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第7話「地球は違法、衛星は合法」
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「お前達は口を開かなくていいぜ。警察とはバレない方がいい。何せここは、奴ら『ポリティカルディフェンダーズ』の自治区だ」吉和が言った。
「自治区?」と垣。
「衛星に植民が始まった頃、治安を守るのは軍隊だった。だけど、軍隊も警察ほど細かく治安統制できる訳じゃない」吉和は丁寧に車を走らせる。見た目に反し運転は大人しく安全である。
「だから、コソ泥やいざこざ、強盗などに対抗するために、自警団を作ったんだぜ。入植者たちは」
「政府公認で?」と平治
「そうだ。だから、武装も許可制にしてある程度許された。自警団が大きくなると、それぞれのコミュニティ同士が小競り合い起こすこともあった。そのうち、強力なコミュニティが弱いコミュニティを吸収するようになったぜ。それが今、『自治区』と名を変えている。結局はただのテリトリーだぜ」
「ポリティカルディフェンダーズもそうなのか?」
「そうだ。奴らは地球から来たいわば『革命勢力』だよ。政府のやり方や資本主義に異議を唱えてる」と吉和が言った「奴らは自警団の結成と武装の許可を逆手にとって合法的に武装化したぜ。そして、衛星にも沢山いるが、いわゆる抑圧された労働者層や、低所得層と呼ばれる連中の支持を取り付け、躍進した。政治家もいるし、労組が強い大企業のバックにもなっている。」
「政府は規制しないのか?その、武器とか」平治が聞いた。
「できない。自警団の結成から、武装の権利とか集団自営の権利という概念が衛星では定着してる。そこが、衛星では暴力沙汰が絶えない根本原因なんだぜ」
「じゃあ、過激なナショナリストもいるのか?」
「いるぜ、『神州の集』ってのが。私設軍を持ってる。こいつらも政治家や軍の右寄り連中とパイプがある。反社ともパイプがあるぜ」
「なんて街だよ…皆頭おかしいんじゃねえのか」垣が言った。
「だれも自分がおかしいと思ってなくて、相手がおかしいと思っているぜ」吉和が笑った。
「地球では表面化しなかったいざこざが、衛星で噴いたというワケか」平治が言った。
「そういう事。多様化ってさ。ある意味危険なんだぜ。」吉和がにやりと笑って言った「どいつもこいつも正しくなるからな。『間違ったやつ』が存在しなくなるんだぜ」
吉和が車を走らせると、片側一車線の道路に差し掛かった。
周囲は廃ビルのように古いビル群で、後から付け足したような電気ケーブル等が蔦のように絡みついている。
電気は通っているようで部屋からは明かりが漏れているし、ネオン看板もついている。
「高純度の葉!」
と書いてある。
道路はひび割れて、雑草が伸び、整備が遅れているようにもうかがえる。
すると、前方で発光式コーンやバリケードが見えた。
赤いスカーフをした兵士らが4、5人立っている。
「検問だ」吉和が言った。「いいか、お巡りさんたち。なんもしゃべるんじゃねえぜ」
「おい!」小さい声だが、語気強めて垣が言った。「吉和軍曹さんよ!そもそもなんで平治と俺を敵対する奴らの自治区に連れてくるんだよ。なんかの罠にかけようとしてんのか、この野郎!」
「落ち着けよ、人聞き悪いぜ」吉和が言った「うまいステーキ屋があるんだぜ。『労働者への血肉亭』っていう。バリバリのボリシェビキおじさんがやってるんだが、うまくて安いぜ。そもそも、ポリ公…あんたらじゃないぜ…ポリティカルディフェンダーズのこと。こいつらの自治区は労働者の街だから、うまい、安い、大盛りの店が沢山あるんだぜ。」
「そんな危険な目に合わせなくてもいいのによ」と不安そうに垣が言った。
「社会勉強だぜ。それにな、俺は軍曹じゃない。伍長だぜ」と吉和「あと、食後に葉っ〇が吸えるぜ。」
「衛星は合法なのか?」と平治「地球の日本自治体じゃ一部の医療用だけだが」
