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サバゲーマーの悲劇
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サバゲ―愛好家Eさんの話。
Eさんと仲間たちは、ある日近所の竹林に集まった。
土地の所有者に許可をもらうか、ゲームフィールドを借りて遊ぶのが適切だが、Eさん達は「人気のない竹林だし、ちょっとくらい良いだろう」と無許可で遊ぶことにした。
鬱蒼とした竹林で、サバゲ―をしたら楽しいだろうと仲間内で話していたのだ。
さっそく、仲間を2チームに分けてゲームを開始した。
Eさんと相棒がライフルを持って竹林を見回る。
Eさんと相棒は竹林に深く入り、あるものを見つけた。
小さな祠と、その先にある小屋だった。
祠は苔むした欠けた石で作られたものだった。
その少し先には、納屋のような小屋があった。壁は汚れて苔で緑色に変わっていた。屋根板も錆びて傷んでいる。
一見して廃墟だ。
小屋には窓がついており、人気はなさそうだが少しだけ開いていた。
小屋の中は真っ暗で何も見えない。
「タケさんだ」Eさんが銃を構えたまま呟く。
「タケさんだね」相棒が言った。
タケさんというのは、彼らの仲間ウチでも最強のサバゲーマーだった。
彼はいわゆる「本職」の人だった。
仕事は優秀だが、若干の無頼漢で、本物の「付属品」をエアガンに着けてくることすらあった。
さらに、建物や屋内と言った「市街戦」では、無類の強さを誇った。
わざとらしく、半開きになった小屋の窓がタケさんの罠だとEさん達は思った。
「建物の影に隠れているかも……」Eさんが言った。「わざとらしく窓を開けてるのは……罠だな」
「よし、おれは窓を見ていよう」相棒が言った。
「俺は建物の裏へ回る」Eさんはそう言いながら、ゆっくりと遠巻きに小屋の裏へと回る。
「中だ!窓のそば!」突然、相棒が叫ぶと、発砲した。
乾いたガスガンの発砲音がする。
Eさんがすぐに窓の方を見る。
窓のそばに黒い人影がいた。
「ああーっ!」相棒が悲鳴を上げ倒れた。
苦痛のうめき声をあげ、枯草の上をのたうち回っている。
「ヒットかい?」Eさんは身をかがめて聞いた。「ゴーグルに穴でも開いてたのか?目に当たったとか」
「あううー!ちがう!腕が!」相棒は、右腕を抑えている。
「どうした?」頭上から声がして、見上げると消防のすべり棒のごとく、孟宗竹を滑り降りてくる男がいた。
タケさんだった。
タケさんが倒れた相棒の腕を診た。
何と、手首は手の平が腕に接するほど折れまがり、引き金を引いた指がへし折れて歪に曲がっていた。
結局、ゲームはお開きになり、相棒は救急車で運ばれた。
「こけた時に、変な手の付き方したのかな」Eさんが呟いた。
「そうは見えなかった、樹上から君らを見てたけどな」タケさんが答える。「なんで突然倒れたのかな」
後に、腕を三角巾で釣った相棒に真相を聞いた。
彼は、窓の奥に黒い影を見たらしい。
タケさんだと思って、即座に狙いをつけ、発砲した。
間違いなく弾がヒットしたと思ったが、その瞬間に黒い人影から恐ろしい目つきで睨まれた。
その眼は人の目というには大きすぎて、顔や体の大きさに不釣り合いだった。
相棒がゾッとした瞬間、引き金を引いた指がへし折れ、さらに手首が一人でにぼきりと折れたそうだ。
あまりの激痛にひっくり返ったという。
「あそこは……たぶんヤバいのがいるんだよ。近づいちゃいけなかったんだ」
相棒は青い顔でそう言った。
Eさん達は怖くなった。
