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飼育準備
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翌朝、早速カーチネルは城下町の工場へと足を運んだ。ここでは、よく騎士剣の製造や研磨で世話になっている。その中で騎士剣の製造を頼んでいる、ある工場に入っていった。
「これはカーチネル騎士長殿、今日は何の御用で?」
入り口でカーチネルを見つけた年配の工場長は、油で汚れた手をエプロンで拭きながら近づいてきた。
「ちょっと相談事があるんですが、今、事務所で話しできますか?」
工場長は他の作業員の動きを確認し「大丈夫です。こちらへどうぞ」と、カーチネルを一階の事務所に招き入れた。「どうぞ応接間でお待ち下さい」
カーチネルが事務所に入るなり、事務作業をしていた工場長の妻は深々と一礼し、お茶の準備を始めた。
油汚れ専用の洗剤で手を洗った工場長が事務所兼応接間に入ってくる。
カーチネルは淹れてもらったお茶を啜りながら、考え事をしていた。
「相談とは何でしょう。私の工場で出来ることがあれば、喜んで対応いたしますが」
「そうですね、単刀直入に言います。魔物を捕獲したいのですが、どのような罠が作れますか?」
「魔物を捕獲、ですか?」
「ええ、しかも多様の魔物をです。たとえばワイトやグール、ラミア、ブラックドッグなどです」
「うーん……」
しばし目を瞑って黙考した後、工場長は目を薄く開けた。
「少々値が張りますが、鋼鉄製の檻を用いた仕掛けや、同じく鋼鉄製の投網など使えば捕獲出来ると思いますが」
「費用は大丈夫です。それぞれ三つずつ作ってもらうとして、製作期間は何日程かかりますか?」
「他の仕事もありますが、騎士団長殿の頼みですから、二週間を見てもらえれば可能かと」
「分かりました。急で申し訳ないですが製作開始と同時に、請求書を私宛にお願いします。それと近くラベリア平原に飼育場を作る予定です。規模はまだ分かりませんが、その内部に檻を作る予定ですので、それの設計と製造もお願いしたいと思ってます」
「了解しました。規模によっては、他の工場に協力をお願いしてでも全力で対応致します」
「ありがとうございます。お忙しそうなので長話は後日に。では、お願いします」
カーチネルは、まだ熱いお茶を一気に飲み干し、目礼して工場を後にした。
代償として口の中を火傷したカーチネルは、顔を顰めながら馬を走らせ、飼育場を予定しているラベリア平原へと向かった。カーチネルが着いたころには、すでに測量技師による準備が始まり、建物の基礎が運び込まれていた。それを見たカーチネルに、クレイトスの本気度が伝わってきた。
「厄災か……」
轡を返したカーチネルは改めて気合を入れ直し、城へと戻った。
絶滅しかけている魔物を捕獲することは困難を極めた。
カーチネルは少数精鋭の騎士を引き連れて魔物捕獲を試みたが、なかなか魔物を捕獲することが出来ず、捕獲方法が確立するころには三ヶ月ほど経ち、ちょうどラベリア飼育場が完成した頃だった。
「ラミアは希少種だから保護したいのも分かるが、自然発生するレイスまで捕獲するのは、どうしてなんだろうなぁ」
飼育場を警備している騎士の一人が呟いた。
「さあ、国王には国王の考えがあるのだろう。騎士長殿も捕獲に熱心だし俺らには分からんさ」
捕獲された魔物は、まだ少ないものの着実に増えていった。
「これはカーチネル騎士長殿、今日は何の御用で?」
入り口でカーチネルを見つけた年配の工場長は、油で汚れた手をエプロンで拭きながら近づいてきた。
「ちょっと相談事があるんですが、今、事務所で話しできますか?」
工場長は他の作業員の動きを確認し「大丈夫です。こちらへどうぞ」と、カーチネルを一階の事務所に招き入れた。「どうぞ応接間でお待ち下さい」
カーチネルが事務所に入るなり、事務作業をしていた工場長の妻は深々と一礼し、お茶の準備を始めた。
油汚れ専用の洗剤で手を洗った工場長が事務所兼応接間に入ってくる。
カーチネルは淹れてもらったお茶を啜りながら、考え事をしていた。
「相談とは何でしょう。私の工場で出来ることがあれば、喜んで対応いたしますが」
「そうですね、単刀直入に言います。魔物を捕獲したいのですが、どのような罠が作れますか?」
「魔物を捕獲、ですか?」
「ええ、しかも多様の魔物をです。たとえばワイトやグール、ラミア、ブラックドッグなどです」
「うーん……」
しばし目を瞑って黙考した後、工場長は目を薄く開けた。
「少々値が張りますが、鋼鉄製の檻を用いた仕掛けや、同じく鋼鉄製の投網など使えば捕獲出来ると思いますが」
「費用は大丈夫です。それぞれ三つずつ作ってもらうとして、製作期間は何日程かかりますか?」
「他の仕事もありますが、騎士団長殿の頼みですから、二週間を見てもらえれば可能かと」
「分かりました。急で申し訳ないですが製作開始と同時に、請求書を私宛にお願いします。それと近くラベリア平原に飼育場を作る予定です。規模はまだ分かりませんが、その内部に檻を作る予定ですので、それの設計と製造もお願いしたいと思ってます」
「了解しました。規模によっては、他の工場に協力をお願いしてでも全力で対応致します」
「ありがとうございます。お忙しそうなので長話は後日に。では、お願いします」
カーチネルは、まだ熱いお茶を一気に飲み干し、目礼して工場を後にした。
代償として口の中を火傷したカーチネルは、顔を顰めながら馬を走らせ、飼育場を予定しているラベリア平原へと向かった。カーチネルが着いたころには、すでに測量技師による準備が始まり、建物の基礎が運び込まれていた。それを見たカーチネルに、クレイトスの本気度が伝わってきた。
「厄災か……」
轡を返したカーチネルは改めて気合を入れ直し、城へと戻った。
絶滅しかけている魔物を捕獲することは困難を極めた。
カーチネルは少数精鋭の騎士を引き連れて魔物捕獲を試みたが、なかなか魔物を捕獲することが出来ず、捕獲方法が確立するころには三ヶ月ほど経ち、ちょうどラベリア飼育場が完成した頃だった。
「ラミアは希少種だから保護したいのも分かるが、自然発生するレイスまで捕獲するのは、どうしてなんだろうなぁ」
飼育場を警備している騎士の一人が呟いた。
「さあ、国王には国王の考えがあるのだろう。騎士長殿も捕獲に熱心だし俺らには分からんさ」
捕獲された魔物は、まだ少ないものの着実に増えていった。
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