【怖い話】さしかけ怪談

【学校怪談】閉鎖された教室

E子さんの通うN高校には、使用されていない教室がある。

それは二年〇組の教室だった。

４階の教室なのだが、生徒が口々に「異変」を訴えた。

事態を重く見た学校は、やむを得ず閉鎖したのだった。

E子さんは閉鎖される際にそのクラスだった。

そして、E子さん自身もその異変を目にしたのだった。

E子さんは授業中、窓際の席だった。

つい授業が退屈で、窓の外の景色をぼんやりと眺めていた。


青空が広がる窓の外。

突然、何か黒くて大きなものが窓の外を、上から下に落ちていった。

それは、制服を着た、髪の長い女子生徒だった。

振り乱した髪で顔は分からなかったが、紛れもなく女子生徒だ。

E子さんは恐怖で絶叫した。
誰かが落ちた…いや、飛び降りたのだ。

E子さんの悲鳴でクラスが騒然となる。
「誰かが飛び降りた！」E子さんが叫ぶ。

クラスの数名が窓の外を覗く。
しかし、下を覗き込んだ者たちはきょとんとして言った。

「だれもいないよ」

E子さんは呆気にとられた。
授業後、担任の教師に呼び出された。

E子さんはおかしな勘違いをして、授業を妨害したことを恥じた。

E子さんが謝ろうとしたら、担任は深刻な顔で話した。
「実は、同じような訴えは君だけじゃない。ここのところ数年続いている。誰かが、窓の外で落下していく女子を目撃するんだ。でも、だれも飛び降りてなんかいない。毎年２～３人は必ず見るんだよ」

E子さんは驚いた。
「私だけじゃないんですね」

担任はつづけた。
「そうだ。こんな事が起こるようになったのは、昔そのクラスだった女子生徒が屋上から飛び降りたことがあったんだ。髪の長い子だったが、同じクラスの親友と何かの事情でこじれてね…。気の毒に、自分で命を絶ったというワケだ。」

担任の話では、その親友も心を病んで退学したらしい。さらには、「落下する女子生徒」を目撃した生徒の中にも、精神に不調をきたす者がいたそうだ。

「次にこんなことが起きたら、あの教室を閉鎖するつもりだったんだ。生徒たちの平穏のためにね」

E子さんは幸いにして、ダメージはなかった。
ただ、気味が悪くなったのでお祓いにいったそうである。

違う教室に移ってからは、何もそのような怪異を見ることはなかったそうだ。


【おわり】