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第二回勇者対策会議
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勇者が誕生して一年が経った。
第二回勇者対策会議が、今回はグレイズ王国の都市グラジエストで行われた。ラニエステルが今回の会議の議長になる。情報漏洩回避のため、前回ビルダーナ王国で務めていた書記官が再び筆を持つことになった。
宮殿はビルダーナのそれとはまた違った意匠だったが、国交が盛んなためか広く美しい。クレイトスは、その差を体感しながら溜息をつく。
「えー、今回はこの一年間で新たな発見、現在の進捗状況、まだ残っている課題について合議したいと思います」ラニエステルは一回小さく咳をし、続ける。「まずは、一年前に私が言いました前勇者の隠居先ですが、残念ながらすでに廃屋になっており、武防具は発見されませんでした。何処に隠したのか、それとも盗賊が盗んでいった可能性があります。過去の文献に、勇者の子孫が残っていると記述がありましたので聞き取りに行ったのですが、武防具はもちろん自分たちが勇者の子孫だという事すら知らなかったようです。伝説の武防具の行方は探索中です」
他の六人の首脳は唸った。ラニエステルの表情から、伝説の武防具は発見されない可能性が高いと思った。
ラニエステルが話を振る。
「クロード・オルガノフ帝、巨人は発見されたのですか?」
「捜索隊を結成したのだが、まだ巨人の影はおろか足跡すら見つかっていない。この話はあくまでも噂なので期待しないで欲しいと申したはずだが」
「そうですか……。では各国の魔物育成の状況はいかがでしょうか? 私の国では飼育所が完成して、少しずつ魔物の個体数を増やす体勢が整いつつあります」
「私の国もです」ブランノール法治国のアルベイニは端的に言った。
他の首脳陣も頷いたが、ジラール連合国のフェンバックだけが小さく手を挙げた。
「私の国は連合国ですので、費用面などで調整がつかず、やや遅れています。勇者の話について懐疑的な国もありますので。ですが年内には完成出来るよう各国で調整しています」
「よろしくお願いします」とラニエステルは続ける。「あと、作家の派遣は、いつ頃にしましょうか?」
黒ぶち眼鏡をクイッと中指で上げ、イツツクニ民主国、タニヤ・フジが手を上げる。
「まだ十四年もあります。その頃には準備も整い、今とは世界の状況も変わっているでしょう。全世界を回るなら一年もかかりません。シナリオを作るのは、結構ギリギリでも良いのではないでしょうか」
「私も賛成です」とエルサント共和国のロノワも手を上げる。その他の首脳も頷いていた。
「では勇者が目覚める二年ほど前に、作家を集めてシナリオを作らせましょう。あと、これは私からの提案なのですが、開拓し終わった洞窟などを有効活用出来ないでしょうか」
広い会議場に沈黙が走る。しばらく黙考していた首脳陣だったが、賛成の声が上がり始めた。
「確かに有用ですね。自然と容易に中程度の魔物討伐の依頼も出来ますし」
「アイテムや武防具などを、その魔物の背後に隠しているのも自然に出来ますな」
若いフェンバックは手を上げて続ける。
「では宝箱の製作を……」
「いや、だからそれは不自然だと」ラニエステルは言下に否定した。「あとこの対勇者会合ですが、三年に一度にしたいとの声が、いくつか上がっていますが、いかがいたしましょう。賛成の方は挙手をお願いします」
七人中、六人が挙手した。残ったフェンバックも遅れて手を挙げた。
「では、次の会合は三年後ということで開催しましょう。ただ進捗状況などは、一年に一度クレイトス国王に書簡を送る事にしたいと思います」
そのクレイトスは手を挙げて言う。
「あと十四年ありますが、イツツクニ民主国やエルサント共和国、ジラール連合国は代表が変わる可能性がありますので、現政権中に秘密裏に対勇者組織を作り上げて欲しいと思います。出来るだけ、このメンバーで話を進めてまいりましょう」
三首脳は頷いた。
