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第8章

第399話 主人公(弟)に謝りたい悪役令息①※

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ユジンに嫌われてしまった。それは悪役活動をする時に覚悟していたこととはいえ、やはり辛い。部屋に戻ってもず~んと落ち込んでいる僕に気を遣って、ロイルと ギアが良い香りのお茶やお菓子を用意してくれた。

「ごめんね二人とも、遅くまでユジン探しに付き合ってもらって。この後どこかにいく予定はないし、もう自分の部屋に帰っていいよ」

二人は一日中付きっきりで護衛してくれていたから全然休憩できていないはず。早く帰って休んでもらおうと思って声をかけたのだけど、ギアに「いえ、クライス様が帰るまでお傍にいます!」と即答されてしまった。

「どうか我々のことは気になさらず、ゆっくりお過ごしください」
「だけど……」

ロイルも、優しい口調ではあるものの部屋に戻る気はないようだ。

「んじゃあ、せめて立ってないでソファに座って。ね、一緒に宿題しよ」

ということで、立ったままの彼らを強引に座らせ、宿題と放課後の特訓でセントラから出された課題を片付けることになった。三人でソファテーブルを囲んで黙々と勉強する、というのはとくに面白いことではないけれど、嫌なこと(宿題)に集中することで、もっと嫌なこと(弟に避けられたこと)を忘れることができた。

奇抜な作戦は功を奏し、ちょっとだけ気持ちは浮上した気がする。さっさと宿題を終えた二人は僕が宿題を終えるのを静かに見守り、その後水魔法で浴槽に水を満たすという難しい課題をこなすのを手伝ってくれた。



ようやく課題が終わった頃、クライスが王宮から帰ってきた。

「すまない、遅くなった」
「あ、クライスおかえり。あのね、お風呂の用意ができてるからすぐ入れるよ」

自分の魔法でいっぱいにした浴槽を見てほしくて、さりげなく彼にお風呂をおすすめすると、なぜか一瞬空気がピリッとしたような気がした。

「……この二人の前で、俺がいない間に風呂に入ったのか?」
「ううん。まだだけど」

すると、ロイルが慌てたように説明を加えた。

「理事長の出した課題が水魔法で浴槽に水を満たすというものでしたので、ついでにその水を沸かし、風呂の用意をさせていただきました。もちろん我々だけの時に入っていただくつもりはなく……」
「ああなるほど、そういうことか。今日は遅くなったから用意してくれて助かる。キルナ、俺はこいつらと少し話がしたいから先に入ってこい」
「ん、わかった」


お湯にゆっくり浸かってから上がると、二人はもう部屋に戻っていた。クライスが交代でお風呂に入って、それから一緒にとろりと濃厚なチーズたっぷりのリゾットを食べる。

「ふぅ~ふぅ~。ん、これ口の中でお米がほどける。アツアツでおいしっ!」

チーズとバターの香るリゾットは、クリーミーで優しいお味。隠し味の白ワインがブイオンの香りを引き立て、それでいて黒胡椒が全体の味を引きしめ、最強の一品となっている。

「たしかに。これはうまいな」
「んぅ……?」

唇に押し付けられた柔らかい感触。

(って、それは僕のお口だってばぁ!)

「ぁん……んむ……っ……んんっ……」

一口食べた瞬間に、チーズ以上に濃厚なキスがはじまってしまった。こんなことしてたら冷めちゃうでしょ! と睨みつけると、名残惜しそうに唇が離れていく。それが寂しい……と思ってしまったのは秘密だ。

色っぽく濡れた彼の唇が気になるせいで、せっかくのリゾットの味がよくわからない。なんとか最後の一口を飲み込むと、見計らったようにベッドに運ばれた。今朝つけられた首筋の噛み痕にさらに噛みつかれ、味わうように舐められる。

「やぁ……そこ何回も噛まないで。痕がいっぱいついちゃう」
「風呂に入ってから身体が変なんだ。キルナの甘い魔力に包まれて、どうにかなりそうだ。お前の体からも甘くていい香りがする。食べたい……」

(お風呂のせいでおかしい? もしかして僕の魔力の水でお湯を沸かしたから?)

何やらいつも以上にギラギラした視線に身の危険を感じ、抵抗しようとするも、彼の剛力の前ではほとんど意味がない。さらりとあっけなくうさもこウェアのズボンが脱がされ、押し倒されてしまった。

ぬるんっ……。

アナルに彼の中指が入ってくる。いつの間にか準備されていたローションの滑りを借りてぬぷぬぷと往復するそれは、ふくりと膨らんだ前立腺を揉み込み、早急に僕を溶かしていく。

彼の指はもう僕の中を熟知しているらしく、迷いがない。中指に続いて人差し指も入り込み、二本の指で膨らみを挟むようにして揺らされると、そこからじんじんとあらがいがたい快楽が湧いてきて僕を襲った。

「んはああああああッ……あぁ……」

(やばい、このままじゃ指だけでイかされちゃうっ!)
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