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しおりを挟む「ジョンさん、書庫に行きたいんだけど勝手に入っても平気?」
「問題はありませんが……私も付いていきましょうか?」
「いや、俺一人で大丈夫!」
ジョンさんにはジョンさんの仕事があるのだ。
俺の面倒ばかりを見て貰うのは申し訳ない。
ジョンさんの顔が少しだけがっかりした様に見えたが、直ぐにいつもの微笑みに戻る。
「かしこまりました。何かありましたら、直ぐにお呼びください」
俺は朝食を摂り終わると書庫へ向かった。
屋敷へ来て直ぐの時に一通り案内して貰っているため、大体の部屋の場所は把握している。
一際大きな扉の前まで来ると、体重をかける様にして開く。
一歩足を踏み入れると、インク特有の香りが鼻を抜けた。
うわぁ、初めて入ったときも思ったけど凄い本の量だなぁ。
この量の本の中から、魔術に関する本を探すのは骨が折れそうだ。
入り口の近くにある本棚に視線を向けると、「歴史・地理」と文字が書かれたプレートが付いていることに気が付く。
他の棚を見ると「文学」「産業」などと書かれているではないか。
これは……。
そのまま棚ごとに設置されているプレートを見ながら、目的の本棚を探す。
あ、あった!
「魔術」の文字を見つけると、その棚に並ぶ本を吟味する。
幾つか参考になりそうな本を取り出すと、近くにあったテーブルに運んだ。
椅子に座ると、表紙からして内容が簡単そうな一冊を開き、目次を見る。
この本には、基礎的な内容と少しだけ応用したものが載っているようだ。
俺は、基礎を飛ばして応用のページを開く。
すると、面白そうな言葉が目に入った。
【透明にする魔術】
えーと、透明にしたいもの全体に膜を張るように魔力を流す……。
辺りを見渡すと、一輪のガーベラが挿される白い花瓶を見つけた。
それに向かって手を翳すと、本に書かれる手順で魔力を操作する。
すると花瓶だけが透明になり、中に入っていた水とガーベラだけが空中に浮いている様になった。
これ大量の花でやったらもっと綺麗かも。
それに、もし布に使えるなら服にだって……ぐふふふっ。
俺は、くだらなくもロマンのある悪巧みを思い付く。
しかし、もう少し実用性のある魔術が知りたい。
残りのページをパラパラと捲るが、めぼしいものは見つからない。
次の本を手に取ると、何やら付箋が貼られているページがあることに気が付く。
そのページを開くと、びっしりと書かれた文字と説明らしき絵が載っていた。
絵を見た感じ、萎れた植物を元気にする魔術のようだ。
これなら……!
透明な花瓶に挿されたガーベラに視線をやる。
全く萎れていないが、今すぐに試せる対象はこの花しかない。
更にページを捲ると、一面に描かれた魔法陣を見つける。
これを書けば良いのだろうか?
俺は持ってきていた筆記用具を広げると、丁寧にその魔法陣を写し始める。
描き進めるに連れて、だんだんと魔法陣が光を帯びてくる。
おぉっ!出来てるっぽい!!
しかし、もう少しで写し終わるという時、廊下から慌ただしい足音が聞こえてきた。
バンッという音ともに扉が開かれる。
「おい!」
息を荒くしたレイが凄い形相で、こちらを睨んでいる。
「今すぐ止めろ!!」
今まで聞いたことも無いようなの声色に、俺の体が固まる。
「どうかなさいましたか!?」
何事かと駆けつけたジョンさんが、レイと俺を交互に見る。
「……っ、すまない、後は頼む」
それだけ言うとレイは書庫を去ってしまった。
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