ヴァンパイア陛下は森の中に住む女性に恋に落ちる。

藍田 のひか

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五章

07

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無事にサグイスの二十歳の誕生日パーティーを終えたのは夕方。 他の侍女たちと一緒に片付けをしていたらラディウスに呼ばれた。

「アネシー侍女長、ちょっといいか?」

「はい、なんでしょうか」

 ラディウスは医師の格好ではなく管理官の正装姿をしていた。

「今から陛下と王妃様の所へ行くからオウラ料理長を呼んできてくれ」

「かしこまりました」

 アネシーは調理場に顔を出した。

「オウラ料理長はいらっしゃいますでしょうか」

 するとアネシーの声でオウラはアネシーの元へ来た。

「アネシー侍女長、どうかしましたか」

「今からラディウス管理官と陛下と王妃様の所へ行くと」

「分かりました」

 オウラは調理場の人たちに「少しの間席を外す」と声をかけて調理場を出た。

 アネシーも侍女の皆に「大広間の片付けが終えたら各自持ち場に戻りなさい」

「アネシー侍女長、オウラ料理長、宜しいですかね?」

「ええ」

「はい」

「アネシー、体調はどうかな?」

「強い吐き気はありませんがものを食べると胃の気持ち悪さは少しあります」

「もう少しでつわりが落ち着くであろう。  そしたら普段通りの食事ができるようになる」

 そして三人は陛下の部屋の前へと足を止めた。 陛下の使いの者に取り次いでもらい中へと入る。中へ入ると陛下の隣に王妃がいた。

「あら、ラディウス管理官に料理長と侍女長ではないの」

 重い空気の中ラディウスが話を切り出した。

「陛下と王妃様にお話がございます」

「改まって話とはなんだ、申してみろ」

「実はアネシー侍女長が懐妊をなさいました」

「そうかそうか、それはめでたい」

「侍女長、体調の方は大丈夫なのですか?」

 王妃の言葉にアネシーは丁寧に応える。

「王妃様、お気遣いありがとうございます。 まだ少しだけ悪阻がありますが落ち着いています」

「それで料理長はどうかしたのか」

「それはですね……」

 するとラディウスの言葉をかき消すようにオウラ床に膝をついて頭を下げた。

 そしてオウラ同様にアネシーも床に膝をついて頭を下げた。

「二人してどうしたのだ」

「そうですよ、二人とも頭をあげなさい」

 陛下と王妃の言葉にもオウラとアネシーは頭を下に向けたままだった。  重い空気が漂う中、オウラは口を開いた。

「陛下、王妃様。 私たちは王国の禁止事項を破りました。 そしてアネシー侍女長と男女の関係を持ち心から愛しております」

「そ、それは本当か!?」

「料理長、間違いないのですか」

「はい、間違いありません」

 陛下と王妃は驚きながらも話を聞いていく。

「陛下、王妃様。 私アネシーはオウラ料理長をお慕いしております。 そしてお腹の子はオウラ料理長との子です」

「な、なんと侍女長までーー」

「二人とも顔を上げなさい」

 王妃に言われてオウラとアネシーは顔を上げた。

「サグイスはこのことを知っているのですか?」

「いえ、まだ話しておりません」

「そうですか」

 それから少しの間、沈黙が続いた。
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