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しおりを挟む「……オ、……ナオ、そろそろ起きる時間だぞ」
軽く体を揺らされて目を覚ます。
身支度を済ませ、ベッドに腰掛けるレイが視界に入った。
「おはよう、ナオ」
「ん、おはよう」
上半身を起こし、寝ぼけていた頭が覚醒してくると、昨晩の事を思い出す。
俺、レイと凄いことしちゃった。
思わず俯き、両手で顔を覆う。
体が熱くなって、我慢できなくなって……思い出すだけでめちゃくちゃ恥ずかしい。
だけど、触って貰えてすごく幸せだったなぁ。
でも、何であんなことに?
不思議に思ってると、頭上から声が降ってくる。
「ナオ、昨晩のアレは無かったことにしよう」
あ……
思わず、顔を上げた。
「アレは紅茶の催淫効果で、お前も本意じゃないだろ?だから昨晩のことは忘れろ、私も忘れるから」
お前もその方がいいだろう?と、険しい顔でレイが言ってくる。
「あ、うん、そうだね……」
レイは無かったことにしたいんだ、……まぁそうだよね。
多分、俺が催淫効果で狂ってて、可哀想だから相手をしてくれたんだ。
可愛いって言われて、ちょっと嬉しかったんだけどな……。
レイは番を望んでないんだから、俺に変な期待をされても嫌ってことだよね。
やっぱり、俺の気持ちは隠さないと迷惑になるよな……。
「そろそろ準備しないと朝食を食べる時間が無くなるぞ」
レイが俺の頭を撫でてくる。
止めてよ。
レイにとっては何でもない行為なのかもしれないけど、俺にとっては違う。
涙が溢れてきそうになって、顔を隠すように俯く。
「ナオ?」
「俺、顔洗ってくる!」
そう言うと、慌てて部屋を飛び出した。
身支度を整え、食堂の入り口へ向かうとレイが何か錠剤のようなものを飲んでいるのが見えた。
他のことに気を取られていて気が付かなかったけど、体調が悪いのか?
「薬?具合が悪いの?」
食堂に入り、声をかけるとレイの肩が少しだけ揺れる。
「……いや、大丈夫だ。大したことはない」
「そう?」
あまり、突っ込んで欲しく無さそうな雰囲気を感じ取り、俺はそれ以上聞くことが出来なかった。
・
・
・
騎士団の訓練場へ着き、レイと別れるとエリクが駆け寄ってくる。
「ナオー!おはよう!!久しぶりだなあ」
ぎゅーっとバグをしてくる。
「エリク!もう体調は大丈夫?」
「あぁ!バッチ────」
言いかけて、エリクが顔を青くする。
どうしたんだろう?
ん?俺の後ろの方を見てる?
振り替えると、執務室へ向かったはずのレイが、足を止めてこちらを睨んでいる。
しかし、すぐに踵を返した。
「……団長に睨まれた。僕、休む前に何かやらかしたっけ?」
「あー、いや、多分俺」
練習場に来るまでは普通に接してくれたけど、やっぱり昨日の事が相当嫌だったのかも……。
「え?!ナオが?何したんだよ……」
「ちょっとな、」
俺は苦笑いをする。
「言いたくないなら、無理には聞かないけど……いつでも相談してくれよ?」
「うん、ありがとう」
流石に、昨日の事を話すことは出来ない。
親切なエリクには申し訳ないけど、今は誤魔化させて……。
エリクのいない数日間はロジャーと防御魔法の訓練をしていた。
その成果を見せるべく、俺に向かって攻撃をするようロジャーに頼んだ。
攻撃と行っても、以前俺のおでこにヒットしたあの玉を飛ばして貰うだけだけど。
俺は魔力を掌に集めると、自分の目の前に1平方メートル程のシールドを張る。
すると、ロジャーが魔力を乗せて放った玉がシールド目掛けて飛んでくる。
シールドと玉がぶつかり、お互いの力を相殺する様に張り合う。
しかし、俺が更に魔力を込めると玉は勢いを失い、床に転がった。
「……すごいじゃないか!!この前まで僕が軽く投げた玉を防ぐので精一杯だったのに!」
「ロジャーと特訓したんだ。だから、半分はロジャーのお陰」
「いや、俺は玉投げてただけだし……」
心なしか、ロジャーの頬が赤い気がする。
鱗に覆われた皮膚の色なんて分かるはずないのに。
「何か、妬けちゃうな~。もしかして、僕が居ない方が上達する?」
エリクがクスクスと笑いながら、そんな事を言う。
「冗談きついぜ。ナオの面倒をずっと見るのなんてゴメンだね」
「え、俺は結構楽しかったんだけど……」
「うっ」
「ナオは、僕よりロジャーがいいって?」
「ふふ、どっちも尊敬する師匠だよ」
「ロジャー、僕たち師匠だって」
また、エリクがクスクスと笑う。
あれ、師匠っておかしかったか?
「くそっ、……これからもたまには相手してやるよ」
「素直じゃないんだから、ふふっ。ナオ、改めてこれからもよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
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