異世界転移したら獣人騎士団長に拾われました。

どらいもなか

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19.(レイモンドside)

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~レイモンドside~

訓練場の執務室で、ナオに発情期について聞かれた時は驚た。
獣人の世界で発情期が来ているのか聞くことは、その相手と交尾がしたいと言っているようなものだ。
人間のナオは知らずに聞いているのだろうが、その質問をされて体が熱くなるのを感じた。

しかし、ナオが発情期について知っている事を疑問に思う。

誰から発情期の事を聞いたんだ?

「あー、えーと、団員たちが話してたのをたまたま聞いちゃって」

右頭上のに視線をやりながら、ナオが答える。

──嘘だな。

隠さなくてはならない理由でもあるのだろうか?
追及したいが、ナオが嫌がる事はなるべくしたくない。
話を終わらせようとするナオに、仕方なく乗ることにした。



屋敷に帰ってからは、更にナオの様子がおかしい。
部屋に閉じ籠ってしまい、夕食の時にも出てこない。
体調が悪いと言っているが、それが仮病だと私は知っている。
おそらくジョンも気が付いているだろう。
獣人は感覚が鋭い。もし、体調が悪いとしたら匂いや雰囲気で分かるのだ。

体調不良ではないのに、閉じ籠るなんて何か悩みでもあるのではないかと心配になる。
部屋を訪ねるがナオは入れてくれない。

1人になりたいときもあるかと思い、その夜は詮索しなかった。





早朝、何やら浴室の方から物音が聞こえ、目が覚めた。
こんな時間に浴室を利用する者はいないし、清掃をするのも昼間だ。

私は階段を降り様子を見に行く。

浴室の前まで来ると、予想していた人物が中にいるのだと分かった。
膨大な魔力の気配とそれから、うっすらと漂う香りのようなもの。
甘いような、ずっと嗅いでいられるような、そんな表現し難いものを、ナオは纏っている。

このまま待っていれば、顔を見ることが出来るだろうか?
私は廊下の壁に寄りかかり、ナオが出てくるのを待った。





浴室から出てきたナオに声をかけるが、俯いたままだ。
顔が見たくて、上を向かせる。

濡れた髪からは水が滴り、頬や唇が赤く色付いている。

思わず何かを口走りそうになったが、ぐっと抑えた。

「顔が赤い。やはり、体調が…」

体調不良特有の香りや雰囲気はしないものの、本当に熱でもあるのではないだろうか?

「そんなことないから!お風呂上がりで血行が良くなってるだけ!」

勢い良くナオが言った。

そうか、血行か。酒を飲んだときも赤くなっていたし、ナオは血の巡りが良い方なのかもしれない。







騎士団での一日を終え、終業の見回りに行った後に急な会議が入ったと連絡があった。

今日は帰ってからナオと話をしようと思っていた。
それに、口を割らないようなら、酒でも飲ませようと考えていたのだ。

私は大事な会議だと分かりつつも、早く帰りたい気持ちを抑えきれずにいた。



「団長、行きますよ」

フレッドが執務室に私を迎えに来る。

「あぁ、待ってくれ。会議で遅くなることをナオに伝えてくる」
「そんなこと、誰か他の団員に伝言を頼めば良いじゃないですか」
「いや、私がナオに会いたいんだ」
「……はぁ、全く。早くしてくださいね」

私は勢い良くドアを開け、駆け出そうとする。
しかし、何かにぶつかった。

「ぉわっ」
「っ、すまない急いでいて……ってナオか、丁度良かった」

ナオに急な会議が入った事を伝えると、ここで待っていればいいかと聞かれた。
そもそも1人で帰す気はなかったが、ナオから待つという考えが出てきたことが嬉しかった。



フレッドにはああ言われたが、やはり早く会議を終わらせてくる。

私は意気込んで会議へと向かった。
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