21 / 34
21.
しおりを挟む
「ナオ様っ!?おかえりなさいませ」
「ただいま……?」
出迎えてくれたジョンさんが珍しく慌てている。
「ナオ様、帰ってくる途中でレイモンド様にお会いしませんでしたか?」
「え、レイと?会ってないよ」
「そうですか、入れ違いになってしまいましたね……」
ジョンさんが苦笑いする。
「入れ違い?」
「先程、レイモンド様は慌てた様子でお戻りになられたのですが、ナオ様がまだ戻ってないと知るなり急いで出ていかれたのです」
うわぁ、俺すごく心配かけちゃったんじゃ……。
慌ててメグさんの店に向かうレイを想像して申し訳なくなる。
帰ってきたらすぐに謝ろう。
「ジョンさん、俺──」
バンッ!!
俺がジョンさんに説明しようとした時、勢い良く玄関の扉が開かれた。
「ナオ!!」
叫ぶようにして俺の名前を呼ぶと、すごい形相でレイがこちらにやってくる。
あまりの迫力に俺は顔を上げられない。
絶対怒ってる……。
と、とりあえず謝らなきゃだよな?
「レイ、あの、ごめ──」
だけど、俺のしどろもどろな謝罪は最後まで言わせてもらえなかった。
体が力強い腕に引き寄せられ、抱き締められる。
驚いて顔を上げようとしだが、頭を手で押さえられていて出来ない。
「よかった……」
レイの声が耳の直ぐ近くで聞こえた。
本当に安堵したような声色に申し訳なさが増す。
密着したレイの体は熱く、鼓動も速い。
走って屋敷とメグさんの店を往復して来たのかもしれない。
「レイ、心配かけてごめん」
「全くお前はっ……」
俺を抱き締める力が更に強くなった。
「レ、レイちょっと苦しいからっ」
レイが体を離すと俺の全身を見る様に視線を動かす。
「何もなかったか?」
「うん」
「怪我もしてないか?」
「大丈夫だよ」
「変な奴に声をかけられなかったか?」
「かけられてない」
「道に迷わなかったか?」
「迷ってない」
一通り質問されると、レイに再び抱き締められる。
さっきまでは、申し訳ないとか怒らせたとかそういう気持ちが勝ってたけど、今はドキドキしてる。
俺、やっぱりレイが好き。
何でもないみたいにするのなんてやっぱり無理だよ。
俺は、躊躇しながらもレイを抱き締め返した。
一瞬レイの体が固くなる。
しかし、直ぐに俺を抱き締める力を強くした。
さっきよりも苦しくなくて、加減してくれたのだと分かる。
「レイ、本当にごめん」
「あぁ……でも、お前が無事なら良い」
・
・
・
「ナオ、話がしたいから寝る前に私の部屋に来てくれ」
いつもより遅めの夕食を摂った後に、レイから言われた。
今日の事、怒られないはずがないよね……。
「うん、分かった」
落ち着けるようにメグさんからもらった紅茶を用意していこう。
そう思った俺はレイと分かれた後、ジョンさんにティーセットを用意してもらい、お茶の淹れ方を簡単に教えてもらった。
「ただいま……?」
出迎えてくれたジョンさんが珍しく慌てている。
「ナオ様、帰ってくる途中でレイモンド様にお会いしませんでしたか?」
「え、レイと?会ってないよ」
「そうですか、入れ違いになってしまいましたね……」
ジョンさんが苦笑いする。
「入れ違い?」
「先程、レイモンド様は慌てた様子でお戻りになられたのですが、ナオ様がまだ戻ってないと知るなり急いで出ていかれたのです」
うわぁ、俺すごく心配かけちゃったんじゃ……。
慌ててメグさんの店に向かうレイを想像して申し訳なくなる。
帰ってきたらすぐに謝ろう。
「ジョンさん、俺──」
バンッ!!
俺がジョンさんに説明しようとした時、勢い良く玄関の扉が開かれた。
「ナオ!!」
叫ぶようにして俺の名前を呼ぶと、すごい形相でレイがこちらにやってくる。
あまりの迫力に俺は顔を上げられない。
絶対怒ってる……。
と、とりあえず謝らなきゃだよな?
「レイ、あの、ごめ──」
だけど、俺のしどろもどろな謝罪は最後まで言わせてもらえなかった。
体が力強い腕に引き寄せられ、抱き締められる。
驚いて顔を上げようとしだが、頭を手で押さえられていて出来ない。
「よかった……」
レイの声が耳の直ぐ近くで聞こえた。
本当に安堵したような声色に申し訳なさが増す。
密着したレイの体は熱く、鼓動も速い。
走って屋敷とメグさんの店を往復して来たのかもしれない。
「レイ、心配かけてごめん」
「全くお前はっ……」
俺を抱き締める力が更に強くなった。
「レ、レイちょっと苦しいからっ」
レイが体を離すと俺の全身を見る様に視線を動かす。
「何もなかったか?」
「うん」
「怪我もしてないか?」
「大丈夫だよ」
「変な奴に声をかけられなかったか?」
「かけられてない」
「道に迷わなかったか?」
「迷ってない」
一通り質問されると、レイに再び抱き締められる。
さっきまでは、申し訳ないとか怒らせたとかそういう気持ちが勝ってたけど、今はドキドキしてる。
俺、やっぱりレイが好き。
何でもないみたいにするのなんてやっぱり無理だよ。
俺は、躊躇しながらもレイを抱き締め返した。
一瞬レイの体が固くなる。
しかし、直ぐに俺を抱き締める力を強くした。
さっきよりも苦しくなくて、加減してくれたのだと分かる。
「レイ、本当にごめん」
「あぁ……でも、お前が無事なら良い」
・
・
・
「ナオ、話がしたいから寝る前に私の部屋に来てくれ」
いつもより遅めの夕食を摂った後に、レイから言われた。
今日の事、怒られないはずがないよね……。
「うん、分かった」
落ち着けるようにメグさんからもらった紅茶を用意していこう。
そう思った俺はレイと分かれた後、ジョンさんにティーセットを用意してもらい、お茶の淹れ方を簡単に教えてもらった。
0
お気に入りに追加
509
あなたにおすすめの小説
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~
m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。
書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。
【第七部開始】
召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。
一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。
だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった!
突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか!
魔物に襲われた主人公の運命やいかに!
※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。
※カクヨムにて先行公開中
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞

僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる