その少年、暴力の化身

九十九一

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その少年、暴力の化身

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 血なまぐさい匂いが周囲に蔓延する。絶え間なく聞こえてくるのはなんとも形容し難い悲鳴。総勢百体ものの囲まれ、その中心に立つ年端もいかない少年。その少年の風貌は返り血に汚れ、元々の色すらわからない。元々白い色の頭髪をドス黒い返り血で汚した少年は、ギラついた目のまま次の獲物を吟味していく。

 彼の周りには既に事切れた数十体の魔物の死骸。穏やかな平野には似つかわしくないその光景を見る者がいたのであれば心穏やかなままではいられないだろう光景が辺り一面に広がっている。少年を取り囲むように魔物たちは威嚇し、かつての同胞たちの姿を見て警戒心を跳ねあげさせていた。魔物という存在には一般的に知能という物が存在しないと伝えられている。何故存在しているのかも、どこから来るのかも不明なその物体たちは人間の姿を確認するとどんな状態であろうと襲ってくる。

 それなのにも関わらず、たった一人の少年に対して百体もの魔物たちは襲い掛かるでもなく威嚇しながら取り囲むのみ、魔物たちは本能で感じ取っていた、目の前にたつその小さな存在、には勝てない、と。

「さっきまでは調子乗って突っ込んできてたくせに仲間どもが殺られたら取り囲んで威嚇って……今時のチンピラでもそんなことしねーぞ」

 獰猛な笑みを浮かべながら少年は周囲を取り囲む魔物たちに向かって通じないであろう言葉を投げかけた。挑発された、そう感じ取った魔物の一体の堪忍袋の緒が切れる。その魔物の風貌はどちらかというと人間よりの風体であった、違う点を挙げるとすれば、背丈が人間の子供ほどの高さしかない。さらに肌の色はどんよりとくすんだ緑色、申し訳程度の生えている頭髪、口の端しは吊りあがり、耳が尖っている。身につけているものは腰巻のボロボロの胸当て、手に持つ獲物は死体から剥ぎ取ったであろう刃こぼれした手斧。

 その手斧を振りかぶり、この世の言葉とは思えない音を発しながらその魔物---ゴブリンと人間から呼ばれているものは襲い掛かる。その姿を確認し少年は待ってましたと言うように舌舐めずり。少年の目の前で跳躍したゴブリンはその脳天に獲物の手斧を振り下ろさんとおお振りに振りかぶった。

「はい、さよーならー」

 そんな間の抜けた言葉とは裏腹に少年のはなった上段の蹴りはゴブリンの頭部を的確に捉え、。力なく落ちた手斧、その音は夥しい量の魔物の血を含んだ大地が吸収する。そのあとに続くように大量の血を噴水のように撒き散らしたのその体が大地に転がった。それはほんの一瞬瞬きをした瞬間には既に終わっていた。
 何度目だろうか、このような光景を目にしたのは。目の前にたつと遭遇して一時間も経っていない。むしろ三十分も経っていない。そんな短い間にの軍勢は半壊させられたのだ。目の前にたつ少年---白木 白(シロキ ハク)に。

「さあ、次は何奴が逝きたい?」

 魔物たちは戦慄する。知能がないはずの存在だが本能で悟った。

 自分たちは逃げられない。

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