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第一章
第8話 吸血禁止のパーティー①
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(僕もいつかシオン先生に褒めてもらいたい)
そんな気持ちを抱えつつ、がむしゃらに勉強を続けていたある日。お父様からうれしいお知らせがあった。
「え、僕もニンゲンのパーティーに行っていいんですか?」
「お前ももう10歳だからな。前から行きたいと言っていたのに待たせて悪かったね。色々と準備に手間取ってしまったんだ」
喜びを隠せない僕にお父様は優しく頷いた。
念願だったパーティーにようやく参加できることに興奮して、僕はパーティー前日の朝なかなか眠れなかった。
夜になると、眠い目をこすりながら打ち合わせ通りドレスルームに向かう。パーティーの準備をするためだ。寝不足でクマができた顔を見てお母様が、「こんなことなら行く直前に伝えればよかったわね」とため息をついている。
お母様が選んでくださった服は、ヒラヒラレースのついた白いドレスシャツとグレーの半ズボン。そこに裏地が赤の黒マントを羽織ると、いつもより吸血鬼っぽくなった気がして鏡を何度も見てしまった。
右耳に金のイヤーカフ、マントには真紅の宝石がついたブローチ、左手首には金のブレスレットをつけて準備万端! となったところに、正装したお兄様たちが入ってきた。
(な、なんてかっこよさ!)
さっきまで自分もなかなかイケてるんじゃ、なんて考えていた自分がはずかしい。
あまりの神々しさに悶絶していると、ジュダ兄様がニタリと笑って僕の右耳を触った。
「あ、これ俺が誕生日にやったイヤーカフじゃねえか。庭でやったお茶会の時以来つけてるところを見なかったが、すげえ似合うぞ!」
「ありがとうございますジュダ兄様。無くしたら困るので、大事な時以外はつけないようにしてるんです」
「ジュダにいのも似合ってるけど、オレのあげたブローチも気品があっていいよな」
「はい。セイン兄様たちの目と同じ色の宝石、いつもながめてます」
「ジュダとセインのプレゼントも素敵だけど、私の贈ったブレスレットには特別な仕掛けがあるんだよ、ほら、こうやって鎖に飾りがつけられるようになっていてね」
そう言ってリエル兄様は上着のポケットからコロリと小さな金色の物体を取り出し、自分の手のひらに乗せた。なんだろうと思っていると、お兄様が僕のブレスレットにそれを取り付けてくれる。
(これはあの時お庭で見た星と月と薔薇……?)
「どうしても思い出を形にしたくて考えたんだ。全部純金だから少し重いかもしれないけれど、できたらずっとつけていてほしいな」
「金!? そんな高価なものをいただいていいんですか!?」
「もちろんだよ。アーシュのために用意したんだから」
シンプルなブレスレットだったものが、キレイな三つのチャーム付きブレスレットになったことでものすごくテンションが上がり、眠気も吹っ飛んだ。
玄関ホールには別のドレスルームで仕度を終えたルカがいた。白のドレスシャツと黒とピンクのチェックのズボンに身を包んだルカはいつも以上に愛らしい。そもそもお人形さんみたいに整った顔だから何を着ても可愛いけれど、フリルの多い服はことさらよく似合うと思った。
「なんでまだマントを着てねえんだ? 寒いぜ?」
「あ……ジュダ様、今着ようと思っていたんです。心配してくれてありがとうございます」
ルカが黒いマントを羽織ると同時に、お父様の元に執事がやってきた。馬車の準備が整ったことを伝えにきたらしい。
「さあ、行こうか。アーシュ、パーティーに行ったら絶対に私たちから離れてはいけないよ。多くの人間が集まるパーティーには我々以外の魔の者も集まるからな。特にルカくんとは必ず一緒に行動するようにしなさい」
「はい、わかりましたお父様」
「承知しました。伯爵様!」
外に出るとひんやり寒く、真っ暗な闇の中に馬のいななきが聞こえる。
「たくさんニンゲンがいるところに行くなんて、きんちょうするね。ダンスうまくできるかな?」
馬車乗り場への行き道、足元に気をつけながら隣を歩くルカに話しかけると、彼はそんなことよりも久しぶりに新鮮なニンゲンの血が吸えることが楽しみだと小声で返してきた。僕はまだ直接ニンゲンの血を吸ったことがないから、その気持ちはよくわからない。
(どんな味がするのだろう。ご飯の時に出される血は香りもいいしあまくておいしいけれど、あれよりもっとおいしいのかな?)
