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部屋でぼーとしていると、ノック音が聞こえる。
「失礼します」
ジョンさんが笑顔で部屋に入ってくる。
「ナオ様!良い知らせです、明日から騎士団での訓練を再開できるそうですよ」
「本当?!」
よかった…!
書庫での事があってから、俺は魔術の訓練をしてなかった。
知識の少ない俺が一人で訓練するのが怖くなったってのもあるが、正直これ以上レイに迷惑をかけて嫌われたくなかった。
だから久し振りに訓練が出来ると分かり、俺はテンションが上がる。
「あれ?でも俺一人で行っていいの?」
一人で行動することは止められていたはずだけど……それももうどうでもいいのかな。
「いえ、今まで通りレイモンド様と一緒に行っていただきます」
「あ、」
レイと一緒に?
レイは俺を避けてるのに?
「本当に?」
「はい」
・
・
・
翌朝、支度を済ませるとレイが玄関で待っていた。
「っ、」
この前怒鳴られた事を思い出して体が勝手に強張る。
「行くか」
レイが短く伝える。
「うん」
・
・
・
騎士団に着くと、スッとレイが離れていく。
いつもは何かしら言ってから別れるのに……。
一人で落ち込んでいると、いつかの様にエリクが抱き付いてくる。
「ナオ!心配したんだぞー!団長も休みだし」
「え?レイも休みだったの?」
「そうだぞ?知らなかったのか?」
え、だって仕事が忙しいから寮で寝泊まりしてるって。
「噂では、団長にも恋人が出来たんじゃないかって。副団長が『団長は恋人と過ごすために休みです』って言ったっていう奴もいるし」
え?待って、レイに恋人?
それじゃぁ、本当は寮じゃなくて恋人の所にいたってこと……?
……あぁ、そういうことか。
レイはやっと好きな人に巡り会ったのに、催淫効果でおかしくなった俺に当てられて、あんな行為をしちゃった。
そのことに嫌悪感を抱いて不機嫌だけど、弱っちぃ人間の俺に当たらないように、わざと親切にして気を遣ってた。
……それなのに俺は謝りもせずに、挙げ句は気を遣わなくていいなんて言ったんだ。
そりゃ、怒るし、恋人のことろに行って慰めて貰いたくもなる。
「はぁ……」
俺は自分がバカすぎて溜め息が出た。
「どうしたナオ?自分が知らなかったのがショックなのか?」
「うん、俺バカみたいだ、……はは」
もしかしたら、訓練を再開できたことは奇跡なのかもしれない。
そうと分かれば、学べるときに学ばないと。
いつ訓練に参加出来なってもおかしくないから……。
「……エリク、俺、訓練頑張るね」
「お、おう!ナオはいつでも頑張ってると思うけどなっ」
・
・
・
その日の訓練は今まで以上に集中したし、片付けが終わった後も残って自主練をした。
訓練に集中してないと、不安だった。
それに、執務室に行くのが怖かったんだ。
「ナオ、僕はそろそろ帰るよ?ナオもその辺にしたら?」
帰り支度を済ませたエリクに声をかけられる。
「うん。もう少しだけやったら終わりにする」
「そう、じゃぁまた明日な」
「じゃぁな」
そう言うと、今日の復習を再開した。
全く知らない事を一人でやるのは怖いが、復習なら良いのではないかと思ったのだ。
少しでもいいから、前に進みたい。
いや、進まないと……。
……レイに追い出されるときの事を考えると、不安で仕方なかった。
「────ナオ」
ふと、俺を呼ぶ声がする。
視線を向けると少し申し訳なさそうな顔をしたレイと目が合う。
もう怒鳴られたことは怖くない。
だけど、それ以外の感情が心を支配して上手く声が出せない。
「帰るぞ」
「……うん」
それだけの返事をすると、慌てて片付けをした。
「失礼します」
ジョンさんが笑顔で部屋に入ってくる。
「ナオ様!良い知らせです、明日から騎士団での訓練を再開できるそうですよ」
「本当?!」
よかった…!
書庫での事があってから、俺は魔術の訓練をしてなかった。
知識の少ない俺が一人で訓練するのが怖くなったってのもあるが、正直これ以上レイに迷惑をかけて嫌われたくなかった。
だから久し振りに訓練が出来ると分かり、俺はテンションが上がる。
「あれ?でも俺一人で行っていいの?」
一人で行動することは止められていたはずだけど……それももうどうでもいいのかな。
「いえ、今まで通りレイモンド様と一緒に行っていただきます」
「あ、」
レイと一緒に?
レイは俺を避けてるのに?
「本当に?」
「はい」
・
・
・
翌朝、支度を済ませるとレイが玄関で待っていた。
「っ、」
この前怒鳴られた事を思い出して体が勝手に強張る。
「行くか」
レイが短く伝える。
「うん」
・
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・
騎士団に着くと、スッとレイが離れていく。
いつもは何かしら言ってから別れるのに……。
一人で落ち込んでいると、いつかの様にエリクが抱き付いてくる。
「ナオ!心配したんだぞー!団長も休みだし」
「え?レイも休みだったの?」
「そうだぞ?知らなかったのか?」
え、だって仕事が忙しいから寮で寝泊まりしてるって。
「噂では、団長にも恋人が出来たんじゃないかって。副団長が『団長は恋人と過ごすために休みです』って言ったっていう奴もいるし」
え?待って、レイに恋人?
それじゃぁ、本当は寮じゃなくて恋人の所にいたってこと……?
……あぁ、そういうことか。
レイはやっと好きな人に巡り会ったのに、催淫効果でおかしくなった俺に当てられて、あんな行為をしちゃった。
そのことに嫌悪感を抱いて不機嫌だけど、弱っちぃ人間の俺に当たらないように、わざと親切にして気を遣ってた。
……それなのに俺は謝りもせずに、挙げ句は気を遣わなくていいなんて言ったんだ。
そりゃ、怒るし、恋人のことろに行って慰めて貰いたくもなる。
「はぁ……」
俺は自分がバカすぎて溜め息が出た。
「どうしたナオ?自分が知らなかったのがショックなのか?」
「うん、俺バカみたいだ、……はは」
もしかしたら、訓練を再開できたことは奇跡なのかもしれない。
そうと分かれば、学べるときに学ばないと。
いつ訓練に参加出来なってもおかしくないから……。
「……エリク、俺、訓練頑張るね」
「お、おう!ナオはいつでも頑張ってると思うけどなっ」
・
・
・
その日の訓練は今まで以上に集中したし、片付けが終わった後も残って自主練をした。
訓練に集中してないと、不安だった。
それに、執務室に行くのが怖かったんだ。
「ナオ、僕はそろそろ帰るよ?ナオもその辺にしたら?」
帰り支度を済ませたエリクに声をかけられる。
「うん。もう少しだけやったら終わりにする」
「そう、じゃぁまた明日な」
「じゃぁな」
そう言うと、今日の復習を再開した。
全く知らない事を一人でやるのは怖いが、復習なら良いのではないかと思ったのだ。
少しでもいいから、前に進みたい。
いや、進まないと……。
……レイに追い出されるときの事を考えると、不安で仕方なかった。
「────ナオ」
ふと、俺を呼ぶ声がする。
視線を向けると少し申し訳なさそうな顔をしたレイと目が合う。
もう怒鳴られたことは怖くない。
だけど、それ以外の感情が心を支配して上手く声が出せない。
「帰るぞ」
「……うん」
それだけの返事をすると、慌てて片付けをした。
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