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風呂を済ませた俺は、ティーセットを持ってレイの部屋を訪ねた。
メグさんの紅茶があるってだけで何だか心強い。
「レイ、俺だけど…」
「あぁ、入ってくれ」
ドアを開けて部屋に入ると、レイが資料を片手に俺を待っていた。
「ナオ、こっちに」
見ていた資料を片付けると、レイが自分の座るソファーの隣をポンポンと叩く。
俺はそろそろとレイの所まで行くと、目の前のテーブルにティーセットを置いた。
「わざわざ持ってきたのか?」
「うん、自分で淹れたい気分なんだ」
俺はパジャマのポケットから小さな缶を取り出し、その中身をティーポットに入れる。
魔力でお湯を沸かすと、ティーポットに注いだ。
あれ、メグさんの店で淹れてもらった時よりも香りが甘い気がする……?
「変わった匂いの紅茶だな」
「うん、リラックス効果があるってメグさんからもらったんだ」
やっぱり気のせいかな?
同じ物のはずだし。
「……なぜ、待ってなかったんだ?」
紅茶を蒸らしていると、レイから話題が振られる。
やっぱり、その話だよね……。
「暇過ぎたんだ。大事な会議って言ってたから長くなると思ったし。それに、魔力の制御が前より出来るようになって、変化も安定してきた。別に一人で行動しても良いかなって」
「それなら、屋敷に帰るだけでも良かったんじゃないか?」
「暇だなって思ったとき、メグさんの店にある沢山の植物を思い出したんだ。そしたら、無性に行きたくなった」
嘘は、付いてない。
俺はそう思いながら2つのカップに紅茶を注ぐ。
1つをレイの前に置き、もう1つは自分前に置いた。
もっと考えてから行動しろって怒られるかな……。
「なるほど。今度から執務室に何か暇潰しになるものを置くか……」
「え?怒らないの?」
「ああ」
「なんで?」
「急に待たせたのは私だし、そもそも1人が良くない理由を説明してなかったからな」
「理由?そんなの俺が未熟だからじゃないの?」
「それもあるが、一番はお前の魔力の多さだ。魔力が多い者は高値で売れる。それを目当てに、お前を拐おうと考える奴だっているんだ。命の売買は禁止されているが、それは表での話。裏では……」
一気に背筋が寒くなる。
俺、売られてたかもしれないじゃん。
それで、人間だってバレたらもっとヤバいことになって……。
「分かったなら、今後は1人で出歩かないでくれ」
そういってレイが苦笑いをした。
俺は気分を落ち着かせるために、行儀が悪いと思いつつもガブガブと紅茶を飲む。
「もっと早くに説明するべきだったな、すまない」
「いや、謝んないでよ、レイは悪くない!俺の方こそ勝手なことしてごめん!」
勢いよく謝った俺の頭をレイが撫でてくれる。
嬉しくて顔が緩んでしまうが、それを隠す気はもう無かった。
変に誤魔化しても不自然なだけだし、メグさんも最初から上手く隠すのは無理だって言ってた。
今は迷惑をかけない程度に抑えられればいいよね。
そんな事を考えながら撫でられるのを堪能していると、レイの手が離れていってしまう。
もっと撫でて欲しかったなあ。
俺は空になっていたカップに紅茶を注ぎ、一口飲む。
さっきも思ったけど、やっぱり味が違うような……。
それにしても、この部屋暑すぎないか?
暖房とか付いてるのかな?
