ヴァンパイア陛下は森の中に住む女性に恋に落ちる。

藍田 のひか

文字の大きさ
上 下
58 / 60
六章

08

しおりを挟む
***


 すでに臨月に入り、双子が生まれる予定日の二週間前。

 梅雨の時期、昨夜の雨が上がり朝日が登ってきた時間帯にサラーナはお腹の張りで目が覚めて少しずつ鈍い痛みについ声が出てしまった。

「いっ……う、ふぅー」

 背中越しで寝ているサグイスを起こさないように手でお腹を摩ったりしているとサグイスが起きて後ろからお腹を摩ったりしてくれた。

「サラーナ?」

「ごめんなさい、サグイス。 起こしてしまったわね」

「気にするな、それより痛むのか?」

「さっきから少しお腹の痛みで目が覚めてしまって」

「たしか、産まれてくるまであと二週間だったよな」

「そうね、でもラディウス様からはいつ産まれてきてもいい期間に入ってるって言ってたわ」

「そうなのか、まだ痛むか?」

 サラーナは身体の向きをサグイスの方にして向かい合うようにした。

「落ち着いたみたいだわ。 ありがとう、サグイス」

「サラーナ、もう少し寝てろ。 時間になったら起こしてやるから」

「ええ、そうするわ」

 お腹の鈍い痛みは治まってサラーナはサグイスに抱きしめられて再び眠りについた。

 再び起きてから少しずつお腹の張りと痛みが多くなった。  サラーナが痛みを我慢する姿を見てサグイスはラディウスを呼び出した。

 すぐにラディウスは機材を持ってやってきた。

「サラーナ様、少し失礼します」

 そう言いながらサラーナのお腹を触って確認をしている。

「サラーナ様、痛みはどのくらいで来てますかな?」

「えっと、お腹の張りは朝方からずっとで鈍い痛みはずっとある感じですわ」

「前駆陣痛は来ていますな、子宮口の開き具合を確認しますので少々痛いのを我慢してください」

 ラディウスはサラーナの腟内に指を入れて子宮の開き具合を確認をした。サラーナはラディウスの指が入った瞬間に「い、いった……」と声を漏らしてしまった。

「子宮口はまだ柔らかくないのぅ。無理のない範囲内で歩いたり、スクワットをすることをお薦めをいたします」

「そうですか、わかりました」

 サラーナは痛みに我慢しながらも話をしたり聞いたりはいつも通りにできている。

「破水すると痛みが強く感覚が短くなって来たら産まれる体制に入ります。 なのでそれまでは落ち着いて食べれる時にご飯は食べといてくださいね」

「ありがとうございます、ラディウス様」

「少しでもさっきと違う痛みが来た時はお知らせください。お産の準備は整っておりますのでご安心くださいませ」

 ラディウスは一度医務室で待機をし、サグイスはサラーナの歩くペースを合わせながら食堂へと向かった。少し痛みが来たらテーブルに手を付いて息を整えながら痛みが落ち着くのを待つ。

「サラーナ様、もしかして痛みが強くなって来ているのでは?」

「大丈夫よ、少しまてば治るわ」

 ラディウスが言ってたように食べれる時に食べておかないと思いながらナイフとフォークを持ったらスーッと鈍い痛みが引いた。

 食事中は美味しく食べれて、しまいにデザートの苺のムースをおかわりをしたくらいだ。

 食堂を出て外の空気を吸いに庭に出る。深呼吸をしながら庭を一周したらスクワットを五回するを何度も繰り返した。

「サラーナ様そろそろ休憩をいたしましょう」

「ええ、そうするわ」

 立ち止まると鈍い痛みはあったものの歩いたりしていたら痛みは治る。 夕食前にエリーに見守られながらお風呂に入る。着替えはエリーに手伝ってもらい終わるとそのまま夕食を食べに食堂へと向かう。

 夕食はサグイスと一緒に食べる。 

「サラーナ、調子はどうだ?」

「時々鈍い痛みはあるけど、ラディウス様から歩いたりスクワットを無理のない範囲内でって言われたわ」」

「そうか、スクワットなら俺も一緒に手伝うぞ」

「ありがと、それじゃ、寝る前にお願いをしてもいい?」

「ああ、わかった」

 夕食後は寝室でサグイスに手伝ってもらい、軽くスクワットをしてから就寝をした。


 ***


 双子が生まれる当日ーー。

 ラディウスから昨日、触診をした時に子宮口を何度も指でグリグリと刺激をしたら本陣痛につながると話していた。鈍い痛みがずっと続いて歩いたりするのも歩いては立ち止まるを繰り返しながらだったが、今は昨日より痛みが強い。

 朝食を食べながら痛みが段々と増すばかりで痛みに耐えながらフォークを握りしめ、我慢勝負の合間にイチゴを3個しか食べれなかった。

「ううっ・・・・・・」

 向かいにはサグイスが心配そうに私を見ているが今は痛みが強くてサグイスに声をかける暇も無い。

「エリー、ラディウス様を、部屋に戻る、わ」

「かしこまりました」

 ゆっくりと椅子から立った瞬間に「パンッ!」と音とともにサラーナは股下から一気に温かいものが流れ出たのを感じた。

「サラーナ!」

 サグイスの声が頭の中で響き渡る。 

 そしてサラーナは今までのお腹の痛みとプラスで腰の痛みが何十倍と一気に押し寄せてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...