「地球は違法、衛星は合法。そんな楽しみはたくさんあるぜ」と吉和「楽しめよ。派遣の間くらい」
平治は肩をすくめた。
「自治区?」と垣。
「衛星に植民が始まった頃、治安を守るのは軍隊だった。だけど、軍隊も警察ほど細かく治安統制できる訳じゃない」吉和は丁寧に車を走らせる。見た目に反し運転は大人しく安全である。
「だから、コソ泥やいざこざ、強盗などに対抗するために、自警団を作ったんだぜ。入植者たちは」
「政府公認で?」と平治
「そうだ。だから、武装も許可制にしてある程度許された。自警団が大きくなると、それぞれのコミュニティ同士が小競り合い起こすこともあった。そのうち、強力なコミュニティが弱いコミュニティを吸収するようになったぜ。それが今、『自治区』と名を変えている。結局はただのテリトリーだぜ」
「ポリティカルディフェンダーズもそうなのか?」
「そうだ。奴らは地球から来たいわば『革命勢力』だよ。政府のやり方や資本主義に異議を唱えてる」と吉和が言った「奴らは自警団の結成と武装の許可を逆手にとって合法的に武装化したぜ。そして、衛星にも沢山いるが、いわゆる抑圧された労働者層や、低所得層と呼ばれる連中の支持を取り付け、躍進した。政治家もいるし、労組が強い大企業のバックにもなっている。」
「政府は規制しないのか?その、武器とか」平治が聞いた。
「できない。自警団の結成から、武装の権利とか集団自営の権利という概念が衛星では定着してる。そこが、衛星では暴力沙汰が絶えない根本原因なんだぜ」
「じゃあ、過激なナショナリストもいるのか?」
「いるぜ、『神州の集』ってのが。私設軍を持ってる。こいつらも政治家や軍の右寄り連中とパイプがある。反社ともパイプがあるぜ」
「なんて街だよ…皆頭おかしいんじゃねえのか」垣が言った。
「だれも自分がおかしいと思ってなくて、相手がおかしいと思っているぜ」吉和が笑った。
「地球では表面化しなかったいざこざが、衛星で噴いたというワケか」平治が言った。
「そういう事。多様化ってさ。ある意味危険なんだぜ。」吉和がにやりと笑って言った「どいつもこいつも正しくなるからな。『間違ったやつ』が存在しなくなるんだぜ」
吉和が車を走らせると、片側一車線の道路に差し掛かった。
周囲は廃ビルのように古いビル群で、後から付け足したような電気ケーブル等が蔦のように絡みついている。
電気は通っているようで部屋からは明かりが漏れているし、ネオン看板もついている。
「高純度の葉!」
と書いてある。
道路はひび割れて、雑草が伸び、整備が遅れているようにもうかがえる。
すると、前方で発光式コーンやバリケードが見えた。
赤いスカーフをした兵士らが4、5人立っている。
「検問だ」吉和が言った。「いいか、お巡りさんたち。なんもしゃべるんじゃねえぜ」
「おい!」小さい声だが、語気強めて垣が言った。「吉和軍曹さんよ!そもそもなんで平治と俺を敵対する奴らの自治区に連れてくるんだよ。なんかの罠にかけようとしてんのか、この野郎!」
「落ち着けよ、人聞き悪いぜ」吉和が言った「うまいステーキ屋があるんだぜ。『労働者への血肉亭』っていう。バリバリのボリシェビキおじさんがやってるんだが、うまくて安いぜ。そもそも、ポリ公…あんたらじゃないぜ…ポリティカルディフェンダーズのこと。こいつらの自治区は労働者の街だから、うまい、安い、大盛りの店が沢山あるんだぜ。」
「そんな危険な目に合わせなくてもいいのによ」と不安そうに垣が言った。
「社会勉強だぜ。それにな、俺は軍曹じゃない。伍長だぜ」と吉和「あと、食後に葉っ〇が吸えるぜ。」
「衛星は合法なのか?」と平治「地球の日本自治体じゃ一部の医療用だけだが」
「地球は違法、衛星は合法。そんな楽しみはたくさんあるぜ」と吉和「楽しめよ。派遣の間くらい」
平治は肩をすくめた。
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