ヴァンパイア陛下は森の中に住む女性に恋に落ちる。

藍田 のひか

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一章

02

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 割れたガラスの破片がサラーナの頬を掠めた。 

 サグイスはサラーナに一歩一歩近づいてサラーナのそばに寄る。

「すまない、サラーナ」

「だ、大丈夫よ。 それよりもごめんなさいサグイス、私の血は駄目だったーー」

 するとサグイスはサラーナの言葉を無視して頬の血を舐め、また首元に牙を押し当てて吸いついた。
 サラーナはサグイスが私の血を吸い終わるまでその場から動かずに待った。

「サラーナ、すまぬが身体が回復するまではお前の血をくれないか」

「サグイスが私の血が欲しいならあげるわ」

「ありがとう」

 サラーナは黙って頷いた。


 ***


 サラーナの家にサグイスが居座って四日目になったある日。

「サラーナ、畑の野菜を収穫してきたぞ」

「ありがとう、サグイス」

 サグイスはサラーナを抱きしめふたりして顔を合わせて微笑んだ。 

 この数日間の間で私たちはお互いに惹かれ合っていた。

「今日は城下市があるから行ってくるわね」

「城下市ってなんだ?」

「城下市は定期的に多数の商人が集まって商品売買を行う所だよ」

 サグイスは「なるほど」と呟きながら頷いていた。

「私は野菜が多く収穫できた日に城下市で作った野菜を売っているの」

「サラーナは城下市で野菜を売って生活をしているんだな」

「ええ、そうよ」

 毎食後にサグイスはサラーナの血を飲んですっかり左肩の怪我も傷跡が残らず綺麗に治った。

「ごちそうさま」

「サグイス、私の血を毎日飲んでるけど身体の方は大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫だ。 むしろ血薬よりもサラーナの血を飲んだ方が身体の回復が早いんだ」

 最初は私の血を吸いついていたけれど、だんだんとサグイスは吸いつくよりも飲むようにサラーナの血を欲しがった。

「それはよかったわ」

「サラーナは心配性だな」

「もうサグイスったら、荷車に野菜を積んでもらえるかしら?」

「わかった」

 サグイスが荷車に野菜を積んでもらってる間に私は城下市で買雨ものを考えていた。

「サラーナ、野菜を全て積んだぞ」

「ありがとう。 それじゃ、今から城下市に行ってくるわね」

「気おつけて行けよな」

「はーい。 サグイスはゆっくりしていてね」

「ああ」

 サラーナはサグイスに見送られながら城下市へと向かった。城下に着くといろんな商人がお店を出していた。

『私も早くお店に準備をしきゃ』

 私のお店は荷車の上に見栄え良く野菜を綺麗に並べて、他の商人のモノと比べて野菜の値段を決めていく。
 少しだけ立派に育ったキュウリ、緑色のピーマン、赤と黄色をしたパプリカも今回は売ることにした。
 キャベツ、カボチャ、トウモロコシは銀貨五枚。 トマト、キュウリ、ピーマン、パプリカは銀貨三枚と決めた。
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