すると、まるで僕の頭の中を読み取ったかのように、お父様が一言付け加えた。
「そうそう言い忘れていたが、アーシュとルカ君は今日のパーティー中に吸血するのは禁止だ。初めての場所でうっかり粗相をしてはいけないからね。狩りをするのはもう少し社交界に慣れてからにしよう」
「「はい」」
不服そうに返事をするルカの横で、僕はちょっぴりホッとしていた。吸血練習は毎日しているけれど、まだ傷口を塞ぐことができないし、吸うのにも時間がかかる。完璧じゃないまま本番の狩りをするのは少し不安だったのだ。
「なあんだ。おいしい血が飲めないなんて残念だね」
「そうだね」
僕は自分の気持ちが顔に出ないように気をつけながら、こくんと頷くと馬車に乗り込んだ。
そんな気持ちを抱えつつ、がむしゃらに勉強を続けていたある日。お父様からうれしいお知らせがあった。
「え、僕もニンゲンのパーティーに行っていいんですか?」
「お前ももう10歳だからな。前から行きたいと言っていたのに待たせて悪かったね。色々と準備に手間取ってしまったんだ」
喜びを隠せない僕にお父様は優しく頷いた。
念願だったパーティーにようやく参加できることに興奮して、僕はパーティー前日の朝なかなか眠れなかった。
夜になると、眠い目をこすりながら打ち合わせ通りドレスルームに向かう。パーティーの準備をするためだ。寝不足でクマができた顔を見てお母様が、「こんなことなら行く直前に伝えればよかったわね」とため息をついている。
お母様が選んでくださった服は、ヒラヒラレースのついた白いドレスシャツとグレーの半ズボン。そこに裏地が赤の黒マントを羽織ると、いつもより吸血鬼っぽくなった気がして鏡を何度も見てしまった。
右耳に金のイヤーカフ、マントには真紅の宝石がついたブローチ、左手首には金のブレスレットをつけて準備万端! となったところに、正装したお兄様たちが入ってきた。
(な、なんてかっこよさ!)
さっきまで自分もなかなかイケてるんじゃ、なんて考えていた自分がはずかしい。
あまりの神々しさに悶絶していると、ジュダ兄様がニタリと笑って僕の右耳を触った。
「あ、これ俺が誕生日にやったイヤーカフじゃねえか。庭でやったお茶会の時以来つけてるところを見なかったが、すげえ似合うぞ!」
「ありがとうございますジュダ兄様。無くしたら困るので、大事な時以外はつけないようにしてるんです」
「ジュダにいのも似合ってるけど、オレのあげたブローチも気品があっていいよな」
「はい。セイン兄様たちの目と同じ色の宝石、いつもながめてます」
「ジュダとセインのプレゼントも素敵だけど、私の贈ったブレスレットには特別な仕掛けがあるんだよ、ほら、こうやって鎖に飾りがつけられるようになっていてね」
そう言ってリエル兄様は上着のポケットからコロリと小さな金色の物体を取り出し、自分の手のひらに乗せた。なんだろうと思っていると、お兄様が僕のブレスレットにそれを取り付けてくれる。
(これはあの時お庭で見た星と月と薔薇……?)
「どうしても思い出を形にしたくて考えたんだ。全部純金だから少し重いかもしれないけれど、できたらずっとつけていてほしいな」
「金!? そんな高価なものをいただいていいんですか!?」
「もちろんだよ。アーシュのために用意したんだから」
シンプルなブレスレットだったものが、キレイな三つのチャーム付きブレスレットになったことでものすごくテンションが上がり、眠気も吹っ飛んだ。
玄関ホールには別のドレスルームで仕度を終えたルカがいた。白のドレスシャツと黒とピンクのチェックのズボンに身を包んだルカはいつも以上に愛らしい。そもそもお人形さんみたいに整った顔だから何を着ても可愛いけれど、フリルの多い服はことさらよく似合うと思った。
「なんでまだマントを着てねえんだ? 寒いぜ?」
「あ……ジュダ様、今着ようと思っていたんです。心配してくれてありがとうございます」
ルカが黒いマントを羽織ると同時に、お父様の元に執事がやってきた。馬車の準備が整ったことを伝えにきたらしい。
「さあ、行こうか。アーシュ、パーティーに行ったら絶対に私たちから離れてはいけないよ。多くの人間が集まるパーティーには我々以外の魔の者も集まるからな。特にルカくんとは必ず一緒に行動するようにしなさい」
「はい、わかりましたお父様」
「承知しました。伯爵様!」
外に出るとひんやり寒く、真っ暗な闇の中に馬のいななきが聞こえる。
「たくさんニンゲンがいるところに行くなんて、きんちょうするね。ダンスうまくできるかな?」
馬車乗り場への行き道、足元に気をつけながら隣を歩くルカに話しかけると、彼はそんなことよりも久しぶりに新鮮なニンゲンの血が吸えることが楽しみだと小声で返してきた。僕はまだ直接ニンゲンの血を吸ったことがないから、その気持ちはよくわからない。
(どんな味がするのだろう。ご飯の時に出される血は香りもいいしあまくておいしいけれど、あれよりもっとおいしいのかな?)
すると、まるで僕の頭の中を読み取ったかのように、お父様が一言付け加えた。
「そうそう言い忘れていたが、アーシュとルカ君は今日のパーティー中に吸血するのは禁止だ。初めての場所でうっかり粗相をしてはいけないからね。狩りをするのはもう少し社交界に慣れてからにしよう」
「「はい」」
不服そうに返事をするルカの横で、僕はちょっぴりホッとしていた。吸血練習は毎日しているけれど、まだ傷口を塞ぐことができないし、吸うのにも時間がかかる。完璧じゃないまま本番の狩りをするのは少し不安だったのだ。
「なあんだ。おいしい血が飲めないなんて残念だね」
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僕は自分の気持ちが顔に出ないように気をつけながら、こくんと頷くと馬車に乗り込んだ。
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