253 / 286
第8章
第389話 変態令息になりそうな悪役令息①(ちょい※)
しおりを挟む
受け損ねた魔法史のテストを受け、テスト勉強からようやく解放された。あれだけ執拗に繰り返された嫌がらせも、なくなった。
『キルナ、もう大丈夫だから』
クライスは寝るときにも、朝起きたときにも、おまじないをしながらそう教えてくれた。もしかしたら彼が何かしてくれたのかもしれない。それでも校舎に入ろうとすると足がすくみ、手は限界まで冷たくなった。そんな僕を見てクライスは手を繋いでくれた。
上靴をひっくり返して、何もないことを確かめる。
無視されないか、ドキドキしながら挨拶をする。
机に何も書いていないことがわかると、ようやく息が吸える。
「キルナ? 何かされたのか?」
「ううん。何も。だいじょぶ」
今日も何もなかった、大丈夫だった。を積み重ねると、少しずつ怖さは薄れ、もとの学園生活に戻っていった。痛い、苦しいと悲鳴を上げていた心が癒えていくのを感じる。あまり食べられなかったご飯も、美味しく感じられるようになった。
テスト後には、セントラが多忙のためきもだめし以降しばらくお休みになっていた補習も再開された。勉強はなんとか追いついたけれど、魔法の実技の方はまだまだで……毎日死ぬほど課題をもらい、部屋でもそれをこなすのに必死だった。
クライスは相変わらず、王宮の仕事、生徒会の仕事と忙しそうにしている。補習の後時間があれば僕も生徒会長補佐の仕事をしにいくけれど、ほぼ手伝える日はなく、二人でゆっくりできる時間はなかなか取れなかった。
そんな中、大きなイベントが発生した。『第一王子の誕生日パーティー』だ。ゲームでは大事なイベントだったと思うのだけど、なぜかユジンは呼ばれていないらしい。バタバタと公爵家に帰宅し着飾られ、第一王子御用達の馬車で迎えにきたクライスと共に王宮に行く。
家に帰ると久しぶりに会ったお父様は号泣しながら僕を抱きしめ、使用人たちが固まっていた。きもだめしの魔獣やら今回のいじめ騒動のことで、心配してくれていたみたい。
このパーティーには一年生の時にも参加したから、それほど緊張せずに済んだ。前回の誕生日パーティーではなんにも用意できなくて困った誕生日プレゼントも、今回は反省を生かしばっちり用意ができているから安心だ。
テアに頼んでお揃いのピアスを作ってもらった。円形で外側がゴールド、中央に艶やかな黒い魔宝石が配置されたシンプルながらかっこいいデザイン。(ただ、心配なのは、クライスはアクセサリーはつけない派らしいということ。これなら小さくて邪魔にならないしいいかなと思ったけれど、どうだろう? 気に入ってくれるといいな)
ダンスを二曲踊った後、ジーンの庭園が一望できるバルコニーで、彼にプレゼントを渡す。クライスは包みを開いてピアスを見るなり「一生大事にする」と言って、その場でつけてくれた。(ピアス穴が空いてないのにどうやってつけるのかなと思っていると、風魔法で簡単に開けていた)
便利な風魔法に感動し、「僕にもつけて」と頼むと、クライスは快く頷いたもののなかなかつけてくれない。位置を確認するように何度も耳たぶを触られ、次第に恥ずかしくなってくる。自分のは一瞬でつけたのに、どうしてこんなに時間がかかるの?