「他に意見のある方はいらっしゃいますか? いないようでしたら、第二回対勇者会議を終了したいと思います」
第二回勇者対策会議が、今回はグレイズ王国の都市グラジエストで行われた。ラニエステルが今回の会議の議長になる。情報漏洩回避のため、前回ビルダーナ王国で務めていた書記官が再び筆を持つことになった。
宮殿はビルダーナのそれとはまた違った意匠だったが、国交が盛んなためか広く美しい。クレイトスは、その差を体感しながら溜息をつく。
「えー、今回はこの一年間で新たな発見、現在の進捗状況、まだ残っている課題について合議したいと思います」ラニエステルは一回小さく咳をし、続ける。「まずは、一年前に私が言いました前勇者の隠居先ですが、残念ながらすでに廃屋になっており、武防具は発見されませんでした。何処に隠したのか、それとも盗賊が盗んでいった可能性があります。過去の文献に、勇者の子孫が残っていると記述がありましたので聞き取りに行ったのですが、武防具はもちろん自分たちが勇者の子孫だという事すら知らなかったようです。伝説の武防具の行方は探索中です」
他の六人の首脳は唸った。ラニエステルの表情から、伝説の武防具は発見されない可能性が高いと思った。
ラニエステルが話を振る。
「クロード・オルガノフ帝、巨人は発見されたのですか?」
「捜索隊を結成したのだが、まだ巨人の影はおろか足跡すら見つかっていない。この話はあくまでも噂なので期待しないで欲しいと申したはずだが」
「そうですか……。では各国の魔物育成の状況はいかがでしょうか? 私の国では飼育所が完成して、少しずつ魔物の個体数を増やす体勢が整いつつあります」
「私の国もです」ブランノール法治国のアルベイニは端的に言った。
他の首脳陣も頷いたが、ジラール連合国のフェンバックだけが小さく手を挙げた。
「私の国は連合国ですので、費用面などで調整がつかず、やや遅れています。勇者の話について懐疑的な国もありますので。ですが年内には完成出来るよう各国で調整しています」
「よろしくお願いします」とラニエステルは続ける。「あと、作家の派遣は、いつ頃にしましょうか?」
黒ぶち眼鏡をクイッと中指で上げ、イツツクニ民主国、タニヤ・フジが手を上げる。
「まだ十四年もあります。その頃には準備も整い、今とは世界の状況も変わっているでしょう。全世界を回るなら一年もかかりません。シナリオを作るのは、結構ギリギリでも良いのではないでしょうか」
「私も賛成です」とエルサント共和国のロノワも手を上げる。その他の首脳も頷いていた。
「では勇者が目覚める二年ほど前に、作家を集めてシナリオを作らせましょう。あと、これは私からの提案なのですが、開拓し終わった洞窟などを有効活用出来ないでしょうか」
広い会議場に沈黙が走る。しばらく黙考していた首脳陣だったが、賛成の声が上がり始めた。
「確かに有用ですね。自然と容易に中程度の魔物討伐の依頼も出来ますし」
「アイテムや武防具などを、その魔物の背後に隠しているのも自然に出来ますな」
若いフェンバックは手を上げて続ける。
「では宝箱の製作を……」
「いや、だからそれは不自然だと」ラニエステルは言下に否定した。「あとこの対勇者会合ですが、三年に一度にしたいとの声が、いくつか上がっていますが、いかがいたしましょう。賛成の方は挙手をお願いします」
七人中、六人が挙手した。残ったフェンバックも遅れて手を挙げた。
「では、次の会合は三年後ということで開催しましょう。ただ進捗状況などは、一年に一度クレイトス国王に書簡を送る事にしたいと思います」
そのクレイトスは手を挙げて言う。
「あと十四年ありますが、イツツクニ民主国やエルサント共和国、ジラール連合国は代表が変わる可能性がありますので、現政権中に秘密裏に対勇者組織を作り上げて欲しいと思います。出来るだけ、このメンバーで話を進めてまいりましょう」
三首脳は頷いた。
「他に意見のある方はいらっしゃいますか? いないようでしたら、第二回対勇者会議を終了したいと思います」
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