異世界転移したら獣人騎士団長に拾われました。

どらいもなか

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あれから、数日経ったがレイの機嫌が悪いという噂が後を絶たない。

レイに冷たくされる覚悟が出来なくて、なかなか言い出せなかったけど、……今日こそ言わなきゃ。

気を遣って俺に優しくしなくていいって、それで、余計に嫌な気分になって欲しくないって。


────コン、コン、コン

「ナオ、夕食の準備が出来たそうだ」

ドア越しに、レイの声が聞こえる。

あの日から、俺にはやたら親切なレイ。
本当は機嫌が悪いくせに。

……よし、夕飯の後に言おう。
そう決心すると、俺は努めて明るい声で返事をした。

「今行くっ」







食事を終えたレイが、ワインを少しだけ入れたグラスを片手で揺らしている。
これは、ルーティンみたいなもの。
このワインを飲み終わると、夕食の時間は終わりになるのだ。

話すなら今だよね……。

「あ、あのさっ、レイ」
「なんだ?」
「えっと、俺に気を遣わなくていいから……騎士団の皆に、その、普段通りに接してくれないかな……?」

レイが驚いた様な顔をして、グラスをテーブルに置く。

「……」
「皆がレイの機嫌が悪いって言ってる。このままは流石に良くないよ」

レイは黙りこくって、考える様な仕草をする。
しばらくして顔を上げると……俺の目をしっかりと見た。

「……わかった」

その視線を受けると余計に胸が苦しくなる。
だけど、苦しそうな顔はしちゃ駄目だ。
俺は無理やりに笑顔を作ると、

「うん、そうして」

震えそうになる声を何とか抑えて、それだけ言った。





風呂を済ませて就寝の準備をする。
時計を見るが、寝るにはまだ早い時間。
でも俺はやっぱり、レイに冷たくされるのが怖くて、早めにベッドに入ることにした。


横になると、意外にも直ぐに眠気がやってくる。
最近は何だかんだ気を張っていたし、レイの事で悩んで眠れない夜もあった。
レイと話すことが出来て、ある意味気が緩んだのかもしれない。


明日からが怖いな……。

だけど、弱気でいる訳にはいかない。
レイの事を好きという以前に大きな恩があるのだ。
例えレイに邪険に扱われようと、その恩は無かったことにはならない。
それに、騎士団の訓練に混ぜて貰えてる内に力を付けないと。
近い将来、この屋敷を追い出されるかもしれない。

……レイは責任感が強いから、そんなことはしないと思うけれど、それでも言いきることは出来ないのだ。


そんな事を考えている内に、いつの間にか俺は夢の中へと落ちていった。







……あれ、何で?
レイが俺のベッドにいる。
そんなはず無いのに……。
俺、都合の良い夢を見てるのかも……。

現実ならどんなに良いか。
……そんなことは絶対に無いのだけれど。

だけど、夢の中くらいは甘えても許してくれるかな?

そう思って俺はレイに擦り寄る。

「……レイぃ~、ふふっ」

ぎゅーとレイを抱き締める。

あったかい。
本当に幸せな夢だなぁ。
ずっと覚めなければいいのに……。

そんな事は無理だと分かっていても、俺は望まずにはいられなかった。

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