「んぁ…耳……くすぐったいよぉ」
「こら、動くな」
「だって……」
「じっとしていろ」
「ん……」
そう言われても……。そこばっかり触られるとゾクゾクするから早くしてほしい。でないとちょっと、最近ご無沙汰の僕の僕が……。
「早くぅ」
「ああ」
『キルナ、もう大丈夫だから』
クライスは寝るときにも、朝起きたときにも、おまじないをしながらそう教えてくれた。もしかしたら彼が何かしてくれたのかもしれない。それでも校舎に入ろうとすると足がすくみ、手は限界まで冷たくなった。そんな僕を見てクライスは手を繋いでくれた。
上靴をひっくり返して、何もないことを確かめる。
無視されないか、ドキドキしながら挨拶をする。
机に何も書いていないことがわかると、ようやく息が吸える。
「キルナ? 何かされたのか?」
「ううん。何も。だいじょぶ」
今日も何もなかった、大丈夫だった。を積み重ねると、少しずつ怖さは薄れ、もとの学園生活に戻っていった。痛い、苦しいと悲鳴を上げていた心が癒えていくのを感じる。あまり食べられなかったご飯も、美味しく感じられるようになった。
テスト後には、セントラが多忙のためきもだめし以降しばらくお休みになっていた補習も再開された。勉強はなんとか追いついたけれど、魔法の実技の方はまだまだで……毎日死ぬほど課題をもらい、部屋でもそれをこなすのに必死だった。
クライスは相変わらず、王宮の仕事、生徒会の仕事と忙しそうにしている。補習の後時間があれば僕も生徒会長補佐の仕事をしにいくけれど、ほぼ手伝える日はなく、二人でゆっくりできる時間はなかなか取れなかった。
そんな中、大きなイベントが発生した。『第一王子の誕生日パーティー』だ。ゲームでは大事なイベントだったと思うのだけど、なぜかユジンは呼ばれていないらしい。バタバタと公爵家に帰宅し着飾られ、第一王子御用達の馬車で迎えにきたクライスと共に王宮に行く。
家に帰ると久しぶりに会ったお父様は号泣しながら僕を抱きしめ、使用人たちが固まっていた。きもだめしの魔獣やら今回のいじめ騒動のことで、心配してくれていたみたい。
このパーティーには一年生の時にも参加したから、それほど緊張せずに済んだ。前回の誕生日パーティーではなんにも用意できなくて困った誕生日プレゼントも、今回は反省を生かしばっちり用意ができているから安心だ。
テアに頼んでお揃いのピアスを作ってもらった。円形で外側がゴールド、中央に艶やかな黒い魔宝石が配置されたシンプルながらかっこいいデザイン。(ただ、心配なのは、クライスはアクセサリーはつけない派らしいということ。これなら小さくて邪魔にならないしいいかなと思ったけれど、どうだろう? 気に入ってくれるといいな)
ダンスを二曲踊った後、ジーンの庭園が一望できるバルコニーで、彼にプレゼントを渡す。クライスは包みを開いてピアスを見るなり「一生大事にする」と言って、その場でつけてくれた。(ピアス穴が空いてないのにどうやってつけるのかなと思っていると、風魔法で簡単に開けていた)
便利な風魔法に感動し、「僕にもつけて」と頼むと、クライスは快く頷いたもののなかなかつけてくれない。位置を確認するように何度も耳たぶを触られ、次第に恥ずかしくなってくる。自分のは一瞬でつけたのに、どうしてこんなに時間がかかるの?
「んぁ…耳……くすぐったいよぉ」
「こら、動くな」
「だって……」
「じっとしていろ」
「ん……」
そう言われても……。そこばっかり触られるとゾクゾクするから早くしてほしい。でないとちょっと、最近ご無沙汰の僕の僕が……。
「早くぅ」
「ああ」
102
お気に入りに追加
10,240
あなたにおすすめの小説
嵌められた悪役令息の行く末は、
珈琲きの子
BL
【書籍化します◆アンダルシュノベルズ様より刊行】
公爵令息エミール・ダイヤモンドは婚約相手の第二王子から婚約破棄を言い渡される。同時に学内で起きた一連の事件の責任を取らされ、牢獄へと収容された。
一ヶ月も経たずに相手を挿げ替えて行われた第二王子の結婚式。他国からの参列者は首をかしげる。その中でも帝国の皇太子シグヴァルトはエミールの姿が見えないことに不信感を抱いた。そして皇太子は祝いの席でこう問うた。
「殿下の横においでになるのはどなたですか?」と。
帝国皇太子のシグヴァルトと、悪役令息に仕立て上げられたエミールのこれからについて。
【タンザナイト王国編】完結
【アレクサンドライト帝国編】完結
【精霊使い編】連載中
※web連載時と書籍では多少設定が変わっている点があります。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。