に着くまで魔物と出会うことがなかった。
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