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第7章
第349話 ルート調査と悪役令息※
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疲れていたからセンチメンタルな気分になっていたのかな。ぐっすり眠るといくらか頭の中がスッキリしていた。グダグダ悩んで急に泣き出すみっともない姿を見せても、眠るまで側にいてくれた二人には感謝しかない。とにかくみんな無事だったのだし、今後のことを考えないと。
(ん? おでこが少しあったかいような)
「……ぬあ!! クライス、ちかっ、顔が近いよ」
目をぱっちり開けると、くっつきそうな距離に凄まじいイケメンがいた。
「熱がないか測っていたんだ」
「そ、そうなの?」
おでことおでこをくっつけて? そんな漫画みたいな測り方する?
「まだ少し熱がある、ゆっくり休め」
「う…ん」
明らかにこのクライスの行動のせいで熱が上がってる気がするけれど。熱くなった顔を手で扇ぎ、カラカラになった喉を潤すためにキッチンへと向かった。なぜかクライスが後ろからついてきて「水分補給なら口移しでやろうか」という。そんなに重病にみえるのかな? テアの時と同じように「自分で飲めるからいい」と断った。
お行儀が悪いけど、喉が渇きすぎているから立ったままお水をいただく。
「ごくごくごく、ぷはぁ、おいしっ。生き返る!」
「キルナのいい匂いがする」
「クライス、そんなにきつく抱きしめると痛いってば」
「ああ、ここにキルナがいる。ちゃんと俺の腕の中に」
冷たい水で火照った体を冷やしているけど、背中側から抱き締めてくる王子様のせいで体温は上がるばっかりだ(どうやら心配性の症状が出ちゃってるみたい)。でもやっぱりクライスが近くにいると思うとホッとする。本当にあの洞窟から帰ってこられたんだ。
「クライスは怪我しなかった?」
「ああ、噛まれないように戦ったから大丈夫だ」
「そうなんだ」
クライスはさらっとそう言うけど、僕は今回魔獣の恐ろしさを間近で見た。あのすばしっこく凶暴な魔獣相手にひとつも噛まれずに戦うって、すごすぎる。視界も悪かったし、相手は大勢だったのに。
「キルナが無事でよかった。本当は目が覚めるまでずっとついていたかったんだが……すまない」
「なんで謝るの? 治療の手伝いをしてたのだってテアとリリーに聞いたよ。僕は寝てただけだし。二人もいたから平気だったよ」
「それでも側にいてやりたかったんだ。怖い思いをした後なんだから」
「ありがと……」
クライスは僕の額におまじないのキスをした。ほっぺにも、耳にも啄むようなキスをされて、なんか照れ臭い。真っ赤になるなんて格好悪いなと思うのだけど、彼の降らせるキスの雨に翻弄されてしまう。
「んもう、十分でしょ」
恥ずかしさのあまりぶすっと拗ねたような声で制止すると、ようやく雨が止んだ。そしてやっと晴れ渡った頭で、僕は重要なことに思い至った。
そうだ。キスのことを聞かなきゃ。僕が気を失った後、キスをしたのかしてないのか。聞くのは怖いけど。大事なことだから。
「ねえ」
「なんだ?」
「クライスはユジンと、キスした?」
「…………」
無言のまま数分が経過する。さっきまで、とろりとした蜂蜜のような甘さを含んでいたはずの瞳が、この一瞬の間に氷のように凍てついた瞳に変わっている。ヒュウウウと部屋の中に冷たい風が吹いた。窓は閉まっているのにおかしい。これはクライスの魔力のせい??
「クラ…イス?」
恐る恐る声をかけると、停止していた彼がやっと動き始めた。僕を抱き抱えて向かった先は……。
(あれ? ベッド? ずっと寝てたから僕もう眠くないのに……)
「ねぇクライス、二度寝してたっぷり寝たから、さすがにもう寝れないよ。そうだ、今日って学校ないの?」
平日なのにクライスが制服に着替えてないのに気づく。彼は僕をベッドに仰向けに寝かせながら答えた。
「しばらく1年と6年は休みだ。怪我人が多数出ているからな。怪我人は治療に専念し、その他の者は配られた課題を自室でこなすことになる」
「そうなんだ。って、え? なんで服脱がせるの? 学校ないんでしょ?」
制服に着替える必要はないのに、なんで全部脱がせたのだろう。疑問に思っていると、さらけ出された乳首をやんわりと摘まれた。そのままくるくると乳首の周辺を捏ねられ、思わず甘い声をあげてしまう。
ピリッとした強めの刺激の後、じんじんとした刺激が、ゆっくり、確実に与えられていく。強すぎない柔らかなタッチは僕の一番好きな触り方だ。
「っひゃあ、んん……」
「ふう……。で、俺とユジンが何したって?」
さっきの話の続きかしら。キスしたかどうか尋ねるとすごく不機嫌になったクライスに同じことを聞くのは憚られ、僕は口を閉ざした。これ以上のブリザードに耐えられそうにない。
「前にも言ったはずだ。俺がキスするのはお前だけだと」
(ん? おでこが少しあったかいような)
「……ぬあ!! クライス、ちかっ、顔が近いよ」
目をぱっちり開けると、くっつきそうな距離に凄まじいイケメンがいた。
「熱がないか測っていたんだ」
「そ、そうなの?」
おでことおでこをくっつけて? そんな漫画みたいな測り方する?
