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筋トレ愛好家の乱心
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Gさんは筋トレが大好きで、フィジークコンテストに出場するほどの猛者だった。
彼はジム通いは当然だが、自宅にも床を補強した筋トレスペースを設けている。
ただ、彼もお金持ちというワケではない。
使用しているのはダンベルだったが、高価な可変式ダンベルではなかった。
安いがかさばってしまう、コンクリート製のダンベルだった。
大会の少し前、追い込み時期になっていたので、Gさんは胸を追い込んでいた。
ダンベルを両手に持ち、ベンチにあおむけとなって、何度も持ち上げる。
ダンベルベンチプレスである。
かねてより減量に励んでおり、追い込みも佳境で、Gさんは気が立っていた。
攻撃性が増し、気が大きくなり、テンションが最高潮となる。
薬のせいではない。
彼の出場する大会は、時として抜き打ち尿検査がある。
それに、筋肉増強剤を買う余裕はない。
最後まで追い込むと、床にたたきつけるようにダンベルを置いた。
Gさんは顔をしかめた。
安価なコンクリのダンベルは、劣化していたのもありボコりと2つに割れてしまったのだ。
これではバー(持ち手)を通すことができない。
Gさんは焦った。
最近仕事も忙しく、ジムにも行けない。
Gさんの通うジムは24時間ではないのだ。
ヘタすると、胸のフリーウェイトができない……つまり、胸のウェイトトレーニングができないという事態を意味していた。
腕立て伏せでは、負荷が弱くて時間がかかりすぎる。
Gさんは弱った挙句、暴挙に出た。
近所の雑木林に、打ち捨てられた祠があった。
雑木林の所有者も存命しておらず、手入れする者がいない。
祠も倒れた状態で放置されている。
Gさんは、重い祠の石を拾い上げると、自宅に戻った。
当然に新しいダンベルが来れば返すつもりだった。
Gさんは祠を持って、ベンチプレスをし始めた。
「おお!なかなかいい。不安定な分、他の筋肉も追い込める」
喜んで回数をこなす。
限界の一歩手前まで来た時だった。
胸の前で持ち上げている祠の後ろに、女の顔があった。
青白い顔で、黒々とした長髪、目は光を失った漆黒の瞳をしている。
「うわー」Gさんは叫び声をあげた。
その瞬間力が抜けてしまい、祠は目の前に落下してきた。
数時間後、Gさんは病院で目が覚めた。
あきれ顔の奥さんと医者が横に立っていた。
鼻から激痛がする。
事情を聴くと、顔面に祠を落としたらしく、気を失って倒れていた。
叫び声を聞いた奥さんが駆け付け、救急車を呼んだ……とのことだった。
「信じられない!祠の石で筋トレするなんて……筋トレバカもいい加減にしてよね!」奥さんが呆れている。
「奇跡のようです」医師が言った。「あんな重たい石を落としたのに、鼻の骨が折れただけで済んでますからね。祠の神様が助けてくれたんじゃないですか」
Gさんは猛省した。
おそらく、祠の幽霊か神様かは知らないが……今回は大目に見てくれたんだろうと思った。
鼻が曲がってしまい、痛くてトレーニングができなかったので、今回の大会は棄権したらしい。
Gさんは祠を戻してきれいにして、お供え物をした。
以来Gさんは不気味な女の顔を見ることはなかったそうだ。
彼はジム通いは当然だが、自宅にも床を補強した筋トレスペースを設けている。
ただ、彼もお金持ちというワケではない。
使用しているのはダンベルだったが、高価な可変式ダンベルではなかった。
安いがかさばってしまう、コンクリート製のダンベルだった。
大会の少し前、追い込み時期になっていたので、Gさんは胸を追い込んでいた。
ダンベルを両手に持ち、ベンチにあおむけとなって、何度も持ち上げる。
ダンベルベンチプレスである。
かねてより減量に励んでおり、追い込みも佳境で、Gさんは気が立っていた。
攻撃性が増し、気が大きくなり、テンションが最高潮となる。
薬のせいではない。
彼の出場する大会は、時として抜き打ち尿検査がある。
それに、筋肉増強剤を買う余裕はない。
最後まで追い込むと、床にたたきつけるようにダンベルを置いた。
Gさんは顔をしかめた。
安価なコンクリのダンベルは、劣化していたのもありボコりと2つに割れてしまったのだ。
これではバー(持ち手)を通すことができない。
Gさんは焦った。
最近仕事も忙しく、ジムにも行けない。
Gさんの通うジムは24時間ではないのだ。
ヘタすると、胸のフリーウェイトができない……つまり、胸のウェイトトレーニングができないという事態を意味していた。
腕立て伏せでは、負荷が弱くて時間がかかりすぎる。
Gさんは弱った挙句、暴挙に出た。
近所の雑木林に、打ち捨てられた祠があった。
雑木林の所有者も存命しておらず、手入れする者がいない。
祠も倒れた状態で放置されている。
Gさんは、重い祠の石を拾い上げると、自宅に戻った。
当然に新しいダンベルが来れば返すつもりだった。
Gさんは祠を持って、ベンチプレスをし始めた。
「おお!なかなかいい。不安定な分、他の筋肉も追い込める」
喜んで回数をこなす。
限界の一歩手前まで来た時だった。
胸の前で持ち上げている祠の後ろに、女の顔があった。
青白い顔で、黒々とした長髪、目は光を失った漆黒の瞳をしている。
「うわー」Gさんは叫び声をあげた。
その瞬間力が抜けてしまい、祠は目の前に落下してきた。
数時間後、Gさんは病院で目が覚めた。
あきれ顔の奥さんと医者が横に立っていた。
鼻から激痛がする。
事情を聴くと、顔面に祠を落としたらしく、気を失って倒れていた。
叫び声を聞いた奥さんが駆け付け、救急車を呼んだ……とのことだった。
「信じられない!祠の石で筋トレするなんて……筋トレバカもいい加減にしてよね!」奥さんが呆れている。
「奇跡のようです」医師が言った。「あんな重たい石を落としたのに、鼻の骨が折れただけで済んでますからね。祠の神様が助けてくれたんじゃないですか」
Gさんは猛省した。
おそらく、祠の幽霊か神様かは知らないが……今回は大目に見てくれたんだろうと思った。
鼻が曲がってしまい、痛くてトレーニングができなかったので、今回の大会は棄権したらしい。
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