宇宙警察ドラスティック・ヘゲモニー

色白ゆうじろう

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第35話「筋肉警官VS殺戮教授」

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平治はゆっくりと倒れた氷上に近づいた。


まだ息はある。


「へ…平治…すまん…」氷上は鼻が曲がり、顔は血に濡れている。


平治はしゃがみ込み、氷上を抱き起こす。


「男前が台無しだな」平治がふっと笑う「氷上さんは、徒手空拳を鍛えるべきだな」


「平治…うう…足を引っ張って…すまん」氷上の血濡れた顔は哀れっぽい表情をしている。


「動くなよ、じっとしてろ」


平治はそう言うと、氷上の曲がった鼻を掴むと強引に元に戻した。


ボキリと氷上の鼻が音を立てる。


「ぐあぁあー!」氷上が激痛からか叫んで身をよじった。

「何てことしやがる!平治!」


平治は氷上を放して、立ち上がった。

「ははっ。男前も元気も復活したな」


平治は前を見据える。


電子ヘルメットを粉砕され、血濡れた口元が露出した男が立っている。


「平治!コイツはサイボーグだ…!腕が伸びてくるぞ」鼻を押さえた氷上が忠告する。


「効いたよ…。ケーサツカンくん…」電子ヘルメットの男、つまり芳田はゆらりと近づく。「君には見覚えがある…。そう、スラム地区でチンピラを叩きのめしてたな…。確か、地球の兵隊上がりだったか」


「そうか…」と平治。「あんたが見てたのか。チンピラを片付けたのもあんただな」


「私じゃあない」芳田は頭を振る。「だが、モヒカンは私が退場させた。このネオシティからな」


「そこをどくか、投降するんだな」平治が警告した。近づいていく。「言っとくが…俺は、軍隊のやり方しかできんぞ」


「ほほおー!それは威勢のいい!」カール芳田は大声で笑った。「だがな、忘れるなよ。この私が革命戦士として心に決めている事がひとつある」


「そりゃなんだ」平治が言う。


「兵隊とマッポには服従しないと決めているんだよぉぉぉ!このボケ犬がぁぁぁぁ!!」

絶叫とともに、殺戮教授は武器を取り出した。


必殺の鎌と槌である。


教授は右手を振りかぶり、振り付ける!


平治から見て2メートル強だ。


ガキン!と金属音が響く。


鎌の尖った先端は、平治の左手甲に突き刺さっていた。


平治は手の甲で鎌を受け止めていたのだ。

だが、貫いていない。

金属製の手甲が功を奏した。じわりと手甲の下から血が滴る。


平治は、すぐに鎌を持つ芳田の右手首を両手で掴んだ。


「なに!」カール芳田が叫ぶ。


「鎌が刺さっちまったな」平治は不敵に笑う。「あんた…その長い腕は、短い時と同じような力で扱えるのかい?」


カールはギクリとしたようにたじろいだ。


「やっぱりな。こんな長い腕を振り回すなら、巨大な背筋や三角筋、僧帽筋がいる。あんたの痩せた背中じゃ無理だ。だから、一発狙いの投球フォームで攻撃してたんだろう」


「ぅぅ!ウラーーー!」

突如絶叫し、左手を振りかぶる芳田!


「オラーーーーー!」

コミュニストの雄叫びに対抗する如く平治も雄叫びを上げた!

そして、無常にも小手返しの要領でカール芳田の右手首を捻り砕いた。


ゴキゴキブチブチッ


不穏な音が響く。

「ぐわぁぁああー」

カール芳田は左手を振ることもできず、悲鳴を上げた。


「ははは!痛みを感じるとは、素晴らしいサイバネ技術だな!東側も大したもんだ!」平治はニヤリとして言う。「じゃあ、コイツは耐えられるか?」


平治は、ひしゃげたカール芳田の右手首を足下に叩きつけた。

そして、特殊部隊ブーツで無慈悲にも激しく踏みつけた!


「ギャーー」

苦悶の表情で絶叫する殺戮教授!


「氷上のお返しだ!」平治は巨体を翻し、カールに突進する!


「……このボケナスがぁぁぁ!」カール芳田は怒り狂い、左手のハンマーを振るう…


だが、冷静さを欠き距離を見誤ったようだ。

平治は、ハンマーよりも内側に入り、右腕でカールのサイボーグ腕を受け止める。


当然、ハンマーは当たらない。


さらに、そのまま右腕で外側からカールの腕を抱え込んだ。

がっしりと平治の筋肉で抱え込まれ、カールの腕は微動だにできない。


平治は、腕を抱え込んだまま、滑るよう懐へ入っていく!


平治の猛然たる突進!

左腕を抱え込まれ、右腕を破壊された殺戮教授には為す術もない!


「ちょっ…ま…!!」カールはつい臆病風に吹かれ、停止の申し出を口にしかける。


「オラァァーーーーー!」

鬼の形相をした平治は、岩石が衝突するかの如き頭突きをカール芳田の露出した口付近に食らわせた。


凄まじい音と衝撃…!


「ぐっっっはぁぁあっっっっ…!!」

苦痛にまみれた絶望のうめき声をあげる殺戮教授…。


のけぞる彼からは、電子ヘルメットのモニターの欠片や彼の白い真珠のような歯牙が、血の霧とともにキラキラと宙を舞うのだった。


平治の目はもはや警官の目ではなかった。

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