217 / 286
第7章
第353話 勉強会とパンケーキ①
しおりを挟む
熱があるにもかかわらずやりまくった僕……。その後彼に看病され、翌日にはすっかり熱も下がって元気になっていた。クライスはまた医務室に呼ばれ、怪我人の治療の手伝いに行った。「キルナと離れたくない……」とべったりくっついて離れない彼を「また夕方には会えるでしょ?」と宥めながら送り出したのが、ついさっき。
そして今僕は、テアとリリーと一緒に部屋で勉強会をしているところ。
とにかく配られた課題(結構多い)をこなすために、集中しなきゃなんだけど! こうやって、クライスと離れ、静かに勉強をしていると、色々あったことが思い出されて衝動のまま叫んでしまう。
「あああああ!! すごいこと言っちゃった。どうしよ!!」
「「どうしたの?」」
ペンを止めてこちらを見た彼らに僕は縋るように言った。
「僕、クライスに、け、け、結婚したいって言っちゃったよぉ!」
「へえ? おめでとう」
「ふ~ん? 結婚式はテアも呼んでね。おめかししていくから~」
僕にとってはめちゃくちゃ大事件なのに、二人は全然驚いていない。今更どうしたんだろう……、みたいな反応をされてしまい、そう言えば僕たちは婚約者同士だから、結婚する方が当たり前だったと気づく。あれ? じゃあ僕はなんで騒いでいるのだっけ?
「実はさ、王子が王に頼んで派遣してくれた優秀なアドバイザーのおかげで、最近実家の領地経営が順調なんだ。メガネの結婚式の時にはちゃんとした衣装が用意できそうだよ」
「プラム男爵家ビンボウ脱出~? それはよかったねぇ。うちも位は下がったけど、イダ兄サマが家を継いだらとたんに鉱山の収入がアップして、儲かってるみたい。宝石の加工業も順調で、テアも手伝ってるんだよ~。今度二人に似合う宝石を綺麗に加工してアクセサリーにして、プレゼントするネ」
「ビッチが作るの? それは楽しみ! できたら三人でお揃いがいいな……」
「ふふ、リリーったら、か~わ~い~い~!! 任せて、キルナサマの結婚式までにお揃いのアクセサリー用意するから」
二人の会話は弾んでいる。クライスの送ったアドバイザーってなんだろ。テアの家は色々あったけどお兄さんたちとお母さんが戻ってきて、いい感じなんだね。二人の家が順調みたいでうれしい。お揃いのアクセサリーなんて心が躍る。
たしかにその話はすごーく気になるけれど、そうじゃなくって。結婚式の衣装の前に、結婚していいのかが問題なのであって……。
どうしたらいい? 本当に大丈夫かな? やっぱりクライスに婚約破棄してもらわないとダメなんじゃ? ゲームのストーリーはどうなっちゃうの? でもクライスは魔王だし、僕じゃないと……。
「メガネ、さっきから何一人でブツブツ言ってるの?」
「クライスに婚約破棄してもらわなくて、ほんとのほんとに大丈夫かどうか考えてたの」
「よくわかんないけど、王子に婚約破棄してもらうなんて、難易度高すぎでしょ、無理だよ」
「キルナサマってエムっ気あるのかなぁ。もし婚約破棄して~なんて言ったら、キルナサマ監禁されて会えなくなるよ。そうなっちゃうと、テア寂しいな~。監禁調教陵辱プレイは大好きだけど、王子様に結界張られちゃうと、中を覗くのも難しそうだし」
「え? 監禁? 陵辱? なんのこと!?」
不穏なワードに首を傾げると、リリーが大きなため息を吐いた。
「気づいてないところがメガネなんだよね。面白いけど、僕も寂しいからそれは止めといて」
「えと、わかった……」
二人によると、僕が婚約破棄してくれとクライスに言えば、死ぬまで監禁され陵辱される未来が確定するらしい。魔王の恐ろしさを知っている僕はあり得るような気がしてきて怖い。そんなバッドエンドは回避しなければ。
それに、僕はもう婚約破棄してほしいなんて言えない。
だって、クライスのことが好きな気持ちが胸に溢れてて、今だって彼が近くにいないことがこんなに寂しい。早く会いたい。会いたい。
「はぁ、ほんと、困ったなぁ……」
「今度は何に困ってるの?」
「クライスのことが好きすぎて……胸がいっぱいで……」
「へえ? よかったね。メガネが幸せそうで、僕も嬉しいよ。ふぅ…もう全然勉強に集中できないし、お茶にしない?」
「イイネ。なんか甘いもの食べたいナ~」
「あっ、じゃあパンケーキ作るよ。待ってて」
「「やったー」」
全然進んでいない問題集を閉じて、僕はキッチンへと向かった。
そして今僕は、テアとリリーと一緒に部屋で勉強会をしているところ。
とにかく配られた課題(結構多い)をこなすために、集中しなきゃなんだけど! こうやって、クライスと離れ、静かに勉強をしていると、色々あったことが思い出されて衝動のまま叫んでしまう。
「あああああ!! すごいこと言っちゃった。どうしよ!!」
「「どうしたの?」」
ペンを止めてこちらを見た彼らに僕は縋るように言った。
「僕、クライスに、け、け、結婚したいって言っちゃったよぉ!」
「へえ? おめでとう」
「ふ~ん? 結婚式はテアも呼んでね。おめかししていくから~」
僕にとってはめちゃくちゃ大事件なのに、二人は全然驚いていない。今更どうしたんだろう……、みたいな反応をされてしまい、そう言えば僕たちは婚約者同士だから、結婚する方が当たり前だったと気づく。あれ? じゃあ僕はなんで騒いでいるのだっけ?
