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第8章

第389話 変態令息になりそうな悪役令息①(ちょい※)

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受け損ねた魔法史のテストを受け、テスト勉強からようやく解放された。あれだけ執拗しつように繰り返された嫌がらせも、なくなった。

『キルナ、もう大丈夫だから』

クライスは寝るときにも、朝起きたときにも、おまじないをしながらそう教えてくれた。もしかしたら彼が何かしてくれたのかもしれない。それでも校舎に入ろうとすると足がすくみ、手は限界まで冷たくなった。そんな僕を見てクライスは手を繋いでくれた。

上靴をひっくり返して、何もないことを確かめる。
無視されないか、ドキドキしながら挨拶をする。
机に何も書いていないことがわかると、ようやく息が吸える。

「キルナ? 何かされたのか?」
「ううん。何も。だいじょぶ」

今日も何もなかった、大丈夫だった。を積み重ねると、少しずつ怖さは薄れ、もとの学園生活に戻っていった。痛い、苦しいと悲鳴を上げていた心が癒えていくのを感じる。あまり食べられなかったご飯も、美味しく感じられるようになった。

 
テスト後には、セントラが多忙のためきもだめし以降しばらくお休みになっていた補習も再開された。勉強はなんとか追いついたけれど、魔法の実技の方はまだまだで……毎日死ぬほど課題をもらい、部屋でもそれをこなすのに必死だった。

クライスは相変わらず、王宮の仕事、生徒会の仕事と忙しそうにしている。補習の後時間があれば僕も生徒会長補佐の仕事をしにいくけれど、ほぼ手伝える日はなく、二人でゆっくりできる時間はなかなか取れなかった。



そんな中、大きなイベントが発生した。『第一王子の誕生日パーティー』だ。ゲームでは大事なイベントだったと思うのだけど、なぜかユジンは呼ばれていないらしい。バタバタと公爵家に帰宅し着飾られ、第一王子御用達の馬車で迎えにきたクライスと共に王宮に行く。

家に帰ると久しぶりに会ったお父様は号泣しながら僕を抱きしめ、使用人たちが固まっていた。きもだめしの魔獣やら今回のいじめ騒動のことで、心配してくれていたみたい。

このパーティーには一年生の時にも参加したから、それほど緊張せずに済んだ。前回の誕生日パーティーではなんにも用意できなくて困った誕生日プレゼントも、今回は反省を生かしばっちり用意ができているから安心だ。

テアに頼んでお揃いのピアスを作ってもらった。円形で外側がゴールド、中央に艶やかな黒い魔宝石が配置されたシンプルながらかっこいいデザイン。(ただ、心配なのは、クライスはアクセサリーはつけない派らしいということ。これなら小さくて邪魔にならないしいいかなと思ったけれど、どうだろう? 気に入ってくれるといいな)


ダンスを二曲踊った後、ジーンの庭園が一望できるバルコニーで、彼にプレゼントを渡す。クライスは包みを開いてピアスを見るなり「一生大事にする」と言って、その場でつけてくれた。(ピアス穴が空いてないのにどうやってつけるのかなと思っていると、風魔法で簡単に開けていた)

便利な風魔法に感動し、「僕にもつけて」と頼むと、クライスはこころよく頷いたもののなかなかつけてくれない。位置を確認するように何度も耳たぶを触られ、次第に恥ずかしくなってくる。自分のは一瞬でつけたのに、どうしてこんなに時間がかかるの?

「んぁ…耳……くすぐったいよぉ」
「こら、動くな」
「だって……」
「じっとしていろ」
「ん……」

そう言われても……。そこばっかり触られるとゾクゾクするから早くしてほしい。でないとちょっと、最近ご無沙汰の僕の僕が……。

「早くぅ」
「ああ」
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