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第8章
第374話 テスト前日①
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「ふぁああっくしゅ!!」
僕はトイレの中で不運にも雨に見舞われびしょ濡れになっていた。
ってそんなことある!!?
(これはアレだよね。この扉の向こうにいる誰かが、水魔法で水をかけてきたんだよね。許せない)
僕は便器の水を流して、ズボンを履いて(くっボタンが固い)、扉を開けた!!!
「……誰もいない」
逃げられた。
仕方がなく手を洗ってから、体中をハンカチで拭いていくものの、そんなのじゃ追いつかないくらいどこもかしこも濡れている。
(どうしよう。これからまだ授業があるのに……)
濡れたついでにズボンを捲って、膝と手のひらの擦り傷を流水で流すことにした。血を見ないように気をつけながら綺麗に流す。
「くぅっ…、痛い……」
思ったよりも酷く、冷たい水が傷に沁みる。これはついさっき教室を出てここに来るまでの道のりでできたばかりの傷だ。
トイレに行きたくて廊下を急ぎ足で歩いていたら、何かに躓いて派手に転けた。起き上がってすぐに足元を確認したけど躓くようなものは何もなく、確かに足に何か当たったのに変だなと首を傾げる。周りからの嘲笑が耳に入ってきて、なんとなく原因を悟った。
(あの中の誰かが足を出して僕を引っ掛けたのかな……)
暗い気持ちがお腹に溜まっていく。その後ようやく辿り着いたトイレでもこうして雨に降られたのだから、もう、本当に嫌になる。
二学期になってから毎日のように挨拶を無視されたり、机に悪口を書かれたりと、地味な嫌がらせが続いていた。どうやら休みの間に僕の悪役としての知名度が急激にアップしたらしく、どこを歩いても(あっ……悪役令息が来た!)という顔をされる。
気にしないようにはしているのだけど、実際にそういう反応をされると辛い。みんなに嫌われまくる悪役令息だなんて、ゲームの中のキルナと同じだ。
「はぁ」
ため息をつきながら手洗い場の前で髪を拭いていると、ぎゅっと後ろから腰に抱きつかれ悲鳴をあげる。
「ひぃっ誰!? ……リリー?」
「それ誰にやられたの?」
「えと……手を洗うのに失敗しただけだよ」
「手を洗おうとして頭が濡れたの? そんなわけないでしょ」
「……」
「もぅ、こっち向いてじっとしてて。そのままじゃ風邪ひくでしょ」
リリーが火魔法で髪も体も制服も全てカラッと乾かしてくれた。
「なんか最近学園の様子がおかしいから気になってたんだよ。なんで言わないの?」
「あの……ごめん」
「とにかくもう授業はじまるから、今日の放課後話をしようよ」
「今日は…無理。生徒会の仕事があるし。明日はテストだから勉強しないといけないし……。リリー、僕は大丈夫だから、ね。心配しないで」
「メガネ……」
僕は彼の潤んだ夕日色の瞳から目を逸らした。
こんな状況でもいつも通り仲良くしてくれるリリーやテアには感謝している。本当のことを打ち明けて相談したい。
でも僕は机に『闇属性』と書かれていたことが気になっていた。どうして内緒にしているはずの属性がバレているのか。この学園でそれを知っているのはセントラとクライスとテアだけだ。彼らが言いふらすはずがない。あとは、なぜか僕の闇の魔力を狙っているらしい青フード。
クライスに聞いた話によると、きもだめしの魔獣を召喚したのも多分あいつらだというし、まだ捕まってないから学園にいるかもしれない。
もしこの嫌がらせに青フードたちが関わっているとしたら……絶対にリリーやテアを巻き込んではいけない。
「ほら、チャイムが鳴ったから。戻ろ!」
話が聞きたいと渋るリリーの背中を押して、教室に戻った。
僕はトイレの中で不運にも雨に見舞われびしょ濡れになっていた。
ってそんなことある!!?
(これはアレだよね。この扉の向こうにいる誰かが、水魔法で水をかけてきたんだよね。許せない)
僕は便器の水を流して、ズボンを履いて(くっボタンが固い)、扉を開けた!!!
「……誰もいない」
逃げられた。
仕方がなく手を洗ってから、体中をハンカチで拭いていくものの、そんなのじゃ追いつかないくらいどこもかしこも濡れている。
(どうしよう。これからまだ授業があるのに……)
濡れたついでにズボンを捲って、膝と手のひらの擦り傷を流水で流すことにした。血を見ないように気をつけながら綺麗に流す。
「くぅっ…、痛い……」
思ったよりも酷く、冷たい水が傷に沁みる。これはついさっき教室を出てここに来るまでの道のりでできたばかりの傷だ。
トイレに行きたくて廊下を急ぎ足で歩いていたら、何かに躓いて派手に転けた。起き上がってすぐに足元を確認したけど躓くようなものは何もなく、確かに足に何か当たったのに変だなと首を傾げる。周りからの嘲笑が耳に入ってきて、なんとなく原因を悟った。
(あの中の誰かが足を出して僕を引っ掛けたのかな……)
暗い気持ちがお腹に溜まっていく。その後ようやく辿り着いたトイレでもこうして雨に降られたのだから、もう、本当に嫌になる。
二学期になってから毎日のように挨拶を無視されたり、机に悪口を書かれたりと、地味な嫌がらせが続いていた。どうやら休みの間に僕の悪役としての知名度が急激にアップしたらしく、どこを歩いても(あっ……悪役令息が来た!)という顔をされる。
気にしないようにはしているのだけど、実際にそういう反応をされると辛い。みんなに嫌われまくる悪役令息だなんて、ゲームの中のキルナと同じだ。
「はぁ」
ため息をつきながら手洗い場の前で髪を拭いていると、ぎゅっと後ろから腰に抱きつかれ悲鳴をあげる。
「ひぃっ誰!? ……リリー?」
「それ誰にやられたの?」
「えと……手を洗うのに失敗しただけだよ」
「手を洗おうとして頭が濡れたの? そんなわけないでしょ」
「……」
「もぅ、こっち向いてじっとしてて。そのままじゃ風邪ひくでしょ」
リリーが火魔法で髪も体も制服も全てカラッと乾かしてくれた。
「なんか最近学園の様子がおかしいから気になってたんだよ。なんで言わないの?」
「あの……ごめん」
「とにかくもう授業はじまるから、今日の放課後話をしようよ」
「今日は…無理。生徒会の仕事があるし。明日はテストだから勉強しないといけないし……。リリー、僕は大丈夫だから、ね。心配しないで」
「メガネ……」
僕は彼の潤んだ夕日色の瞳から目を逸らした。
こんな状況でもいつも通り仲良くしてくれるリリーやテアには感謝している。本当のことを打ち明けて相談したい。
でも僕は机に『闇属性』と書かれていたことが気になっていた。どうして内緒にしているはずの属性がバレているのか。この学園でそれを知っているのはセントラとクライスとテアだけだ。彼らが言いふらすはずがない。あとは、なぜか僕の闇の魔力を狙っているらしい青フード。
クライスに聞いた話によると、きもだめしの魔獣を召喚したのも多分あいつらだというし、まだ捕まってないから学園にいるかもしれない。
もしこの嫌がらせに青フードたちが関わっているとしたら……絶対にリリーやテアを巻き込んではいけない。
「ほら、チャイムが鳴ったから。戻ろ!」
話が聞きたいと渋るリリーの背中を押して、教室に戻った。
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