いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

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第7章

第353話 勉強会とパンケーキ①

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熱があるにもかかわらずやりまくった僕……。その後彼に看病され、翌日にはすっかり熱も下がって元気になっていた。クライスはまた医務室に呼ばれ、怪我人の治療の手伝いに行った。「キルナと離れたくない……」とべったりくっついて離れない彼を「また夕方には会えるでしょ?」となだめながら送り出したのが、ついさっき。


そして今僕は、テアとリリーと一緒に部屋で勉強会をしているところ。

とにかく配られた課題(結構多い)をこなすために、集中しなきゃなんだけど! こうやって、クライスと離れ、静かに勉強をしていると、色々あったことが思い出されて衝動のまま叫んでしまう。

「あああああ!! すごいこと言っちゃった。どうしよ!!」
「「どうしたの?」」

ペンを止めてこちらを見た彼らに僕はすがるように言った。

「僕、クライスに、け、け、結婚したいって言っちゃったよぉ!」
「へえ? おめでとう」
「ふ~ん? 結婚式はテアも呼んでね。おめかししていくから~」

僕にとってはめちゃくちゃ大事件なのに、二人は全然驚いていない。今更どうしたんだろう……、みたいな反応をされてしまい、そう言えば僕たちは婚約者同士だから、結婚する方が当たり前だったと気づく。あれ? じゃあ僕はなんで騒いでいるのだっけ?


「実はさ、王子が王に頼んで派遣してくれた優秀なアドバイザーのおかげで、最近実家の領地経営が順調なんだ。メガネの結婚式の時にはちゃんとした衣装が用意できそうだよ」

「プラム男爵家ビンボウ脱出~? それはよかったねぇ。うちも位は下がったけど、イダ兄サマが家を継いだらとたんに鉱山の収入がアップして、儲かってるみたい。宝石の加工業も順調で、テアも手伝ってるんだよ~。今度二人に似合う宝石を綺麗に加工してアクセサリーにして、プレゼントするネ」

「ビッチが作るの? それは楽しみ! できたら三人でお揃いがいいな……」

「ふふ、リリーったら、か~わ~い~い~!! 任せて、キルナサマの結婚式までにお揃いのアクセサリー用意するから」

二人の会話は弾んでいる。クライスの送ったアドバイザーってなんだろ。テアの家は色々あったけどお兄さんたちとお母さんが戻ってきて、いい感じなんだね。二人の家が順調みたいでうれしい。お揃いのアクセサリーなんて心が躍る。

たしかにその話はすごーく気になるけれど、そうじゃなくって。結婚式の衣装の前に、結婚していいのかが問題なのであって……。


どうしたらいい? 本当に大丈夫かな? やっぱりクライスに婚約破棄してもらわないとダメなんじゃ? ゲームのストーリーはどうなっちゃうの? でもクライスは魔王だし、僕じゃないと……。

「メガネ、さっきから何一人でブツブツ言ってるの?」

「クライスに婚約破棄してもらわなくて、ほんとのほんとに大丈夫かどうか考えてたの」

「よくわかんないけど、王子に婚約破棄してもらうなんて、難易度高すぎでしょ、無理だよ」

「キルナサマってエムっ気あるのかなぁ。もし婚約破棄して~なんて言ったら、キルナサマ監禁されて会えなくなるよ。そうなっちゃうと、テア寂しいな~。監禁調教陵辱プレイは大好きだけど、王子様に結界張られちゃうと、中を覗くのも難しそうだし」

「え? 監禁? 陵辱? なんのこと!?」

不穏なワードに首を傾げると、リリーが大きなため息を吐いた。

「気づいてないところがメガネなんだよね。面白いけど、僕も寂しいからそれは止めといて」
「えと、わかった……」


二人によると、僕が婚約破棄してくれとクライスに言えば、死ぬまで監禁され陵辱される未来が確定するらしい。魔王の恐ろしさを知っている僕はあり得るような気がしてきて怖い。そんなバッドエンドは回避しなければ。

それに、僕はもう婚約破棄してほしいなんて言えない。
だって、クライスのことが好きな気持ちが胸に溢れてて、今だって彼が近くにいないことがこんなに寂しい。早く会いたい。会いたい。

「はぁ、ほんと、困ったなぁ……」
「今度は何に困ってるの?」
「クライスのことが好きすぎて……胸がいっぱいで……」
「へえ? よかったね。メガネが幸せそうで、僕も嬉しいよ。ふぅ…もう全然勉強に集中できないし、お茶にしない?」
「イイネ。なんか甘いもの食べたいナ~」
「あっ、じゃあパンケーキ作るよ。待ってて」
「「やったー」」

全然進んでいない問題集を閉じて、僕はキッチンへと向かった。
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