「まだ少し熱がある、ゆっくり休め」
「う…ん」
明らかにこのクライスの行動のせいで熱が上がってる気がするけれど。熱くなった顔を手で扇ぎ、カラカラになった喉を潤すためにキッチンへと向かった。なぜかクライスが後ろからついてきて「水分補給なら口移しでやろうか」という。そんなに重病にみえるのかな? テアの時と同じように「自分で飲めるからいい」と断った。
お行儀が悪いけど、喉が渇きすぎているから立ったままお水をいただく。
「ごくごくごく、ぷはぁ、おいしっ。生き返る!」
「キルナのいい匂いがする」
「クライス、そんなにきつく抱きしめると痛いってば」
「ああ、ここにキルナがいる。ちゃんと俺の腕の中に」
冷たい水で火照った体を冷やしているけど、背中側から抱き締めてくる王子様のせいで体温は上がるばっかりだ(どうやら心配性の症状が出ちゃってるみたい)。でもやっぱりクライスが近くにいると思うとホッとする。本当にあの洞窟から帰ってこられたんだ。
「クライスは怪我しなかった?」
「ああ、噛まれないように戦ったから大丈夫だ」
「そうなんだ」
クライスはさらっとそう言うけど、僕は今回魔獣の恐ろしさを間近で見た。あのすばしっこく凶暴な魔獣相手にひとつも噛まれずに戦うって、すごすぎる。視界も悪かったし、相手は大勢だったのに。
「キルナが無事でよかった。本当は目が覚めるまでずっとついていたかったんだが……すまない」
「なんで謝るの? 治療の手伝いをしてたのだってテアとリリーに聞いたよ。僕は寝てただけだし。二人もいたから平気だったよ」
「それでも側にいてやりたかったんだ。怖い思いをした後なんだから」
「ありがと……」
クライスは僕の額におまじないのキスをした。ほっぺにも、耳にも啄むようなキスをされて、なんか照れ臭い。真っ赤になるなんて格好悪いなと思うのだけど、彼の降らせるキスの雨に翻弄されてしまう。
「んもう、十分でしょ」
恥ずかしさのあまりぶすっと拗ねたような声で制止すると、ようやく雨が止んだ。そしてやっと晴れ渡った頭で、僕は重要なことに思い至った。
そうだ。キスのことを聞かなきゃ。僕が気を失った後、キスをしたのかしてないのか。聞くのは怖いけど。大事なことだから。
「ねえ」
「なんだ?」
「クライスはユジンと、キスした?」
「…………」
無言のまま数分が経過する。さっきまで、とろりとした蜂蜜のような甘さを含んでいたはずの瞳が、この一瞬の間に氷のように凍てついた瞳に変わっている。ヒュウウウと部屋の中に冷たい風が吹いた。窓は閉まっているのにおかしい。これはクライスの魔力のせい??
「クラ…イス?」
恐る恐る声をかけると、停止していた彼がやっと動き始めた。僕を抱き抱えて向かった先は……。
(あれ? ベッド? ずっと寝てたから僕もう眠くないのに……)
「ねぇクライス、二度寝してたっぷり寝たから、さすがにもう寝れないよ。そうだ、今日って学校ないの?」
平日なのにクライスが制服に着替えてないのに気づく。彼は僕をベッドに仰向けに寝かせながら答えた。
「しばらく1年と6年は休みだ。怪我人が多数出ているからな。怪我人は治療に専念し、その他の者は配られた課題を自室でこなすことになる」
「そうなんだ。って、え? なんで服脱がせるの? 学校ないんでしょ?」
制服に着替える必要はないのに、なんで全部脱がせたのだろう。疑問に思っていると、さらけ出された乳首をやんわりと摘まれた。そのままくるくると乳首の周辺を捏ねられ、思わず甘い声をあげてしまう。
ピリッとした強めの刺激の後、じんじんとした刺激が、ゆっくり、確実に与えられていく。強すぎない柔らかなタッチは僕の一番好きな触り方だ。
「っひゃあ、んん……」
「ふう……。で、俺とユジンが何したって?」
さっきの話の続きかしら。キスしたかどうか尋ねるとすごく不機嫌になったクライスに同じことを聞くのは憚られ、僕は口を閉ざした。これ以上のブリザードに耐えられそうにない。
「前にも言ったはずだ。俺がキスするのはお前だけだと」
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