271 / 287
第8章
第407話 ルーナの花探し⑤
しおりを挟む
「すごく綺麗なペンダント。こんなの貰っていいの? 中に何か入ってるみたいだけど……もしかして」
中身は薬だったりして?
僕の体が心配で、これをくれるっていうのだからその確率は高いよね。
うう、見た目は好きだけど大嫌いな薬を持ち歩く気にはならなくて、受け取るのを躊躇ってしまう。香水とかなら大歓迎なんだけど。
「これは~『ルーナのしずく』が入ったペンダントだよ。やみのまりょくをおさえるのはむりだけど~これでおなかのいたみをやわらげることができるよ~」
「ルーナの? い、いらない」
(薬じゃないけど、もっと恐ろしいものが入ってる!?)
闇の中で虹色に光る妖精たちと同じように神々しく金色に輝くペンダントはしずくの形をしていてとても美しい。妖精からの贈り物なんて、しかも痛みを和らげてくれる効果があるなんて、普通ならありがたく戴くところなのだろうけど、僕はペンダントから離れるように後ずさり絶対に受け取らないように手も後ろに隠した。
「どうして~? ちょびっとしかとれないのに~」
「おひめさまのために~ようせいおうがつくったのに~?」
「これのためにはやおきしたのに~?」
周りの妖精たちがやいやい文句を言い始めたけれど、こればっかりは受け取るわけにはいかない。
「だって『ルーナの雫』というくらいだし、花のエキスとかが入ってるんじゃないの? それって猛毒でしょ? 危険すぎるよ……」
(花びらと雫じゃ効果が違うかもしれない。でももしこれが僕以外の人の口に入ったら死ぬ、とかだったら?)
真っ先に頭に思い浮かんだのはユジンのハーブティーにキルナがルーナの花びらを仕込んで毒殺しようとするゲームのイベントだった。もちろんそんなことを絶対にするつもりはないけれど、イベントは勝手に起きる可能性がある。
今までも主要なイベントは起きていたし、つい最近だって、特に悪さをしていなくても僕はゲームのキルナと同じように学園で嫌われて悪口を言われまくっていた。
今では大好きなユジンにも避けられるようになってゲーム通りの展開に……(これは自業自得だけど)
ユジンを殺そうとする自分の姿を想像すると鳥肌がたった。同時に毒を飲んだ時の痛みと恐怖が鮮やかに蘇ってくる。
これで闇の魔力暴発問題が解決するならともかく、痛みを和らげるだけなんだったら契約するその日まで痛みを我慢していた方がマシ!
「毒は怖いの。痛いのは我慢できるから、それは持って帰って。お願い」
あまりに頑なな僕の態度を見て、ツインテールの妖精が困った顔で笑った。
「これはルーナのあさつゆをあつめたものだからひとのくちにはいってもどくにはならないよ~」
「え、そうなの?」
きちんと落ち着いて話を聞くと、毒になるどころか、人が摂取すると再生作用が働いて大きな怪我でもたちどころに治せるのだとか。使用方法は簡単で、お腹が痛い時に紅茶に入れて飲めばいいらしい。
ふむふむと詳しい説明を聞いている間に、妖精たちが恭しくそれを運び、僕の首にペンダントをかけてくれた。聞けば聞くほどすごい代物だった。妖精たちが毎日早起きしてルーナの花についた朝露を集めて作った『ルーナの雫』を早とちりして拒否したことを謝ると、彼らはコロコロと笑いながら僕の頬にキスをする。
「ありがとぅ」
「でもきをつけて~。ルーナのはなはね~、しきがちかづいたときにさくはなだから~」
え?
死期が近づいた時に咲く……って、どういうことだろう。そういえば前回ルーナの花を見たあと僕はお母様に殺されかけたのだった。
また何かが起きるの? いや、何もしなくても契約できなければもうすぐ死ぬけど、そのことを言ってるの?
「アレはきみのからだをねらってる。きをつけて~~~」
「ね、アレって何?」
聞いたけど返事はない。ピンクのツインテールの妖精はもういなかった。妖精だけじゃない。すぐ側にいたはずのクライスもいない。気づけば一人になっていて、真っ暗な中で彼の姿を探す。
「あれ。どこ!? どこにいったの!? クライス!!!」
中身は薬だったりして?
僕の体が心配で、これをくれるっていうのだからその確率は高いよね。
うう、見た目は好きだけど大嫌いな薬を持ち歩く気にはならなくて、受け取るのを躊躇ってしまう。香水とかなら大歓迎なんだけど。
「これは~『ルーナのしずく』が入ったペンダントだよ。やみのまりょくをおさえるのはむりだけど~これでおなかのいたみをやわらげることができるよ~」
「ルーナの? い、いらない」
(薬じゃないけど、もっと恐ろしいものが入ってる!?)