「実はさ、王子が王に頼んで派遣してくれた優秀なアドバイザーのおかげで、最近実家の領地経営が順調なんだ。メガネの結婚式の時にはちゃんとした衣装が用意できそうだよ」
「プラム男爵家ビンボウ脱出~? それはよかったねぇ。うちも位は下がったけど、イダ兄サマが家を継いだらとたんに鉱山の収入がアップして、儲かってるみたい。宝石の加工業も順調で、テアも手伝ってるんだよ~。今度二人に似合う宝石を綺麗に加工してアクセサリーにして、プレゼントするネ」
「ビッチが作るの? それは楽しみ! できたら三人でお揃いがいいな……」
「ふふ、リリーったら、か~わ~い~い~!! 任せて、キルナサマの結婚式までにお揃いのアクセサリー用意するから」
二人の会話は弾んでいる。クライスの送ったアドバイザーってなんだろ。テアの家は色々あったけどお兄さんたちとお母さんが戻ってきて、いい感じなんだね。二人の家が順調みたいでうれしい。お揃いのアクセサリーなんて心が躍る。
たしかにその話はすごーく気になるけれど、そうじゃなくって。結婚式の衣装の前に、結婚していいのかが問題なのであって……。
どうしたらいい? 本当に大丈夫かな? やっぱりクライスに婚約破棄してもらわないとダメなんじゃ? ゲームのストーリーはどうなっちゃうの? でもクライスは魔王だし、僕じゃないと……。
「メガネ、さっきから何一人でブツブツ言ってるの?」
「クライスに婚約破棄してもらわなくて、ほんとのほんとに大丈夫かどうか考えてたの」
「よくわかんないけど、王子に婚約破棄してもらうなんて、難易度高すぎでしょ、無理だよ」
「キルナサマってエムっ気あるのかなぁ。もし婚約破棄して~なんて言ったら、キルナサマ監禁されて会えなくなるよ。そうなっちゃうと、テア寂しいな~。監禁調教陵辱プレイは大好きだけど、王子様に結界張られちゃうと、中を覗くのも難しそうだし」
「え? 監禁? 陵辱? なんのこと!?」
不穏なワードに首を傾げると、リリーが大きなため息を吐いた。
「気づいてないところがメガネなんだよね。面白いけど、僕も寂しいからそれは止めといて」
「えと、わかった……」
二人によると、僕が婚約破棄してくれとクライスに言えば、死ぬまで監禁され陵辱される未来が確定するらしい。魔王の恐ろしさを知っている僕はあり得るような気がしてきて怖い。そんなバッドエンドは回避しなければ。
それに、僕はもう婚約破棄してほしいなんて言えない。
だって、クライスのことが好きな気持ちが胸に溢れてて、今だって彼が近くにいないことがこんなに寂しい。早く会いたい。会いたい。
「はぁ、ほんと、困ったなぁ……」
「今度は何に困ってるの?」
「クライスのことが好きすぎて……胸がいっぱいで……」
「へえ? よかったね。メガネが幸せそうで、僕も嬉しいよ。ふぅ…もう全然勉強に集中できないし、お茶にしない?」
「イイネ。なんか甘いもの食べたいナ~」
「あっ、じゃあパンケーキ作るよ。待ってて」
「「やったー」」
全然進んでいない問題集を閉じて、僕はキッチンへと向かった。
122
お気に入りに追加
10,228
あなたにおすすめの小説
嵌められた悪役令息の行く末は、
珈琲きの子
BL
【書籍化します◆アンダルシュノベルズ様より刊行】
公爵令息エミール・ダイヤモンドは婚約相手の第二王子から婚約破棄を言い渡される。同時に学内で起きた一連の事件の責任を取らされ、牢獄へと収容された。
一ヶ月も経たずに相手を挿げ替えて行われた第二王子の結婚式。他国からの参列者は首をかしげる。その中でも帝国の皇太子シグヴァルトはエミールの姿が見えないことに不信感を抱いた。そして皇太子は祝いの席でこう問うた。
「殿下の横においでになるのはどなたですか?」と。
帝国皇太子のシグヴァルトと、悪役令息に仕立て上げられたエミールのこれからについて。
【タンザナイト王国編】完結
【アレクサンドライト帝国編】完結
【精霊使い編】連載中
※web連載時と書籍では多少設定が変わっている点があります。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません
ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。
俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。
舞台は、魔法学園。
悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。
なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…?
※旧タイトル『愛と死ね』
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。