JK私、興味ないメガネ男振ったら、数年後大金持ちになっていたからメールして付き合った。

色白ゆうじろう

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後半

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5日後、私は彼のマンションでシャワーを浴びていた。

もう夫人だ。
ボロアパートはとっくに引き払っている。

タオルを持った奇妙なロボットがバスルームの外に待機している。

ドラム缶からアコーディオンの手が生えたような妙なロボットだ。

彼が作った初期型のロボット。

思い入れがあるらしい。

そうだ、彼は私のために役立つロボットを作りたいと言っていたっけ。

私はそれを思い返してうれしくなった。


突然、シャワーが停止した。

ボタンを押してもシャワーは出てこない。

私は浴室の扉を開けようとした。

なぜか鍵が閉まったかのように動かない。
カギを開けてもだめだ。
電動扉がロックされたようだ。

私は外に立っているロボットへ声をかけた。

「ちょっと!浴室のシステムがおかしいわ。チェックして」

すりガラス越しに見えるロボットは、タオルを持った状態で動かない。
返事もしない。

すると、浴室内パネルの液晶になんと彼が映った。

その顔は、いつもの優しい顔ではなく、いつぞやの氷のような目をした冷たい顔だった。

「あなた、浴室システムが…」

「正常だよ」彼は言った「残念だ。浴室パネルにはカメラがない。君の姿は今見えない」

「あなた、何言ってるの。何とかしてちょうだい」

「この時を待っていたよ」彼は冷たく言った。「覚えていないのかい、僕を捨てた時のこと」

私は裸のまま、背筋が凍った。
悪い冗談だと思った。

1年間私を愛し続け、今更何を言っているのか。

「覚えてるわ。若さゆえの過ちよ…」私は答えた。

「僕はあの時から何一つ変わっていないよ。気持ちも、情熱もね」

「私もよ!愛に気づいていなかっただけなの!」私は必死に言った。

「ちがうよバカ野郎」彼は冷たく暴言を吐いた。「この1年よく耐えたよ。僕も」

「あなた…何言ってるの」

「僕は君だけを世界で一番愛していた。君から愛されないならこんな人生意味も価値もないと言った。覚えてる?」

「ええ…」

「わずか半年で僕は人生が無価値なことを知ったんだよ。君から愛されていないという事実に気づいた。」

「あの時は…」

「聞いて。それから僕はこの無価値な人生をどうしようか考えた。いっそ死んでしまうか。それとも、僕から人生の価値を奪った君を殺してしまうか」

「何よそれ…私が奪ったわけじゃないわ」私は、だんだんと恐怖と寒さで震え始めた。
よりによってなぜ、裸の浴室でこんな目に遭わないといけない。

「とりあえず、思い詰めてもしょうがない。僕は必死に勉強したよ。ロボット工学を…そして成功を収めた」メガネ君は冷ややかな目をして、だが、言葉には熱がこもって続ける。「成功した僕は思った。いつまでも君の事を考えることが無価値なんじゃないかと。それこそ、新しい人生の価値を探した方がいいのではないかと」

私は黙っていた。

「そんな時だった。君から僕に連絡してきたのは。しかも、僕が世界的な成功を収めた絶好のタイミングで」彼は高らかに笑った「僕は思ったよ。やはり人生なんて何の価値もない。世界に一人と愛した人があっさり浮気で去っていき、財産ができたらしっぽを振って戻ってくる…なんて滑稽なんだろう人間とは」

彼はつづけた

「僕の人生は君に振られた時点で無意味だ。だから僕の人生どうなったってかまわない」冷ややかに言う。

「緊急プロトコル作動中」妙なナレーションが家の家電から流れている。外にいるロボットからもそのナレーションとアラーム音が鳴り始めた。

「私に振られたくらいで、自分の人生棒に振るつもりなの!」私は叫んだ。

「そうだ。真に君に愛されない人生なんて無価値だからね」彼は微笑んだ。

狂っている。
彼は偏執狂だ。

「でもね、ここまで金持ちになっちゃうと…何事もどうにでもなっちゃうものさ」と彼は言った。「初期型ロボットの暴走事故…浴室だから後始末も簡単だ。当然ながらこの会話の記録も、通信ログも消える。あ、君のご両親には宝くじが当たる以上の補償金が入るから安心してくれ」

「あなた…狂ってるわ」
私は震えて、膝が笑い始めた。
この男は狂人だ。
全てを手にした狂人なのだ。

「だが結局、今の僕を愛してくれる人は山ほどいるからね。愛なんかに価値を見出すのが無意味だと気付いたよ」

「じゃあ、解放してちょうだい。あなたの前から消えるから…私に掛かったお金はなんとかするから…命だけは助けて」
怯えた。
跪いて命乞いした。

世界有数の金持ちが今私を殺そうとしているのだ。

「うーん、だって君と約束したもんね。その初期型は初めて作ったロボだよ。今から君を襲わせる。せいぜい逃げおおせてごらん」

「私の役に立てるロボットって言ったでしょ!」
私は絶叫した。
この狂人は私のために作ったロボットで、私を殺そうとしているのだ。

「違うよ。ボイスレコーダーの記録では『僕が開発したロボットを君のために使う。約束する』と言った。役に立てるなんて言ってない」
彼は赤いボタンを取り出した。

「やめて!助けて!だれか!」
私は精一杯叫んだ。
寒さと、絶望、恥辱が…弱った私を包み込んでいく。

「ははは、無駄無駄。日本一防音に優れた高級マンションだもん」彼は笑った。「生き残れば、結末は変わるかもね。」

そして彼は「せいぜいがんばってー」と言い、赤いボタンを押した。

外にいるロボットがうなり声をあげ、目の位置にある液晶が赤く光った。

不気味な駆動音をとどろかせ、ゆっくりとこちらへ向く。

穏やかな家事ロボットが通常出す音ではない。

私は絶望の中、浴室を見回した。
あるのは洗面器やボディウォッシュ、シャンプーなど。

武器になるものなど何もない。
そして、窓は小さな換気窓のみ。

私は悲鳴をあげた。
ロボットはこちらへ近づいてくる。

悲鳴が引っ込まない。
ただ恐怖と絶望で叫ぶしかできない。

ロボットが、アコーディオンのような腕を振り上げて、すりガラスの扉をたたき割ろうとしていた。


【終わり】
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