勝手に禁忌の山に入ったのかもと思ったらしい。
それ以来、山林にて無断サバゲ―はしなくなったそうだ。
Eさんと仲間たちは、ある日近所の竹林に集まった。
土地の所有者に許可をもらうか、ゲームフィールドを借りて遊ぶのが適切だが、Eさん達は「人気のない竹林だし、ちょっとくらい良いだろう」と無許可で遊ぶことにした。
鬱蒼とした竹林で、サバゲ―をしたら楽しいだろうと仲間内で話していたのだ。
さっそく、仲間を2チームに分けてゲームを開始した。
Eさんと相棒がライフルを持って竹林を見回る。
Eさんと相棒は竹林に深く入り、あるものを見つけた。
小さな祠と、その先にある小屋だった。
祠は苔むした欠けた石で作られたものだった。
その少し先には、納屋のような小屋があった。壁は汚れて苔で緑色に変わっていた。屋根板も錆びて傷んでいる。
一見して廃墟だ。
小屋には窓がついており、人気はなさそうだが少しだけ開いていた。
小屋の中は真っ暗で何も見えない。
「タケさんだ」Eさんが銃を構えたまま呟く。
「タケさんだね」相棒が言った。
タケさんというのは、彼らの仲間ウチでも最強のサバゲーマーだった。
彼はいわゆる「本職」の人だった。
仕事は優秀だが、若干の無頼漢で、本物の「付属品」をエアガンに着けてくることすらあった。
さらに、建物や屋内と言った「市街戦」では、無類の強さを誇った。
わざとらしく、半開きになった小屋の窓がタケさんの罠だとEさん達は思った。
「建物の影に隠れているかも……」Eさんが言った。「わざとらしく窓を開けてるのは……罠だな」
「よし、おれは窓を見ていよう」相棒が言った。
「俺は建物の裏へ回る」Eさんはそう言いながら、ゆっくりと遠巻きに小屋の裏へと回る。
「中だ!窓のそば!」突然、相棒が叫ぶと、発砲した。
乾いたガスガンの発砲音がする。
Eさんがすぐに窓の方を見る。
窓のそばに黒い人影がいた。
「ああーっ!」相棒が悲鳴を上げ倒れた。
苦痛のうめき声をあげ、枯草の上をのたうち回っている。
「ヒットかい?」Eさんは身をかがめて聞いた。「ゴーグルに穴でも開いてたのか?目に当たったとか」
「あううー!ちがう!腕が!」相棒は、右腕を抑えている。
「どうした?」頭上から声がして、見上げると消防のすべり棒のごとく、孟宗竹を滑り降りてくる男がいた。
タケさんだった。
タケさんが倒れた相棒の腕を診た。
何と、手首は手の平が腕に接するほど折れまがり、引き金を引いた指がへし折れて歪に曲がっていた。
結局、ゲームはお開きになり、相棒は救急車で運ばれた。
「こけた時に、変な手の付き方したのかな」Eさんが呟いた。
「そうは見えなかった、樹上から君らを見てたけどな」タケさんが答える。「なんで突然倒れたのかな」
後に、腕を三角巾で釣った相棒に真相を聞いた。
彼は、窓の奥に黒い影を見たらしい。
タケさんだと思って、即座に狙いをつけ、発砲した。
間違いなく弾がヒットしたと思ったが、その瞬間に黒い人影から恐ろしい目つきで睨まれた。
その眼は人の目というには大きすぎて、顔や体の大きさに不釣り合いだった。
相棒がゾッとした瞬間、引き金を引いた指がへし折れ、さらに手首が一人でにぼきりと折れたそうだ。
あまりの激痛にひっくり返ったという。
「あそこは……たぶんヤバいのがいるんだよ。近づいちゃいけなかったんだ」
相棒は青い顔でそう言った。
Eさん達は怖くなった。
勝手に禁忌の山に入ったのかもと思ったらしい。
それ以来、山林にて無断サバゲ―はしなくなったそうだ。
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