3 / 5
集落の者
しおりを挟む
人影は一人ではなかった。
ぽつりぽつりと見えはじめる。
薄汚れた服を着て、皆鋤のようなものを持って農作業している。
背筋が寒くなった。
この集落は明らかにおかしい。
なぜか、皆が皆四角い紙袋のようなものを被っている。
汚れた紙袋を頭からすっぽりと被り、その顔は見えない。
そんな頭に紙袋を被った村人が、点々と農作業している。
まともではない。
私はすぐに帰ろうと心を決めた。
だが、エンジン音を響かせ走る私に、集落の人間が気づかない訳がない。
紙袋の村人たちは、皆顔を上げ、私の方を見る。
その中の遠い一人が、私を指差し、くぐもったような声で叫びとも怒鳴りとも言えない大声を出した。
私は、悲鳴を上げそうになる。
すると、突然ブレーキが効き、アクセルが緩んだ。
私は止まった。
大声で間違えて入ってきたと弁明しようとした。
だが、その紙袋の者たちは、鋤やクワ、鎌などを手に持ったまま、ゆっくりと私に近づいてきている。
私は本能的に、逃げたほうがいいと悟った。
私は再度アクセルを回し、出口の方を目指した。
狂ってる。
これが老婆の言った「まがいもん」なのだろうか。
私はアクセルを回し続けるが、いつまでたっても、出口へ着かない。
もう着いていい頃だ。
一本道のはずなのに出口が来ない。
周囲はあの気味の悪い不規則に並ぶ小屋しかない。
その時、アクセルが停止した。
エンジントラブルでバイクが止まったのだ。
私は恐怖から鳥肌が立った。
幸い、気味の悪い紙袋たちはいない。
何とか逃げないとまずい。
私は兄に電話した。
「もしもし!兄さん?!変なところで迷ったの!」
私は窮状を伝えようとする。
「…じょうぶか…こにいるんだ…」
兄からの声は途切れ途切れになり、そして、くぐもった音で聞こえずらかった。
普段はこんな事ない。
電波が悪いのだろうか。
「○○集落の北側なの!G〇〇gleアースだと森だけど…変な人たちがいる集落に入ったの!」
私は必死に伝える。
だが、兄からの声ははっきりと聞こえない。
「…かうから…てね」
内容もよく分からない。
すぐに兄との電話は切れた。
そして、電話の電波は「圏外」と表示されていた。
私はバイクを停め、歩き出した。
少しでも出口に近づかないといけない。
私は小屋の間をすり抜け、道路上ではなく、小屋に隠れるように進んでいった。
道沿いだ。
だから出口の方へは行けるはず…
時折、紙袋を被った集落の人間を見かけた。
けっして見つからないように、私は静かに歩いた。
もう限界だ。
疲労で脚は重く、恐怖で身はすくむ。
もう動きたくない。
私はある小屋のそばでへたり込んでしまった。
ぽつりぽつりと見えはじめる。
薄汚れた服を着て、皆鋤のようなものを持って農作業している。
背筋が寒くなった。
この集落は明らかにおかしい。
なぜか、皆が皆四角い紙袋のようなものを被っている。
汚れた紙袋を頭からすっぽりと被り、その顔は見えない。
そんな頭に紙袋を被った村人が、点々と農作業している。
まともではない。
私はすぐに帰ろうと心を決めた。
だが、エンジン音を響かせ走る私に、集落の人間が気づかない訳がない。
紙袋の村人たちは、皆顔を上げ、私の方を見る。
その中の遠い一人が、私を指差し、くぐもったような声で叫びとも怒鳴りとも言えない大声を出した。
私は、悲鳴を上げそうになる。
すると、突然ブレーキが効き、アクセルが緩んだ。
私は止まった。
大声で間違えて入ってきたと弁明しようとした。
だが、その紙袋の者たちは、鋤やクワ、鎌などを手に持ったまま、ゆっくりと私に近づいてきている。
私は本能的に、逃げたほうがいいと悟った。
私は再度アクセルを回し、出口の方を目指した。
狂ってる。
これが老婆の言った「まがいもん」なのだろうか。
私はアクセルを回し続けるが、いつまでたっても、出口へ着かない。
もう着いていい頃だ。
一本道のはずなのに出口が来ない。
周囲はあの気味の悪い不規則に並ぶ小屋しかない。
その時、アクセルが停止した。
エンジントラブルでバイクが止まったのだ。
私は恐怖から鳥肌が立った。
幸い、気味の悪い紙袋たちはいない。
何とか逃げないとまずい。
私は兄に電話した。
「もしもし!兄さん?!変なところで迷ったの!」
私は窮状を伝えようとする。
「…じょうぶか…こにいるんだ…」
兄からの声は途切れ途切れになり、そして、くぐもった音で聞こえずらかった。
普段はこんな事ない。
電波が悪いのだろうか。
「○○集落の北側なの!G〇〇gleアースだと森だけど…変な人たちがいる集落に入ったの!」
私は必死に伝える。
だが、兄からの声ははっきりと聞こえない。
「…かうから…てね」
内容もよく分からない。
すぐに兄との電話は切れた。
そして、電話の電波は「圏外」と表示されていた。
私はバイクを停め、歩き出した。
少しでも出口に近づかないといけない。
私は小屋の間をすり抜け、道路上ではなく、小屋に隠れるように進んでいった。
道沿いだ。
だから出口の方へは行けるはず…
時折、紙袋を被った集落の人間を見かけた。
けっして見つからないように、私は静かに歩いた。
もう限界だ。
疲労で脚は重く、恐怖で身はすくむ。
もう動きたくない。
私はある小屋のそばでへたり込んでしまった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
とあるバイト
玉響なつめ
ホラー
『俺』がそのバイトを始めたのは、学校の先輩の紹介だった。
それは特定の人に定期的に連絡を取り、そしてその人の要望に応えて『お守り』を届けるバイト。
何度目かのバイトで届けに行った先のアパートで『俺』はおかしなことを目の当たりにするのだった。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
恐怖ダウンロード
西羽咲 花月
ホラー
靖子と夢の2人はクラスでイジメにあっていた
そんなとき出会ったのは不思議なおばあさん
その人は突然靖子のスマホを取り上げると「恐怖アプリ」をダウンロードしていた
・恐怖を与えたい相手の写真をアプリに投稿してください
・自動的に指定した相手に恐怖が与えられます
・かわりに、アプリの使用者にはなんらかの損失を負っていただきます
それを使い、靖子たちの復讐がはじまる!
とあるSCP財団職員のちょっとした話。
スチィー
ホラー
SCP財団の職員として働く男は、
今日も今日とて様々な
SCPの調査をしていくというお話。
「必ずホームランになるバット」
「閉めると景色が見えるカーテン」
「ジョークを言うと飛んでくるトマト」
などを調査していく
主人公だったが、、、?
※初投稿の作品です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる