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第7章
第356話 クライスSIDE 闇の魔力と呪いとマッサージ※
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「マッサージを代わろう」
俺はマッサージ台から下りて彼をうつ伏せに寝かせた。
この婚約者はまだまだ俺のことがわかっていないらしい。この可愛らしい口から他の男の名がでるだけで俺の心はこんなに荒れ狂うというのに。ユジンと風呂などと……。
「キスマーク、まだ綺麗についているな」
「ん。これ以上増やしちゃダメだよ…恥ずかしいから」
「俺のものだという証拠だ。見えるものがないと心配なんだ」
「そうなの?」
俺の不安が伝わったのか、彼は目を閉じ、大人しくされるがままになっている。いつものように白い肌にオイルを塗り広げながら、俺はきもだめし後のことを思い出していた。
洞窟を出てキルナの治療を終えた後、セントラ理事長にキルナのことを話した。「キルナ様が呪いを吸収したように見えたのはよくない兆候かもしれません」と彼は厳しい顔つきで言った。
その理由は、闇の魔力は呪力と結びつきやすい性質を持っているから。
ただでさえ持て余している闇の魔力が呪いの力を吸収すれば、さらにその力を増していく。抱えきれなくなった力は暴走し、命を縮めることになるかもしれない。
キルナの寿命を縮める、というのは最悪の展開だ。
そうでなくとも彼の寿命はあと一年しかないのに。
ーーキルナを呪いに触れさせてはいけない。
この話はユジンも一緒に聞いていた。気を失ったキルナの容体が気になり、自分も話を聞きたいと訴えついてきていたのだ。震える拳を握り締める様子は痛々しい。彼は自分の呪いをキルナが吸収してしまったかもしれないと知り、自分を責めているようだった。
気持ちはわかるが今回は仕方がなかったのだと俺にもわかる。ユジンは命を張ってキルナを魔獣から守っていた。自分を責める必要などない。それでも責めてしまうのだろうな。
ピンクの瞳から後悔の涙が流れるのを、俺は見ないふりをした。自分だったら見られたくないから。前を向いたまま彼に言葉をかける。
『キルナを守ろう。絶対に』
『……はい』
『そのためにはまず動けない怪我人たちをなるべく早く治療して、地方の神殿に送ってしまうことだな。キルナの近くから呪いを遠ざけたい』
『そうですね。回復術は得意です。僕も、治療を手伝います』
彼はそう言って、気丈に顔を上げた。
『お二人の応援は助かります。今は手がいくらあっても足りませんから。あと、もう一つわかったことがあります』
理事長の言葉を一言も聞き逃さないように耳を傾ける。魔獣騒動の処理で彼は走り回っている。次はいつこうして向き合って話ができるかわからない。
「今回の魔獣の召喚には、古代魔術の一つである黒魔法が使われているようです。ライン先生が洞窟の奥でその魔法陣を発見し、私も確認しに行きました。見たことのない複雑な魔法陣に、夥しい量の血液の痕。贄を使った黒魔法とみて間違いないでしょう」
「黒魔法は、はるか昔に禁術とされて消えたはずでは? 書物も術者も徹底的に処分されたと聞いていますが」
俺がそう言うと、理事長は「その通りです」と頷く。
『もう消えたはずの黒魔法が、何者かの手によって復活しているのです』
詳しいことは調査中だという。犯人の姿はまだ見えない。だが、今までのことや魔獣の動きから考えても、これは青フードの仕業とみて間違いないだろう。そしてその狙いは、
「そいつらの狙いは、キル兄様なのですね……」
「おそらく。キルナ様の体内に眠る、闇の魔力が狙われているのかもしれません」
「クラ…イス…ちょっと……お尻ばっかり触っちゃ……はぁ……ん」
ユジンがいい弟だということはわかっている。キルナのことを一番に考えて、守ろうと必死なことも。いい奴だということも。
だがしかし、それとこれとは別だ。
(キルナと風呂に入るのは許さない)
「やあぁ中にゆび…はぁん……そこらめ…こねこねしないれ……う……もぅ…でる……んん……は…ぁで、でちゃう……やあああああああ」
もちろんこんな卑猥なマッサージを受けるなんて、考えただけで嫉妬の炎に焼き尽くされそうだ。目の前の白い肌にはもうたくさんの印がついていたが、それでも気持ちはおさまらなかった。薬草の香りのする肌に口をつける。
「キルナ。愛してる。絶対に俺が守るから」
「ぼく…も。クライ…スをまもる…よ」
俺はマッサージ台から下りて彼をうつ伏せに寝かせた。
この婚約者はまだまだ俺のことがわかっていないらしい。この可愛らしい口から他の男の名がでるだけで俺の心はこんなに荒れ狂うというのに。ユジンと風呂などと……。
「キスマーク、まだ綺麗についているな」
「ん。これ以上増やしちゃダメだよ…恥ずかしいから」
「俺のものだという証拠だ。見えるものがないと心配なんだ」
「そうなの?」
俺の不安が伝わったのか、彼は目を閉じ、大人しくされるがままになっている。いつものように白い肌にオイルを塗り広げながら、俺はきもだめし後のことを思い出していた。
洞窟を出てキルナの治療を終えた後、セントラ理事長にキルナのことを話した。「キルナ様が呪いを吸収したように見えたのはよくない兆候かもしれません」と彼は厳しい顔つきで言った。
その理由は、闇の魔力は呪力と結びつきやすい性質を持っているから。
ただでさえ持て余している闇の魔力が呪いの力を吸収すれば、さらにその力を増していく。抱えきれなくなった力は暴走し、命を縮めることになるかもしれない。
キルナの寿命を縮める、というのは最悪の展開だ。
そうでなくとも彼の寿命はあと一年しかないのに。
ーーキルナを呪いに触れさせてはいけない。
この話はユジンも一緒に聞いていた。気を失ったキルナの容体が気になり、自分も話を聞きたいと訴えついてきていたのだ。震える拳を握り締める様子は痛々しい。彼は自分の呪いをキルナが吸収してしまったかもしれないと知り、自分を責めているようだった。
気持ちはわかるが今回は仕方がなかったのだと俺にもわかる。ユジンは命を張ってキルナを魔獣から守っていた。自分を責める必要などない。それでも責めてしまうのだろうな。
ピンクの瞳から後悔の涙が流れるのを、俺は見ないふりをした。自分だったら見られたくないから。前を向いたまま彼に言葉をかける。
『キルナを守ろう。絶対に』
『……はい』
『そのためにはまず動けない怪我人たちをなるべく早く治療して、地方の神殿に送ってしまうことだな。キルナの近くから呪いを遠ざけたい』
『そうですね。回復術は得意です。僕も、治療を手伝います』
彼はそう言って、気丈に顔を上げた。
『お二人の応援は助かります。今は手がいくらあっても足りませんから。あと、もう一つわかったことがあります』
理事長の言葉を一言も聞き逃さないように耳を傾ける。魔獣騒動の処理で彼は走り回っている。次はいつこうして向き合って話ができるかわからない。
「今回の魔獣の召喚には、古代魔術の一つである黒魔法が使われているようです。ライン先生が洞窟の奥でその魔法陣を発見し、私も確認しに行きました。見たことのない複雑な魔法陣に、夥しい量の血液の痕。贄を使った黒魔法とみて間違いないでしょう」
「黒魔法は、はるか昔に禁術とされて消えたはずでは? 書物も術者も徹底的に処分されたと聞いていますが」
俺がそう言うと、理事長は「その通りです」と頷く。
『もう消えたはずの黒魔法が、何者かの手によって復活しているのです』
詳しいことは調査中だという。犯人の姿はまだ見えない。だが、今までのことや魔獣の動きから考えても、これは青フードの仕業とみて間違いないだろう。そしてその狙いは、
「そいつらの狙いは、キル兄様なのですね……」
「おそらく。キルナ様の体内に眠る、闇の魔力が狙われているのかもしれません」
「クラ…イス…ちょっと……お尻ばっかり触っちゃ……はぁ……ん」
ユジンがいい弟だということはわかっている。キルナのことを一番に考えて、守ろうと必死なことも。いい奴だということも。
だがしかし、それとこれとは別だ。
(キルナと風呂に入るのは許さない)
「やあぁ中にゆび…はぁん……そこらめ…こねこねしないれ……う……もぅ…でる……んん……は…ぁで、でちゃう……やあああああああ」
もちろんこんな卑猥なマッサージを受けるなんて、考えただけで嫉妬の炎に焼き尽くされそうだ。目の前の白い肌にはもうたくさんの印がついていたが、それでも気持ちはおさまらなかった。薬草の香りのする肌に口をつける。
「キルナ。愛してる。絶対に俺が守るから」
「ぼく…も。クライ…スをまもる…よ」
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