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子どもには見えるもの

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会社員B男さんが、家族で外食に行った帰りの事だった。

「パパ、ドライブしようよ」
子どもの他愛のない提案に、B男さんは「ようし」とハンドルを切り、見知らぬ方角へ向かった。
いつもの通り慣れた道をはずれ、通ったことのない路地へ入っていく。

周囲は暗く、ぼんやりとした街灯が点いているだけだった。
交差点に差し掛かり、用心しながら進んだ。
「パパ、子どもがいるよ」
子どもが言った。

子どもに言われて、さらに減速し、周囲を見回す。
だが、どこにも子どもなどいない。
「だれもいないわ」
助手席に座っていた妻が言った。

「いるよ、あそこ。気を付けて」
息子が後部席から指を伸ばす。
左前方の路肩の方を指さしている。

B男さんは用心して、ゆっくりと進んでいった。
結局、何もなく車は通過した。
「変なこと言って脅かさないで」妻は子どもに注意していた。
「ほんとにいたんだよ」息子はそれだけ言うと黙ってしまった。

なんだか胸騒ぎがしたB男さんは、翌日の昼間にもう一度その交差点に赴いた。

すると、息子が指を指した路肩で、老人が献花していた。
B男さんは近場に車を止め、老人に話しかけ、事情を話した。

老人は驚いたように言った。
「お子さんがそう言われたのですか。たしかに、昔この路肩で地域の子が撥ねられてね。その子は友達の家に行く途中だったそうだが……。この子は、まだ道路にいるみたいでね。不思議なことに、道行く子どもさんが見かけることがあるんですよ。おそらくですが、道行く子どもに姿を見せて、注意を促しているのかもしれませんね。自分と同じ目に遭わないように。ここは危ない交差点ですからねえ」


【おわり】
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