1 / 1
お月見
しおりを挟む
僕は朝ごはんのパンに入っているポポの実をもぐもぐと食べ、もう一つほしいな~とクライスの方を見た。
クライスはもう慣れた様子で僕の口に実を近づける。ぱくり、もぐもぐもぐ、ん、おいし。
僕はにこりと笑った。
……そういえば、黄色くて丸いポポの実は、お月様に似ている。黒胡麻プリンにポポの実をのせたらほら、満月! みたいになるんじゃない? 僕が今度やってみよ、とほくそ笑んでいるとクライスが訝しげな顔をしてこちらを見ている。
あ、しまった、一人でにやけて変な奴だと思われている……? 僕は取り繕うように言った。
「あ、ポポの実がお月様に似ていると思って……」
僕がそう言うとクライスはそうか? という。そして、そういえば、今日は満月らしい、と言った。
「そうなの? お月様、この部屋から見えるかしら?」
「そうだな。寮のテラスに行けば見えるんじゃないか? あそこは見晴らしがいいし」
たしかにそうだ。寮生全員が自由に使えるようになっているテラスにいけば、間違いない。今日は天気もいいし!
「ね、クライス、お月見しよ」
「おつきみ? なんだそれ」
「んと、月を見ながらおだんご食べるの」
「団子……、ああ、ベルトの家で食べたやつか。いいな、それ。うまい団子を食べながらキルナと月を見るのか。やろう! 今日やろう!!」
ということで、僕はキッチンでお団子作り。
材料はベルトが持ってきてくれた。頼んですぐに持ってきてくれるなんて、さすが。
「頼まれた粉を持ってきました! でも、団子を持ってきた方がよかったのでは? 料理人を呼ぶ手間が省けますし」
「ん、だって、自分で作った方が雰囲気出るし」
「「え、キルナが作るのか?」」
クライスとベルトの声が重なった。え? ちょ、そんなにびっくりしないでよ。できるよ、お団子くらい。
「たしかにこの前いただいたクッキーはとてもおいしかったですし、期待できますね」
ベルトがそう言うとクライスが悲しそうに言った。
「クッキー……。俺も食べたかった」
そんなに? じゃあ、クッキーも作るよ。僕はうさぎのクッキーも追加で作ることにした。そこに、リリーがやってきた。ベルトが嬉しそうに何か持っていくのを見て、あとをつけてきたらしい。
「おいしそうな匂いがする!! あ、何これ。僕のクッキー!?」
「俺のだ」
「いえ、よく見てくださいクライス王子。こんなに可愛いうさぎの形をしているのですから、僕のに決まってます」
リリーがよくわからないことを言い出した。クライスは違う俺のだ、って怒っている。ん~もっといるのかな? じゃあ、もっと作るから、と食材をまたベルトに用意してもらって、朝に想像していた黒胡麻プリンのポポの実のせを作った。ん、いいかんじ。
夜、テーブルにお団子とススキ(っぽい草)と、うさぎのクッキーとプリンを並べ、紅茶を淹れる(残念、緑茶はなかった)。
クライスとリリーとベルトと僕の四人でテーブルを囲み、わいわいお月見。
「ちょっと、王子。お団子を食べ過ぎです。クッキーも」
「お前こそ。うさぎクッキーは12枚あるから一人3枚ずつだろ。なんで5枚取ってるんだ」
「食材を持ってきたのは俺様、いえ、わたしなので、ちょっとプリンは多めにいただきますね。このぷるんとした食感がたまりません!! 最高っ!」
ぎゃあぎゃあとうるさくって、なんだか思っていたお月見とはちょっと違う気がしたけど。楽しい……。
「ふふっ、ん~おいしっ、喜んでもらえてよかった。月も綺麗だし」
僕は満足して空を見上げた。やっぱりポポの実に似ているな、と思った。
クライスはもう慣れた様子で僕の口に実を近づける。ぱくり、もぐもぐもぐ、ん、おいし。
僕はにこりと笑った。
……そういえば、黄色くて丸いポポの実は、お月様に似ている。黒胡麻プリンにポポの実をのせたらほら、満月! みたいになるんじゃない? 僕が今度やってみよ、とほくそ笑んでいるとクライスが訝しげな顔をしてこちらを見ている。
あ、しまった、一人でにやけて変な奴だと思われている……? 僕は取り繕うように言った。
「あ、ポポの実がお月様に似ていると思って……」
僕がそう言うとクライスはそうか? という。そして、そういえば、今日は満月らしい、と言った。
「そうなの? お月様、この部屋から見えるかしら?」
「そうだな。寮のテラスに行けば見えるんじゃないか? あそこは見晴らしがいいし」
たしかにそうだ。寮生全員が自由に使えるようになっているテラスにいけば、間違いない。今日は天気もいいし!
