252 / 287
第8章
第388話 クライスSIDE 学友たちの報告
しおりを挟む「この子、俺の子だった」
「へ?!」
「ど、どういう事かニャ?!」
ルイをお姫様抱っこして世界樹の中から出てきたアズの第一声に、エカとナムロ王様が困惑する。
それから、アズとルイが知った事を聞いて、アズの発言の意味を理解した。
実の子……正しくはその生まれ変わりと知ってから、アズのルイに対する溺愛っぷりは凄かった。
お城で暮らすルイに差し入れを持ってきたり、ルイがねだらなくてもお姫様抱っこしたり頬や額にキスしたり。
「学校の授業で必要な素材があれば獲ってきてあげるからね」
「は、はい……」
我が子の授業に使う素材の提供も惜しまないアズは、竜でも余裕でソロ狩り出来る特S級冒険者。
一方でアズに惚れかけていたルイは、前世のお父さんだと知ってしまい困惑気味だ。
「お母さんと話をしに行こう」
学園が長期休暇に入ると、アズはルイを誘ってアサギリ島に向かった。
世界樹の中で保管されている亡骸ではなく、この世に残されたルルの霊に会わせてあげるらしい。
アズが見せたいものがあるらしくて、エカとボクも同行したよ。
エカとボクにとっては、魔王討伐隊として行って以来のアサギリ島訪問だ。
アサケ大陸北東の海上に浮かぶ、アサギリ島。
草も生えない不毛の地で、かつては魔族と魔物がいる危険な場所だったけど、アズとルルが住むようになってから雰囲気が変わったと聞いていた。
「どう? ちょっと風景良くなっただろ?」
「ちょっとっていうレベルじゃない気がするよ」
エカがツッコミを入れる通り。
岩と土しか無かった大地が、一面の花畑に変わっていた。
「……綺麗~……コスモス畑みたいだ……」
元の世界にある花畑を連想したのか、ルイが呟いた。
咲き乱れる花々は種類も色も様々で、単色の花畑よりも華やかに見える。
「世界のあちこちから集めて植えたんだよ」
ベノワの背中の上から花畑を見下ろして、穏やかな声でアズが言う。
「最初はルルが花を育てようって言って、2人で行った場所から花を少しずつ持ち帰って植え続けたんだ。今はそれが自然に広がって咲いてるよ」
花々に慈しむような眼差しを向けた後、アズは花畑の中心にある小屋の隣に立つ、1本の木の近くにベノワを着陸させた。
「ルル、ただいま」
アズが声をかけると、瑞々しい緑の葉を茂らせる木の枝の間から、幻のように実体のない女性が現れた。
世界樹の中で眠る女性と同じ青いワンピース、長い黒髪と同じ色の犬耳とシッポ、開かれた黒い瞳は艷やかな宝石のように澄んでいる。
『おかえり、アズ。久しぶり、エカ』
念話が優しい波長で心に流れてくる。
精霊のように神秘的な雰囲気を漂わせて微笑むルルは、アズの隣にいるルイを見てハッとした。
『アズ、その黒髪の子は……?』
「ルルが異世界へ送った子だよ」
アズがルイの両肩に手を置き、微笑んで伝える。
『……よかった。生まれてきてくれて凄く嬉しい……』
その時浮かんだルルの微笑みは、切ないくらいに綺麗だった。
「……」
言葉の代わりに、ルイの瞳から涙が流れ始める。
何故泣いているのか、本人も分からない様子だった。
次々に頬を伝う涙が、地面に落ちて吸い込まれてゆく。
『日本のお父さんとお母さんは、どんな名前を付けてくれたの?』
「……る……【琉生】……です……」
問いかけられて、ルイは嗚咽しながらやっとの思いで答えた。
『素敵な名前、これからはルイって呼ぶね』
ルルがまた微笑む。
『……おかえり、ルイ……』
その【声】に呼応するように、周囲の花々から無数の花びらが舞った。
「へ?!」
「ど、どういう事かニャ?!」
ルイをお姫様抱っこして世界樹の中から出てきたアズの第一声に、エカとナムロ王様が困惑する。
それから、アズとルイが知った事を聞いて、アズの発言の意味を理解した。
実の子……正しくはその生まれ変わりと知ってから、アズのルイに対する溺愛っぷりは凄かった。
お城で暮らすルイに差し入れを持ってきたり、ルイがねだらなくてもお姫様抱っこしたり頬や額にキスしたり。
「学校の授業で必要な素材があれば獲ってきてあげるからね」
「は、はい……」
我が子の授業に使う素材の提供も惜しまないアズは、竜でも余裕でソロ狩り出来る特S級冒険者。
一方でアズに惚れかけていたルイは、前世のお父さんだと知ってしまい困惑気味だ。
「お母さんと話をしに行こう」
