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第8章

第388話 クライスSIDE 学友たちの報告

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キルナのことをノエルとリオンに頼み、生徒会室でいじめ騒動に関わった生徒たちのリストを見ながらギアとロイルの報告を聞く。

「大体片付いたな」
「一週間ほどかかりましたが、やっとですね」

ほっと安堵の息を吐くギア。正義感の強い彼は、今回の件にとてもいきどおっていた。

ずらりと並んだ名前に一通り目を通す。自分ともキルナとも普段あまり関わりがない人間が多い。無関係な人間が、よくもまぁ好き勝手に噂を流すものだと驚く。

「いじめに関わった人間はその度合いに応じて処分しました。今回は王家も調査に関わっているので処罰は比較的重いものになっています。ただ、噂を流しはじめたのが誰なのかは結局わかりませんでしたね」

ロイルが読み終わった書類をまとめ、落胆の声で言った。

「ああ、これだけ徹底的に探しても顔を見た者はいなかった。証拠も残っていない。わかったのは声だけ…か」
「それもなんの特徴もない普通の声、おそらく我々と同年齢くらいの男の声だった、ということしかわからないので、そこから特定するのは難しいようです」

嫌がらせの実行犯についてはあらかた犯人がわかったが、不可解なことに、噂の出どころはいくら探してもわからなかった。

『医務室にいたら、だれかが言ったんです。キルナ様は闇属性で黒い髪を隠してるんだって』
『学園のトイレでだれかに聞いたんです。キルナ様が闇の魔力を使って魔獣を誘き寄せてるって』

だれがそう言ったのか、は皆知らないと言う。しかし、年齢は同い年くらいの男な気がする、そして、そういえば

『制服なのに青いフードを被っていた』

と声を揃えて言う。今考えれば違和感を感じるが、その時はなんとも思わなかった、と。

ユジンと俺の結婚を頑なに信じていたキルナに、やっと『クライスと結婚したい』と言わせることができた。そこに至るまでどれほど大変だったことか。それなのに、『クライスと結婚できないかも』と言わせてしまったのだ。噂の元凶を絶対に許すことはできない。

「生徒たちの中にまだその青フードは紛れているのでしょうか。王家の影は他の任務のため一旦帰ってしまったので、後は我々で探さなければなりませんね」
「絶対にその声の主を見つけ出す。青フード。いいかげん捕まえて俺の手でほうむってやる」

抑えきれず放った殺気にロイルが青い顔で諌める。

「クライス様、お気持ちはわかりますが、見つけてもすぐには殺さないでくださいね」
「……わかっている」
「ほんとですかね」


あとは、リオンたちから報告があるようなのでキルナ様の護衛を交代しますね。そう言い置いて二人はキルナのもとに行き、代わりにリオンとノエルが来た。

王家から騎士を借り、十分な護衛はつけているが、念の為自分か学友のうちの誰かを必ずキルナに付けるようにしている。「もうだいぶ嫌がらせの対処法はわかったから、こんなに厳重に守ってくれなくても平気だよ」という彼の意見は無視して。

「リオン、ノエル。何か報告があると聞いたが」
「はい。とても言いづらいお話なんですけど、僕たち、見てしまったんですぅ」
「何をだ?」

二人は複雑そうな顔をしながら、報告をはじめた。その内容に耳を疑う。

「は? キルナがユジンに嫌がらせをしているところを見ただと?」
「はい」

リオンは暗い面持ちで頷いた。ノエルの表情からもいつもの胡散臭うさんくさい笑みが消えている。

「何を見たんだ?」
「今朝、ユジン様の靴の中にガラス片を仕込んでいるのを見つけ、声をかけたら逃げられてしまい……申し訳ございません」
「僕は今日の放課後、キルナちゃんがユジンくんの体操服に、笑いながら動物の血のようなものをぶちまけているところを見ましたぁ。僕に気づくとすぐに二階の窓から飛び降りてどこかにいっちゃって、そのまま見失ってしまいました。すみません」

あのキルナがユジンに嫌がらせ……。
靴の中にガラス片、体操服に血? そしてこの二人を巻いて逃げただと?

「ただ、その後、護衛のために私たちがお側についても、キルナ様は何事もなかったかのような態度でして」
「正直訳がわからないんですけど、クライス様に報告しておくべきかと思いましたので」
「それは本当にキルナだったのか?」
「はい。あれは、どう見てもキルナ様でした。あれだけ目立つ美しい容姿をしているので見間違えることはないかと」
「僕もバッチリ顔を見たので間違いありません。顔も声も、キルナちゃんでした」

信じられないことだが、この二人が自分に虚偽の報告をするとも思えない。一体何が起きているんだ?

「……ユジンを呼べ」
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