「ね、クライス、お月見しよ」
「おつきみ? なんだそれ」
「んと、月を見ながらおだんご食べるの」
「団子……、ああ、ベルトの家で食べたやつか。いいな、それ。うまい団子を食べながらキルナと月を見るのか。やろう! 今日やろう!!」
ということで、僕はキッチンでお団子作り。
材料はベルトが持ってきてくれた。頼んですぐに持ってきてくれるなんて、さすが。
「頼まれた粉を持ってきました! でも、団子を持ってきた方がよかったのでは? 料理人を呼ぶ手間が省けますし」
「ん、だって、自分で作った方が雰囲気出るし」
「「え、キルナが作るのか?」」
クライスとベルトの声が重なった。え? ちょ、そんなにびっくりしないでよ。できるよ、お団子くらい。
「たしかにこの前いただいたクッキーはとてもおいしかったですし、期待できますね」
ベルトがそう言うとクライスが悲しそうに言った。
「クッキー……。俺も食べたかった」
そんなに? じゃあ、クッキーも作るよ。僕はうさぎのクッキーも追加で作ることにした。そこに、リリーがやってきた。ベルトが嬉しそうに何か持っていくのを見て、あとをつけてきたらしい。
「おいしそうな匂いがする!! あ、何これ。僕のクッキー!?」
「俺のだ」
「いえ、よく見てくださいクライス王子。こんなに可愛いうさぎの形をしているのですから、僕のに決まってます」
リリーがよくわからないことを言い出した。クライスは違う俺のだ、って怒っている。ん~もっといるのかな? じゃあ、もっと作るから、と食材をまたベルトに用意してもらって、朝に想像していた黒胡麻プリンのポポの実のせを作った。ん、いいかんじ。
夜、テーブルにお団子とススキ(っぽい草)と、うさぎのクッキーとプリンを並べ、紅茶を淹れる(残念、緑茶はなかった)。
クライスとリリーとベルトと僕の四人でテーブルを囲み、わいわいお月見。
「ちょっと、王子。お団子を食べ過ぎです。クッキーも」
「お前こそ。うさぎクッキーは12枚あるから一人3枚ずつだろ。なんで5枚取ってるんだ」
「食材を持ってきたのは俺様、いえ、わたしなので、ちょっとプリンは多めにいただきますね。このぷるんとした食感がたまりません!! 最高っ!」
ぎゃあぎゃあとうるさくって、なんだか思っていたお月見とはちょっと違う気がしたけど。楽しい……。
「ふふっ、ん~おいしっ、喜んでもらえてよかった。月も綺麗だし」
僕は満足して空を見上げた。やっぱりポポの実に似ているな、と思った。
69
お気に入りに追加
254
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
ヒロインの兄は悪役令嬢推し
西楓
BL
異世界転生し、ここは前世でやっていたゲームの世界だと知る。ヒロインの兄の俺は悪役令嬢推し。妹も可愛いが悪役令嬢と王子が幸せになるようにそっと見守ろうと思っていたのに…どうして?
彼はオレを推しているらしい
まと
BL
クラスのイケメン男子が、なぜか平凡男子のオレに視線を向けてくる。
どうせ絶対に嫌われているのだと思っていたんだけど...?
きっかけは突然の雨。
ほのぼのした世界観が書きたくて。
4話で完結です(執筆済み)
需要がありそうでしたら続編も書いていこうかなと思っておいます(*^^*)
もし良ければコメントお待ちしております。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
30歳まで独身だったので男と結婚することになった
あかべこ
BL
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。
キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者、の予定
当たって砕けていたら彼氏ができました
ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。
学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。
教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。
諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。
寺田絋
自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子
×
三倉莉緒
クールイケメン男子と思われているただの陰キャ
そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。
お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。
お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
嫌われ悪役令息に転生したけど手遅れでした。
ゆゆり
BL
俺、成海 流唯 (なるみ るい)は今流行りの異世界転生をするも転生先の悪役令息はもう断罪された後。せめて断罪中とかじゃない⁉︎
騎士団長×悪役令息
処女作で作者が学生なこともあり、投稿頻度が乏しいです。誤字脱字など等がたくさんあると思いますが、あたたかいめで見てくださればなと思います!物語はそんなに長くする予定ではないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
タイミングを外してしまいましたが、お月見企画楽しく読みました。
「ポポの実」という響きがたまらなく好きです💕
お菓子を作ったりお掃除したりちくちく刺繍をしたり、キルナの行動にはちゃんと前世の七海君の気配がしますね。
七海君は外で遊ぶことはできなかったけど、手を動かすことはたくさん知っていて、なんというかそこにご両親、主にお母さんでしょうか……の愛情を感じます(お話の本筋とは逸れてしまうんですが、七海君亡き後のご家族を想像すると😢)。
お月見の次はクリスマス? ばばん! とケーキを作ってまた4人でクリスマス会をして欲しいです🎂
お月見編も読んでくださりありがとうございます!ポポの実のおかげで、無事お月見のお話を書くことができました🌕
七海でもありキルナでもある、というのが転生ものの面白さだと思うので、そう感じていただけてすごくうれしいです!!クリスマスケーキ作りも楽しそう🎂また取り合いになってしまいそうですが(笑)感想ありがとうございます✨
面白かったです。お月見楽しそうですね
面白かったと言っていただけてうれしいです!みんな食いしん坊で、月を見ていたかどうかあやしいですが(笑)🍡感想ありがとうございます✨
みんな、仲良く4人でワイワイお月見してるなんて微笑まし過ぎる~🤣
本編でもこんなシーンがあったらいいなぁって思いました😚
たしかに本編ではまだみんなでわいわいシーンが書けてないですね!!今気づきました。そして書いてから、あ、ロイルのこと忘れてたな、と思いました(笑)感想ありがとうございます✨