学園が長期休暇に入ると、アズはルイを誘ってアサギリ島に向かった。
世界樹の中で保管されている亡骸ではなく、この世に残されたルルの霊に会わせてあげるらしい。
アズが見せたいものがあるらしくて、エカとボクも同行したよ。
エカとボクにとっては、魔王討伐隊として行って以来のアサギリ島訪問だ。
アサケ大陸北東の海上に浮かぶ、アサギリ島。
草も生えない不毛の地で、かつては魔族と魔物がいる危険な場所だったけど、アズとルルが住むようになってから雰囲気が変わったと聞いていた。
「どう? ちょっと風景良くなっただろ?」
「ちょっとっていうレベルじゃない気がするよ」
エカがツッコミを入れる通り。
岩と土しか無かった大地が、一面の花畑に変わっていた。
「……綺麗~……コスモス畑みたいだ……」
元の世界にある花畑を連想したのか、ルイが呟いた。
咲き乱れる花々は種類も色も様々で、単色の花畑よりも華やかに見える。
「世界のあちこちから集めて植えたんだよ」
ベノワの背中の上から花畑を見下ろして、穏やかな声でアズが言う。
「最初はルルが花を育てようって言って、2人で行った場所から花を少しずつ持ち帰って植え続けたんだ。今はそれが自然に広がって咲いてるよ」
花々に慈しむような眼差しを向けた後、アズは花畑の中心にある小屋の隣に立つ、1本の木の近くにベノワを着陸させた。
「ルル、ただいま」
アズが声をかけると、瑞々しい緑の葉を茂らせる木の枝の間から、幻のように実体のない女性が現れた。
世界樹の中で眠る女性と同じ青いワンピース、長い黒髪と同じ色の犬耳とシッポ、開かれた黒い瞳は艷やかな宝石のように澄んでいる。
『おかえり、アズ。久しぶり、エカ』
念話が優しい波長で心に流れてくる。
精霊のように神秘的な雰囲気を漂わせて微笑むルルは、アズの隣にいるルイを見てハッとした。
『アズ、その黒髪の子は……?』
「ルルが異世界へ送った子だよ」
アズがルイの両肩に手を置き、微笑んで伝える。
『……よかった。生まれてきてくれて凄く嬉しい……』
その時浮かんだルルの微笑みは、切ないくらいに綺麗だった。
「……」
言葉の代わりに、ルイの瞳から涙が流れ始める。
何故泣いているのか、本人も分からない様子だった。
次々に頬を伝う涙が、地面に落ちて吸い込まれてゆく。
『日本のお父さんとお母さんは、どんな名前を付けてくれたの?』
「……る……【琉生】……です……」
問いかけられて、ルイは嗚咽しながらやっとの思いで答えた。
『素敵な名前、これからはルイって呼ぶね』
ルルがまた微笑む。
『……おかえり、ルイ……』
その【声】に呼応するように、周囲の花々から無数の花びらが舞った。
121
お気に入りに追加
10,378
あなたにおすすめの小説
嵌められた悪役令息の行く末は、
珈琲きの子
BL
【書籍化します◆アンダルシュノベルズ様より刊行】
公爵令息エミール・ダイヤモンドは婚約相手の第二王子から婚約破棄を言い渡される。同時に学内で起きた一連の事件の責任を取らされ、牢獄へと収容された。
一ヶ月も経たずに相手を挿げ替えて行われた第二王子の結婚式。他国からの参列者は首をかしげる。その中でも帝国の皇太子シグヴァルトはエミールの姿が見えないことに不信感を抱いた。そして皇太子は祝いの席でこう問うた。
「殿下の横においでになるのはどなたですか?」と。
帝国皇太子のシグヴァルトと、悪役令息に仕立て上げられたエミールのこれからについて。
【タンザナイト王国編】完結
【アレクサンドライト帝国編】完結
【精霊使い編】連載中
※web連載時と書籍では多少設定が変わっている点があります。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼毎週、月・水・金に投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
推しの為なら悪役令息になるのは大歓迎です!
こうらい ゆあ
BL
「モブレッド・アテウーマ、貴様との婚約を破棄する!」王太子の宣言で始まった待ちに待った断罪イベント!悪役令息であるモブレッドはこの日を心待ちにしていた。すべては推しである主人公ユレイユの幸せのため!推しの幸せを願い、日夜フラグを必死に回収していくモブレッド。ところが、予想外の展開が待っていて…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。