闇の中で虹色に光る妖精たちと同じように神々しく金色に輝くペンダントはしずくの形をしていてとても美しい。妖精からの贈り物なんて、しかも痛みを和らげてくれる効果があるなんて、普通ならありがたく戴くところなのだろうけど、僕はペンダントから離れるように後ずさり絶対に受け取らないように手も後ろに隠した。
「どうして~? ちょびっとしかとれないのに~」
「おひめさまのために~ようせいおうがつくったのに~?」
「これのためにはやおきしたのに~?」
周りの妖精たちがやいやい文句を言い始めたけれど、こればっかりは受け取るわけにはいかない。
「だって『ルーナの雫』というくらいだし、花のエキスとかが入ってるんじゃないの? それって猛毒でしょ? 危険すぎるよ……」
(花びらと雫じゃ効果が違うかもしれない。でももしこれが僕以外の人の口に入ったら死ぬ、とかだったら?)
真っ先に頭に思い浮かんだのはユジンのハーブティーにキルナがルーナの花びらを仕込んで毒殺しようとするゲームのイベントだった。もちろんそんなことを絶対にするつもりはないけれど、イベントは勝手に起きる可能性がある。
今までも主要なイベントは起きていたし、つい最近だって、特に悪さをしていなくても僕はゲームのキルナと同じように学園で嫌われて悪口を言われまくっていた。
今では大好きなユジンにも避けられるようになってゲーム通りの展開に……(これは自業自得だけど)
ユジンを殺そうとする自分の姿を想像すると鳥肌がたった。同時に毒を飲んだ時の痛みと恐怖が鮮やかに蘇ってくる。
これで闇の魔力暴発問題が解決するならともかく、痛みを和らげるだけなんだったら契約するその日まで痛みを我慢していた方がマシ!
「毒は怖いの。痛いのは我慢できるから、それは持って帰って。お願い」
あまりに頑なな僕の態度を見て、ツインテールの妖精が困った顔で笑った。
「これはルーナのあさつゆをあつめたものだからひとのくちにはいってもどくにはならないよ~」
「え、そうなの?」
きちんと落ち着いて話を聞くと、毒になるどころか、人が摂取すると再生作用が働いて大きな怪我でもたちどころに治せるのだとか。使用方法は簡単で、お腹が痛い時に紅茶に入れて飲めばいいらしい。
ふむふむと詳しい説明を聞いている間に、妖精たちが恭しくそれを運び、僕の首にペンダントをかけてくれた。聞けば聞くほどすごい代物だった。妖精たちが毎日早起きしてルーナの花についた朝露を集めて作った『ルーナの雫』を早とちりして拒否したことを謝ると、彼らはコロコロと笑いながら僕の頬にキスをする。
「ありがとぅ」
「でもきをつけて~。ルーナのはなはね~、しきがちかづいたときにさくはなだから~」
え?
死期が近づいた時に咲く……って、どういうことだろう。そういえば前回ルーナの花を見たあと僕はお母様に殺されかけたのだった。
また何かが起きるの? いや、何もしなくても契約できなければもうすぐ死ぬけど、そのことを言ってるの?
「アレはきみのからだをねらってる。きをつけて~~~」
「ね、アレって何?」
聞いたけど返事はない。ピンクのツインテールの妖精はもういなかった。妖精だけじゃない。すぐ側にいたはずのクライスもいない。気づけば一人になっていて、真っ暗な中で彼の姿を探す。
「あれ。どこ!? どこにいったの!? クライス!!!」
142
お気に入りに追加
10,375
あなたにおすすめの小説
嵌められた悪役令息の行く末は、
珈琲きの子
BL
【書籍化します◆アンダルシュノベルズ様より刊行】
公爵令息エミール・ダイヤモンドは婚約相手の第二王子から婚約破棄を言い渡される。同時に学内で起きた一連の事件の責任を取らされ、牢獄へと収容された。
一ヶ月も経たずに相手を挿げ替えて行われた第二王子の結婚式。他国からの参列者は首をかしげる。その中でも帝国の皇太子シグヴァルトはエミールの姿が見えないことに不信感を抱いた。そして皇太子は祝いの席でこう問うた。
「殿下の横においでになるのはどなたですか?」と。
帝国皇太子のシグヴァルトと、悪役令息に仕立て上げられたエミールのこれからについて。
【タンザナイト王国編】完結
【アレクサンドライト帝国編】完結
【精霊使い編】連載中
※web連載時と書籍では多少設定が変わっている点があります。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼毎週、月・水・金に投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます
瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。
そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。
そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。