「レイこの部屋暑くない?」
「そうか?私は適温だと思うが」
「俺だけか」
俺は袖を巻くって、首もとのボタンを開ける。
やっぱり暑い。
それに、頭がぼーっとする。
「それで、本題なんだが……ってナオ、大丈夫か?」
「ぅん?」
レイが俺の頬に手を当てて顔を覗き込んでくる。
気持ちいい……。
もっと触って欲しくて、俺は頬を擦り寄せる。
「レイぃ、もっと……」
「っ、………ナオ、この紅茶本当にメグさんからもらったものなんだな?」
「ぅん、そうだよ?」
「いや、でもこれ以外考えられないし……」
レイが何かごにょごにょと言っているが、そんな事よりもっと触って欲しい。
俺はすがり付くみたいにレイの首に腕を絡めた。
メグさんの紅茶があるってだけで何だか心強い。
「レイ、俺だけど…」
「あぁ、入ってくれ」
ドアを開けて部屋に入ると、レイが資料を片手に俺を待っていた。
「ナオ、こっちに」
見ていた資料を片付けると、レイが自分の座るソファーの隣をポンポンと叩く。
俺はそろそろとレイの所まで行くと、目の前のテーブルにティーセットを置いた。
「わざわざ持ってきたのか?」
「うん、自分で淹れたい気分なんだ」
俺はパジャマのポケットから小さな缶を取り出し、その中身をティーポットに入れる。
魔力でお湯を沸かすと、ティーポットに注いだ。
あれ、メグさんの店で淹れてもらった時よりも香りが甘い気がする……?
「変わった匂いの紅茶だな」
「うん、リラックス効果があるってメグさんからもらったんだ」
やっぱり気のせいかな?
同じ物のはずだし。
「……なぜ、待ってなかったんだ?」
紅茶を蒸らしていると、レイから話題が振られる。
やっぱり、その話だよね……。
「暇過ぎたんだ。大事な会議って言ってたから長くなると思ったし。それに、魔力の制御が前より出来るようになって、変化も安定してきた。別に一人で行動しても良いかなって」
「それなら、屋敷に帰るだけでも良かったんじゃないか?」
「暇だなって思ったとき、メグさんの店にある沢山の植物を思い出したんだ。そしたら、無性に行きたくなった」
嘘は、付いてない。
俺はそう思いながら2つのカップに紅茶を注ぐ。
1つをレイの前に置き、もう1つは自分前に置いた。
もっと考えてから行動しろって怒られるかな……。
「なるほど。今度から執務室に何か暇潰しになるものを置くか……」
「え?怒らないの?」
「ああ」
「なんで?」
「急に待たせたのは私だし、そもそも1人が良くない理由を説明してなかったからな」
「理由?そんなの俺が未熟だからじゃないの?」
「それもあるが、一番はお前の魔力の多さだ。魔力が多い者は高値で売れる。それを目当てに、お前を拐おうと考える奴だっているんだ。命の売買は禁止されているが、それは表での話。裏では……」
一気に背筋が寒くなる。
俺、売られてたかもしれないじゃん。
それで、人間だってバレたらもっとヤバいことになって……。
「分かったなら、今後は1人で出歩かないでくれ」
そういってレイが苦笑いをした。
俺は気分を落ち着かせるために、行儀が悪いと思いつつもガブガブと紅茶を飲む。
「もっと早くに説明するべきだったな、すまない」
「いや、謝んないでよ、レイは悪くない!俺の方こそ勝手なことしてごめん!」
勢いよく謝った俺の頭をレイが撫でてくれる。
嬉しくて顔が緩んでしまうが、それを隠す気はもう無かった。
変に誤魔化しても不自然なだけだし、メグさんも最初から上手く隠すのは無理だって言ってた。
今は迷惑をかけない程度に抑えられればいいよね。
そんな事を考えながら撫でられるのを堪能していると、レイの手が離れていってしまう。
もっと撫でて欲しかったなあ。
俺は空になっていたカップに紅茶を注ぎ、一口飲む。
さっきも思ったけど、やっぱり味が違うような……。
それにしても、この部屋暑すぎないか?
暖房とか付いてるのかな?
「レイこの部屋暑くない?」
「そうか?私は適温だと思うが」
「俺だけか」
俺は袖を巻くって、首もとのボタンを開ける。
やっぱり暑い。
それに、頭がぼーっとする。
「それで、本題なんだが……ってナオ、大丈夫か?」
「ぅん?」
レイが俺の頬に手を当てて顔を覗き込んでくる。
気持ちいい……。
もっと触って欲しくて、俺は頬を擦り寄せる。
「レイぃ、もっと……」
「っ、………ナオ、この紅茶本当にメグさんからもらったものなんだな?」
「ぅん、そうだよ?」
「いや、でもこれ以外考えられないし……」
レイが何かごにょごにょと言っているが、そんな事よりもっと触って欲しい。
俺はすがり付くみたいにレイの首に腕を絡めた。
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