異世界転移したら獣人騎士団長に拾われました。

どらいもなか

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「ナオ、帰りに寄りたい店があるのだが、いいか?」
「もちろん」 



・ 

しばらく歩くとレイは一軒の花屋の様な店に入った。 

「メグさん、お久しぶりです」 

バケツを運ぶ店員にレイが声をかける。 

「あら~レイちゃんじゃない!久しぶりね~」 

そう言うと店員はバケツを置き、こちらにやって来た。
くるくるした白い毛につぶらな瞳の少しふっくらとした女性だ。
羊の獣人だろうか。 
それにしても"レイちゃん"って。

「お変わり無いようで何よりです」
「お陰さまでっ」 

そう言うと片手を招くような仕草をする。 


「ナオ、こちらはマーガレットさんだ」

レイが敬語なんだから、俺も敬語を使った方がいいよな? 

「はじめまして、ナオです」 

俺はフードを外し挨拶をすると、小さくお辞儀をした。

「はじめましてナオちゃん!私のことは気軽にメグって呼んでちょうだいねっ」 

ニコニコしながらマーガレットさんが言う。 


「マーガレットさ「んもう!メグ、よ!」 

俺の声を遮るようにマーガレットさん、改めメグさんが訂正を入れてくる。 

「メグさんはレイとどんな関係なんですか?レイは"レイちゃん"という感じではないと思うんですけど……?」 

「ふふっ、レイちゃんとはレイちゃんが子供の頃からのお付き合いなの」
「子供の頃よく屋敷を抜け出しててな、街をふらついていた時メグさんに声をかけられたんだ」
レイが懐かしそうに話す。 

「それから街へ来たときはいつもメグさんの店に行ったんだ。この店は沢山の植物があって面白いからな」 

そう言って店の植物に目線を向ける。
つられて俺も店を見渡すと、確かに見たこと無い植物がいっぱいだ。 

「懐かしいわね~。最近はなかなか姿を見せてくれないから心配してたのよ?」
「すみません、忙しくて」 

レイが苦笑いをする。
そんなレイを見て「まぁいいわ、今日来てくれたんだもの」とメグさんが微笑みながら言う。 

「それにしても、ナオちゃんはレイちゃんに似てるわね?息子?……にしては大きいわ」
「ぶふっ」 

レイが思わず吹き出す。
息子って……流石にそれはショックだよ。 

「ははっ、流石にそれは違いますよ」
「あら、じゃぁ弟さん?」
「そんなところです」 

笑いを抑えられないままレイが言う。 

「あら、内緒なのね?騎士団長さんにもなると秘密が多いってことかしら」 

ふふふとメグさんが笑う。 


「ナオちゃん、レイちゃんは優しくしてくれるかしら?」
「はい、俺には勿体無いくらい良くしてもらってます!」
「それなら良かったわぁ、レイちゃんはちょっと不器用なんだもの」 

レイが気まずそうに視線をそらす。
「そんなことは……」 

レイを不器用だと思ったことはあまり無いけど……子供の頃はそうだったのかな? 

「ふふ、そう言うことにしておいてあげるわ。それで、何か欲しいものがあって来たんじゃないの?」 

メグさんが営業スマイルで言う。 

「そうですね、それじゃあ──」

レイがいくつかの植物を注文した。



「はい、これで全部かしら?」
「ありがとうございます」
「たまには顔を見せに来てちょうだいね。ナオちゃんもまた来てね」



俺たちが店を出る頃には空が夕焼けに染まっていた。 

「メグさんっていい人だね」
「ああ、だからお前にも紹介したかったんだ」

俺にフードを被せて頭をぽんぽんと撫でる。

レイが子供の頃の話、いつか聞けたらいいな。
そんなことを思いながら、たいしてずれていないフードの位置を直した。
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