異世界転移したら獣人騎士団長に拾われました。

どらいもなか

文字の大きさ
上 下
15 / 34

15.

しおりを挟む
騎士団での訓練を始めてから早くも1週間程が経った。
今は朝礼中で、レイが団員たちに連絡事項を伝えている。

「──それから、今日はエリクが体調不良で休みだ」

エリクが体調不良…。
確かに今朝は姿を見ないと思っていたけど、大丈夫かな?

「ロジャー、エリクに代わってナオのことを頼む」
「はい」
「それでは、解散」



俺は魔術師たちが使うホールに移動する途中、ロジャーにエリクのことを聞いてみた。

「ロジャー、エリク大丈夫かな?」
「あー心配いらねぇよ。多分アレだから数日したら出てくる」
「アレ?」
「ん?あぁ、ナオは人間だから知らねぇのか」

人間だから知らない?何だ?

ロジャーが俺に顔を近付けて来て、こそこそと小声で話す。

「アレってのは、あんまり大きい声で言えねぇんだが、その……発情期のこと、だ」
「は、発じょぅ、むぐっ!」
「ばっか!声がデケェ!!」

慌てたロジャーが俺の口を塞ぎ、シーと人差し指を立てるジェスチャーをする。
ロジャーの手は大きいので鼻も一緒に塞がれて息が苦しい。
俺は、早く離してほしくて激しく頷く。
俺の必死な様子にロジャーは慌てて手を離した。

「すまねぇ、でも獣人にとっては結構デリケートな話なんだ」
「はぁ、はぁ、俺こそ、ごめん」

周囲を見渡し、他の獣人と距離があることを確認するとロジャーが話を続ける。

「獣人には月に一回発情期が来る。薬で症状を抑えることも出来るから、普通に仕事や学校に行ける奴もいる。反対に、薬でも抑えられないくらい強い症状が出る奴もいるんだ。兎の獣人は症状が強い奴が多いからな、エリクも多分そうだ」
「なるほど、」
「大抵の奴に来ることだから発情期の事はみんな知ってる。だけど、大っぴらにしたがる奴はなかなかいなんだ」
「そう、なんだ」

大抵のって事は多分レイにも来るってことだよね?
俺がレイと出会ってから1か月以上経つはずだけど、全然気が付かなかった。

そんな事を考えているとホールに着き、再び小声に戻ってロジャーが言う。

「ナオ、発情期について他にも気になることがあるかも知れねぇが、俺には聞かないでくれ。…団長に何言われるか分かんねぇ」

下まぶたを持ち上げるようにして苦い顔をした。

「分かった。色々教えてくれてありがと」

俺も釣られて苦笑いをし、この話はお仕舞いになった。







終業の時間になり、レイが見回りにやって来る。

「あれ?もうそんな時間?」

今日は時間が経つのが早く感じる。
切り替えて、集中したつもりだったけど頭のどこかで発情期の事を考えてしまっていたからかな。

レイが団員たちに終業を知らせ、俺も片付けを始める。
すると、ロジャーが寄って来た。

「ナオ、くれぐれも俺が話したって事は団長に言わないでくれよ!」

小声でそれだけ言うと、そそくさと自分の片付けに戻る。





片付けが終わると、いつも通り執務室へ行きレイの仕事が終わるまでソファーで待つ。

待っている間もやっぱり考えてしまう。
レイの発情期が来ていたのか気になるのだ。
俺がこの世界に来てから、殆んど毎晩魔術制御の訓練をレイとしていた。
レイの症状が強くないとしても、全く分からないなんて事があるのだろうか?

……レイの仕事が終わったら聞こう。
あまり聞かない方が良い話なのかもしれないけど、気になって訓練に集中出来ないのは良くない。

俺はそう決心してレイの仕事が終わるのを待った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。 書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。 【第七部開始】 召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。 一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。 だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった! 突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか! 魔物に襲われた主人公の運命やいかに! ※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。 ※カクヨムにて先行公開中

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

処理中です...