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第8章
第405話 ルーナの花探し③
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引き続き光の道を歩く僕らはお互いに無言だった。何を話せばいいかわからなかったし、歩くスピードが早すぎてついてくので精一杯だった。いつもは僕の歩調に合わせてくれてたんだな、としみじみ感じる。
クライスはきっとすごく焦っているのだと思う。僕の余命はあと半年。時間があるとは言えない。痛みが増して体が少しずつ限界に近づいてきていることもさっきの妖精との会話でバレてしまったし、余裕がなくなるのは当然だよね。
汗ばんできた手に力を入れて、きゅうっと握る。彼もそれに応えるように握る力を強めた。
(俺を頼れ……か。昔から何度も言ってくれてるのに、また言わせちゃったな)
寿命や体のことに関しては花を見つけて妖精と契約を結ぶまで解決しそうにない。だけど“頼る”くらいなら、今すぐできなくもない気がする。
(でも具体的にどうやったらいい? 自分としては普段から割と頼ってる気もするんだけど、違うのかな?)
七海の頃は一人でできることがあまりにも少なくて、できるだけ人に頼らない方法ばかり探していたし、キルナになってからもその方針は変えないままだった。公爵家ではそもそも両親にはほとんど会えず、頼るとかいう次元じゃなかったし……
そんな自分にとって、人を頼るというのは結構ハードルが高いのかもしれない。
遅れないよう必死に歩いていると、左足の踵部分にピリッとした痛みを感じた。いつもならこれくらい我慢しようと頑張るところなんだけど、“一人で我慢する”のもNGらしいから、思ったことを口にしてみた。
「ねぇ、クライス、はぁはぁ。ごめん、悪いんだけどちょっと止まって」
「どうした?」
「僕……はぁ、はぁ、疲れたから、休んでいぃ?」
「いいぞ。あそこの木の陰で休もう」
立ち止まると、僕の足がよろよろしていることに気づいた彼が、光魔法の明かりに照らされた木の下に自分のラッシュガードを敷いて、その上に僕を座らせてくれた。
「悪い。花探しに夢中になっていて、歩くのが速すぎたな。足は痛くないか? 診てやるから足をここに置け」」
「あ、休めば大丈夫」という言葉を呑み込んで、代わりに「踵が痛いの、お願い」とサンダルを脱いで、隣に座った彼の膝に足を乗せた。
「ああ、これは確かに痛そうだな」
踵は靴擦れして赤くなり、水ぶくれができていて、思ったよりもやばそうだった。もっと悲惨なことになる前に言ってよかったと思う。
靴擦れ以外の、草やら何やらに当たってできた小さな傷も彼は見逃さず丁寧に治していく。治してもらっている間は、足先から太ももまで優しく触られることにドギマギして鼓動が速くなってしまい、何も話すことができなかった。
治療が終わるとクライスは僕の頭を撫で、「隠さずちゃんと言えてえらかったな」と褒めてくれた。それから、水を飲んで少し休むようにと言い、膝を貸してくれる。僕はありがたくそれを枕にごろんと寝転んで、目を瞑った。
(そっか、頼るってこんなかんじでいいのか。ふぁあ、ねむた……)
クライスの体温があったかいのと、結構歩いたことによる疲れと、撫でてくれる手の心地良さのせいで、意識が朦朧とする。ぼやけてきた意識の中に、波の音が……混じった。
「こっちだよ~」
聞き覚えのある妖精の声が聞こえる。この声は昔から温室とか静かな場所で妄想遊びをしていたときに、僕を呼ぶ声と同じだ。
そして、幼い頃、海で僕を呼んでいた声と同じ。
ザザーン……
波の音と共に聞こえる。いつもよりはっきりと。
「ルーナのはなをみつけて」
と彼女は言う。
クライスはきっとすごく焦っているのだと思う。僕の余命はあと半年。時間があるとは言えない。痛みが増して体が少しずつ限界に近づいてきていることもさっきの妖精との会話でバレてしまったし、余裕がなくなるのは当然だよね。
汗ばんできた手に力を入れて、きゅうっと握る。彼もそれに応えるように握る力を強めた。
(俺を頼れ……か。昔から何度も言ってくれてるのに、また言わせちゃったな)
寿命や体のことに関しては花を見つけて妖精と契約を結ぶまで解決しそうにない。だけど“頼る”くらいなら、今すぐできなくもない気がする。
(でも具体的にどうやったらいい? 自分としては普段から割と頼ってる気もするんだけど、違うのかな?)
七海の頃は一人でできることがあまりにも少なくて、できるだけ人に頼らない方法ばかり探していたし、キルナになってからもその方針は変えないままだった。公爵家ではそもそも両親にはほとんど会えず、頼るとかいう次元じゃなかったし……
そんな自分にとって、人を頼るというのは結構ハードルが高いのかもしれない。
遅れないよう必死に歩いていると、左足の踵部分にピリッとした痛みを感じた。いつもならこれくらい我慢しようと頑張るところなんだけど、“一人で我慢する”のもNGらしいから、思ったことを口にしてみた。
「ねぇ、クライス、はぁはぁ。ごめん、悪いんだけどちょっと止まって」
「どうした?」
「僕……はぁ、はぁ、疲れたから、休んでいぃ?」
「いいぞ。あそこの木の陰で休もう」
立ち止まると、僕の足がよろよろしていることに気づいた彼が、光魔法の明かりに照らされた木の下に自分のラッシュガードを敷いて、その上に僕を座らせてくれた。
「悪い。花探しに夢中になっていて、歩くのが速すぎたな。足は痛くないか? 診てやるから足をここに置け」」
「あ、休めば大丈夫」という言葉を呑み込んで、代わりに「踵が痛いの、お願い」とサンダルを脱いで、隣に座った彼の膝に足を乗せた。
「ああ、これは確かに痛そうだな」
踵は靴擦れして赤くなり、水ぶくれができていて、思ったよりもやばそうだった。もっと悲惨なことになる前に言ってよかったと思う。
靴擦れ以外の、草やら何やらに当たってできた小さな傷も彼は見逃さず丁寧に治していく。治してもらっている間は、足先から太ももまで優しく触られることにドギマギして鼓動が速くなってしまい、何も話すことができなかった。
治療が終わるとクライスは僕の頭を撫で、「隠さずちゃんと言えてえらかったな」と褒めてくれた。それから、水を飲んで少し休むようにと言い、膝を貸してくれる。僕はありがたくそれを枕にごろんと寝転んで、目を瞑った。
(そっか、頼るってこんなかんじでいいのか。ふぁあ、ねむた……)
クライスの体温があったかいのと、結構歩いたことによる疲れと、撫でてくれる手の心地良さのせいで、意識が朦朧とする。ぼやけてきた意識の中に、波の音が……混じった。
「こっちだよ~」
聞き覚えのある妖精の声が聞こえる。この声は昔から温室とか静かな場所で妄想遊びをしていたときに、僕を呼ぶ声と同じだ。
そして、幼い頃、海で僕を呼んでいた声と同じ。
ザザーン……
波の音と共に聞こえる。いつもよりはっきりと。
「ルーナのはなをみつけて」
と彼女は言う。
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