81 / 104
「写るんです」
しおりを挟む
高校生A君は、友人のB君とC君三人で「心霊写真」を取りに行くことにした。
町には、いわくつきの電話ボックスがあって、その中に入って写真を撮ると「何かが写る」と学校の間では噂になっていた。
三人は遊び半分で、夜中にその電話ボックスにやってきた。
夜の郊外に、ぼんやりとした光を放つ電話ボックスがぽつんとある。
言い出しっぺでもあるC君が電話ボックスに入り、B君が「霊が写りやすそう」と用意したインスタントカメラで写真を撮った。A君は笑って見物していた。
数日後、現像した写真を見ると三人は驚愕した。
電話ボックスでふざけて笑うC君の横に、うっすらと顔のようなものが写っていたのである。
人面ではなく、貼り付ける前の美容パックのような、目と口が黒い穴の顔だった。
「偶然さ。あほらしい」C君はそう言ったが、声は震えていた。
だが写真を撮った後、特に変わった事は起きなかった。
「なんでもなかったじゃん。心霊じゃないだろ」皆、納得して日常に戻った。
数カ月して、C君に異変が起きはじめた。
C君は口数が減り、だれとも話さなくなった。
いつも青ざめた顔をして、下を向いている。
トイレに行っても、自分の顔を鏡で見ようとしない。
窓のそばに行くのも嫌がる。
一度、そんなC君をからかってB君がスマホで撮影しようとしたが、C君は顔を真っ赤にして怒鳴った。クラス中が静まるほど異様な怒り方だった。
A君は、下校時にC君を呼び出して聞いた。
最近具合が悪そうだが、大丈夫かと。
C君は突如泣きはじめ、話し始めた。
「あの、『心霊写真』を撮ってからだよ。俺の顔の横に写っていた『顔』があったろう?あの顔が、常に俺のそばにいるんだ」
「そばにいるって?」
「俺が写真に写ったり、鏡を見たり、窓ガラスを見るとするだろ……すると、あのパックみたいな顔が俺の顔の横に写るんだ。いつでも」
A君は背筋が寒くなった。
「……ほら、これ見てくれよ!」
C君はA君にスマホを差し出した。
無表情の自撮りが沢山並んでいる。
A君は言葉を失った。
「やばいよな。最近は、こいつ口角を上げて笑ってるんだ。いつか俺を何かするつもりなんだ。だから、ちょっと人を避けてるのさ。ゴメンな」
C君はそう言って立ち去った。
C君の思い詰めたような、鬼気迫る表情からA君は「何も写っていないよ」とは言えなかった。
数週間後、C君は錯乱して入院することになった。
噂によると、今でも彼は社会生活が送れていないらしい。
【おわり】
町には、いわくつきの電話ボックスがあって、その中に入って写真を撮ると「何かが写る」と学校の間では噂になっていた。
三人は遊び半分で、夜中にその電話ボックスにやってきた。
夜の郊外に、ぼんやりとした光を放つ電話ボックスがぽつんとある。
言い出しっぺでもあるC君が電話ボックスに入り、B君が「霊が写りやすそう」と用意したインスタントカメラで写真を撮った。A君は笑って見物していた。
数日後、現像した写真を見ると三人は驚愕した。
電話ボックスでふざけて笑うC君の横に、うっすらと顔のようなものが写っていたのである。
人面ではなく、貼り付ける前の美容パックのような、目と口が黒い穴の顔だった。
「偶然さ。あほらしい」C君はそう言ったが、声は震えていた。
だが写真を撮った後、特に変わった事は起きなかった。
「なんでもなかったじゃん。心霊じゃないだろ」皆、納得して日常に戻った。
数カ月して、C君に異変が起きはじめた。
C君は口数が減り、だれとも話さなくなった。
いつも青ざめた顔をして、下を向いている。
トイレに行っても、自分の顔を鏡で見ようとしない。
窓のそばに行くのも嫌がる。
一度、そんなC君をからかってB君がスマホで撮影しようとしたが、C君は顔を真っ赤にして怒鳴った。クラス中が静まるほど異様な怒り方だった。
A君は、下校時にC君を呼び出して聞いた。
最近具合が悪そうだが、大丈夫かと。
C君は突如泣きはじめ、話し始めた。
「あの、『心霊写真』を撮ってからだよ。俺の顔の横に写っていた『顔』があったろう?あの顔が、常に俺のそばにいるんだ」
「そばにいるって?」
「俺が写真に写ったり、鏡を見たり、窓ガラスを見るとするだろ……すると、あのパックみたいな顔が俺の顔の横に写るんだ。いつでも」
A君は背筋が寒くなった。
「……ほら、これ見てくれよ!」
C君はA君にスマホを差し出した。
無表情の自撮りが沢山並んでいる。
A君は言葉を失った。
「やばいよな。最近は、こいつ口角を上げて笑ってるんだ。いつか俺を何かするつもりなんだ。だから、ちょっと人を避けてるのさ。ゴメンな」
C君はそう言って立ち去った。
C君の思い詰めたような、鬼気迫る表情からA君は「何も写っていないよ」とは言えなかった。
数週間後、C君は錯乱して入院することになった。
噂によると、今でも彼は社会生活が送れていないらしい。
【おわり】
10
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる