異世界転移したら獣人騎士団長に拾われました。

どらいもなか

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カーテンの隙間から見える外が、だんだんと明るくなってきた。
もうすぐ太陽が顔を出すのだろう。

こっちの世界に来てから夜はぐっすりだった俺だが、全然眠れなかった。

あの後、レイと顔を合わせる気になれなくて俺は部屋に籠った。
夕飯の時間にジョンさんが呼びに来てくれたけど、調子が悪いからと断った。
心配したレイが様子を見に来たけれど、うつすと悪いからと理由を付けて部屋に入れなかった。

風呂に入っていないから体がベタベタして気持ちが悪い。
朝食の時間までまだあるし、シャワーでも浴びて来よう。
そう思った俺は部屋を出た。




結局、シャワーだけでなく湯船にも浸る事にした。
冷めていた湯も、魔術で丁度良く温度を調節出来る。
温かい湯に浸かって癒されたい気分になったのだ。

「ふぅ」

湯船に入ると息をつく。
このままレイを避けるのは無理だし、それに急に変な態度を取るのは失礼だ。
騎士団での訓練だって休む訳にはいかない。

気持ちを切り替えて、今までと同じように振る舞わないと……!

俺は両手で頬を叩いた。




少しだけ晴れた気分で浴室を出る。
しかし、直ぐにレイの姿が目に入り、自然と体に力が入ってしまう。
壁に寄り掛かかっていたレイは、俺が出てきたことに気がつくとこちらに寄ってくる。

咄嗟に、俺は頭に掛けていたタオルで顔を隠すように俯いてしまう。
さっき、気持ちを切り替えるって決めたばかりなのに……。

「おはようナオ、体調はどうだ?」
「お、おはよう、もう平気」

まだ結構早い時間だぞ、なんでいるんだ?
レイはいつもこんなに早起きなのか?

「随分早起きなんだ、ね?」

俺は目線を下げたままレイに聞く。

「あぁ、浴室の方から物音が聞こえたからな。ナオがいるんじゃないかと思って起きてきたんだ。いつもはこんな早くに起きていない」

レイがタオルの中に手を入れてきて、俺の頬を撫でる。

ドキッと心臓が跳ねるのが分かる。
好きだと自覚したら、仕方がなく意識してしまう。
俺が動けないでいると、頬を撫でていた手が俺の顎に移動し、そのまま顔を上げさせられる。
レイと目が合い、余計に顔が熱くなった。

「顔が赤い。やはり、体調が…」
「そんなことないから!お風呂上がりで血行が良くなってるだけ!」
「それなら良いのだが、」
「っ~~」

俺はもう限界で叫びそうだった。
だけど、どうにか耐える。

「っレイ、俺、ちょっと、部屋に戻るっ」

切れ切れに言うと、レイの手から逃れる。

「あぁ、湯冷めしてしまうな。気が利かなくてすまない」
「いや、全然、それじゃまたっ」

それだけ言うと、俺は足早に部屋へと戻った。




それからジョンさんに呼ばれて朝食を摂り、レイと一緒に騎士団の訓練場に向かった。

朝食を食べる時も、訓練場に向かう間も極めて平常を装った、……つもり。

叶わないと分かっているのに、好きだと思ってしまうことは辛い。
それに、レイの言動にいちいち反応してしまうのはどうにもならない。

上手く振る舞うには、もう少し時間がかかりそうだ……。


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