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「写るんです」

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高校生A君は、友人のB君とC君三人で「心霊写真」を取りに行くことにした。 
町には、いわくつきの電話ボックスがあって、その中に入って写真を撮ると「何かが写る」と学校の間では噂になっていた。 

三人は遊び半分で、夜中にその電話ボックスにやってきた。 
夜の郊外に、ぼんやりとした光を放つ電話ボックスがぽつんとある。 
言い出しっぺでもあるC君が電話ボックスに入り、B君が「霊が写りやすそう」と用意したインスタントカメラで写真を撮った。A君は笑って見物していた。
  
数日後、現像した写真を見ると三人は驚愕した。 
電話ボックスでふざけて笑うC君の横に、うっすらと顔のようなものが写っていたのである。 
人面ではなく、貼り付ける前の美容パックのような、目と口が黒い穴の顔だった。 
「偶然さ。あほらしい」C君はそう言ったが、声は震えていた。 

 だが写真を撮った後、特に変わった事は起きなかった。 
「なんでもなかったじゃん。心霊じゃないだろ」皆、納得して日常に戻った。 

数カ月して、C君に異変が起きはじめた。 
C君は口数が減り、だれとも話さなくなった。 
いつも青ざめた顔をして、下を向いている。 
トイレに行っても、自分の顔を鏡で見ようとしない。 
窓のそばに行くのも嫌がる。 
一度、そんなC君をからかってB君がスマホで撮影しようとしたが、C君は顔を真っ赤にして怒鳴った。クラス中が静まるほど異様な怒り方だった。 

A君は、下校時にC君を呼び出して聞いた。 
最近具合が悪そうだが、大丈夫かと。 
C君は突如泣きはじめ、話し始めた。 
「あの、『心霊写真』を撮ってからだよ。俺の顔の横に写っていた『顔』があったろう?あの顔が、常に俺のそばにいるんだ」 
「そばにいるって?」 
「俺が写真に写ったり、鏡を見たり、窓ガラスを見るとするだろ……すると、あのパックみたいな顔が俺の顔の横に写るんだ。いつでも」 
A君は背筋が寒くなった。 
「……ほら、これ見てくれよ!」 
C君はA君にスマホを差し出した。 
無表情の自撮りが沢山並んでいる。 
A君は言葉を失った。 
「やばいよな。最近は、こいつ口角を上げて笑ってるんだ。いつか俺を何かするつもりなんだ。だから、ちょっと人を避けてるのさ。ゴメンな」 
C君はそう言って立ち去った。 
C君の思い詰めたような、鬼気迫る表情からA君は「何も写っていないよ」とは言えなかった。 

数週間後、C君は錯乱して入院することになった。 
噂によると、今でも彼は社会生活が送れていないらしい。

【おわり】
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